はぁっ…はぁっ……




涙が止まらないよ…




誰かこの涙の止め方を教えてっ……





すれ違う人にバレないように、必死に走る




どんっ


「「きゃぁっ」」



「ったた…って紗矢香!?」



「……実彩子」



実「紗矢香?!大丈夫?話聞くよ?」



「……っ実彩子ぉぉーっ」



実「あ~よしよし…家おいで」






実彩子の家に向かう道中も涙が止まらない私の手をずっと繋いでてくれていたおかけで少し落ち着く事が出来た。



実彩子の家は映画に出てきそうな沢山のお花に包まれた洋館のような家で見とれてしまう。



実「はい、ハーブティーだよ。」



「ありがと……キレイな家だね」



実「ありがと(^^)そんな大きい家じゃないけどね。ママとおばあちゃんの趣味なんだ」



「なんか映画に出てきそう」



実「大袈裟だよ(笑)

……何で泣きながら走ってたのか聞かせてもらえる?」



「……先生に呼ばれて職員室に行ったら、テストでぼーっとしすぎてて数学の名前書き忘れちゃってて……」



実「え!?大丈夫だったの?」



「うん……工藤先生もいたんだけど、私の家庭事情知ってるから心配してくれてて-2点にする代わりにB教室から忘れ物取ってきてほしいって言われたから取りにいったんだ……」



実「うん……」



「そしたら……誰かに『好き』って言ってる女の子の声が聞こえて、いけないと思いながらも早く帰りたかったから様子見て乗り込もうと思って覗いたの……」



実「うん……」



「日高くん……と真中さん、キスしてて……」



実「え?……え、真中って前に紗矢香を突き飛ばした子だよね?」



「たぶん……私がいつまでもうじうじしてるから愛想尽かされちゃったんだよ……

ほんと馬鹿みたい、私」



実「いや、それにしてもさ……急にありえないよ」



「日高くんが好きだってやっと思えたのに……

気持ちに応えたいって…」



実「紗矢香……」



「いつまでも…過去に縛られてちゃダメだって…やっとわかったの。

勇気出してみようって……

日高くんを好きな気持ち大切にしようって……」



実「そっか。でもやっと気づいたその気持ち、大切にしなよ?」



「でももう遅っ……好きって……分かった時…にはっもう遅っ…だねっ」



実「紗矢香……」



「実彩子ぉぉぉ」



実彩子に話してる間にも涙はポロポロと止まらない。



実彩子が抱きしめてくれて、実彩子の腕の中でも泣きじゃくってしまった。




実「大丈夫、こうしててあげる……気の済むまで泣いたらいいよ…」













どのくらいの時間が経ったんだろう……



気付けば実彩子の部屋で眠ってしまっていた。



外はもう薄暗くなっている。



実「紗矢香起きた?泣き疲れて眠ってたんだよ」



「ごめんね、帰るよ」



実「待って、ママが紗矢香の分のご飯も用意してくれてるんだ……一緒に食べない?」



「いいの?」



 実「当然でしょ(^^)」



「じゃあ……お言葉に甘えて」



実「やった♥こっちだよ」



「先にお母さんとお姉ちゃんに連絡いれるね?」



実「そうだね、心配してるといけないし」



お母さんとお姉ちゃんにも連絡して、実彩子のお母さんのご飯をいただいた。



凄く美味しくて、何だかほっとする。











『紗矢香ちゃん、そろそろ帰らなくて大丈夫……?』



実「ほんとだ、こんな時間……」



「あ、大丈夫です。

実彩子、お兄ちゃんが迎えに来てくれるってLINEがきたから、ここの住所教えて?」



実「あれ?紗矢香、お兄ちゃんいたっけ?」



「ううん。お姉ちゃんの旦那さんなんだ」



実「そっか(^^)」






実彩子の部屋で日高くんへの気持ちをどうやったら心の奥へしまえるのか考えてた。



彼の事を考えるだけでまた涙が出てくる



真ちゃんとのLINEに『着いたで~』と表記されたから玄関まで下りる。



実「え!紗矢香のお兄ちゃんって與先生なの?!」



與「おー!宇野やん、久しぶりやな」



実「與先生が紗矢香の家族だなんて思わなかったです」



與「あんまり言ってないからな~」



実「紗矢香、今日ちょっと色々あって……沢山泣いたんです……」



與「ほんまや、ちょっと目腫れてブサイクなってんで」



「……どうせ可愛くないもん」



與「減らず口なとこ見ると大丈夫そうやな。ありがとうな、宇野」



「実彩子ごめんね……お母さんにお礼言っといてくれる?」



実「うん。明日さえ乗り切れば夏休みだし、ゆっくり気持ち整理したらいいよ。」



「そうだね、ありがとう……実彩子」



與「じゃあ帰ろか紗矢香。明日バイトやろ?学校もそんな腫れた目で行けへんやん」



「うん。じゃあまた明日ね」



実「ちゃんと目を冷やしてから寝なよ?」



「うん。」





実彩子の家を後にして真ちゃんの車で家に帰る。



部屋で1人になるとあの日の日高くんの言葉が頭の中を巡る



「絶対紗矢香ちゃんのこと振り向かせるから」




日高くんの勝ちだよ……




でも振り向いた時にはもう誰かのものになってしまっていた




ほんと、我ながら馬鹿な話だ






「好きだよ」と伝えればいいのに
願う先、怖くて言えず
「好きだよ」と「好きだよ」が
募っては溶けてく
君との時間が一秒でも長くなるなら
ずっとじゃなくていい
願いかける恋音と雨空






大好きな歌が頭の中で響く……




こんな切ない気持ちで聴いたのは初めてで……
胸がえぐられそう




私のこの思いは、募るばかりで行き場が無くなってしまった……




明日、日高くんに会っても平常心でいられるだろうか。




彼のあの澄んだ眼差しの向く先が、もう私じゃなくなったのなら会うこともないよね……




大丈夫、忘れなくちゃ……




彼の瞳から消えなくちゃ……










大好きだよ……日高くん