千鶴来高校映画鑑賞部  -2ページ目

千鶴来高校映画鑑賞部 

部員二人による活動報告書(および実験的対話型映画感想記)
傑作★★★:わくわく、もう一回観たい!
秀作★★☆:うんうん、悪くないよ
良作★☆☆:まあまあ、こんなもん
凡作☆☆☆:……うん。


雨西「大丈夫、人生のシナリオはいつだって書き直せる――。今日のレビューは「Re:LIFE ~リライフ~」だな」


映子「15年もヒット作に恵まれないかつてのアカデミー賞脚本家。そんな彼が片田舎の大学講師になり、生徒たちと向き合う事で自らの人生とも向き合っていくといった感じの物語ね」


雨西「んー、もう少し脚本家っていう設定を活かしてほしかった気もするな」


映子「確かにね。キースが自らの人生と向き合う事になったのも、単にホリーのまっすぐな生き方に触れてってってのが大きかったしね」


雨西「シナリオの書き方を説明したりするうちにとか、生徒たちの脚本と自分の人生を重ね合わせてとか、もっと脚本家らしい内容を期待してただけにちょっと残念だった」


映子「主演のヒュー・グラントの演技はよかっただけになおさら思うわね。やさぐれかけてかつての栄光にすがりついている感じがすっごい好き」


雨西「自分の教え子が成功してついに自分の立場を悟るシーンがよかったな。新しい自分を受け入れて、ここからリライフなんだって感じで」


映子「というわけで評価は「★1つ」くらいで。ねえ、こんだけ映画観てるんだから、私たちもガチれば面白い脚本書けるんじゃないかしら」


雨西「無理に決まってんだろ…。クリエイターなめんな」



映子「今、日本の心が世界に羽ばたく――。今日のレビューは「ラスト・ナイツ」よ」


雨西「正義を貫いて処刑を受け入れた敬愛する君主の仇を討つために、死を覚悟して戦いに挑む騎士たちを描いた物語だな」


映子「このあらすじを読めばわかると思うけど、まさにハリウッド版忠臣蔵だったわね」


雨西「最初の殺陣で刀についた血をひゅんって振る所から、なんとなく日本的だなって思ったけど、時代劇的な演出を各所に感じたな」


映子「そうね。それだけに重厚なシナリオだけど日本人には受け入れやすい作品になってると思うわ」


雨西「忠臣蔵を踏襲しているだけでなく、ちゃんとオリジナリティもあったよな。要塞の装飾を外して盾の代わりにする所とか、鏡の中に潜んでいた所は「おおっ」て感じだし」


映子「日本人監督でも場と予算を与えられればこういう映画が撮れるって証明してくれた紀里谷監督に拍手よ」


雨西「評価は「★3つ」。あとは唯一日本人俳優として頑張っていた伊原剛志にも注目だな」


映子「発音の上手い下手はわからない私が言える立場じゃないけど、どうしても伊原さんがしゃべるたびに「だ、大丈夫なの…? ちゃんと英語しゃべれるの?」って変なドキドキ感が味わえる作品よ」



雨西「終着駅はやがて、始発駅になる――。今日のレビューは「起終点駅 ターミナル」だ」


映子「かつて一人の女性を死なせてしまった罪に囚われて息をひそめるように生きてきた弁護士・鷲田。そんな彼の元とある事件で出会った敦子が訪ねてくる事で、彼は自らの過去と対峙する――という感じね」


雨西「最近激しめの映画が続いていたから、たまにこういう作品観ると胸に染みるな」


映子「「愛を積むひと」もそうだったけど、佐藤浩市×北海道の相性っていいのかもね。すんごく哀愁が漂ってたわ」


雨西「家族と決別してすっかり料理も板についていたり、隣の家では痴呆ぎみの老人が一人で住んでいたり…。ちょっとした事すべてが物悲しく感じたよな」


映子「かつて自分が死なせてしまった女性と、敦子を重ねる事でストーリーが動いていくわけだけど、そういう点ではちょっとマイナスかな」


雨西「一応覚せい剤がらみの事件とかで共通点はあるけど、薬指だけマニキュア塗ってる所まで一緒なのは、確かに少し余計だったかもしれん」


映子「それでも映画全体を通しての空気感はいいから、そこまで気にはならないけどね。マイベストシーンはかつて息子が好きだったイクラを泣きながら頬張る所ね。色んな感情がつまった演技でよかったわ」


雨西「評価は「★2つ」だな。いいタイトルの映画だなって思わせてくれる一作ってことで」


映子「ちなみに鷲田の作る料理がいちいち美味しそうなのも見どころよ。ねえ、このあとから揚げ定食食べにいこーよ! すっげー腹減ったわ」


映子「史上最悪最高のスパイコンビ、登場――。「コードネーム UNCLE」の映画レビューよ」


雨西「核兵器で世界破滅を企てるテロリストに対抗するために、宿敵同士であるアメリカとロシアのスパイが手を組むという話だな」


映子「いやー、私この映画大好き。いわゆるバディムービーだけど、これまでに観た中でもかなり上位に来るかもしんない」


雨西「それぞれのキャラがしっかりとしていて、お互いを惹き立てあっててよかったな。噛み合ってない2人が最高に面白い」


映子「真面目にやっているだけにシュールな笑いもあったしね。クリヤキンが必死で逃げ惑う中、ソロは優雅にワインを飲んでいる所とか、電気椅子の所とかね」


雨西「時折入る空撮とかBGMとかもシャレてたな。ミッションインポッシブルとは違って時代設定が60年代だから、最新のメカなんかは出せないかわりに、別の魅力がある」


映子「評価はもちろん「★3つ」! 続編を激しく期待しちゃう作品よ」


雨西「2作目でヒロイン役だけ交代しちゃうケースもあるけど、ギャビーもすごくいいキャラだしな。是非この3人組のままであってほしい所だ」



雨西「終止符を、打て――。今日のレビューは「MOZU 劇場版」だ」


映子「大ヒットドラマ「MOZU」の映画化作品ね。全ての黒幕であるダルマとの最後の死闘を描いた物語よ」


雨西「ハードボイルドって言葉がぴったりくる映画だったな。西島秀俊がかっこいい」


映子「というか、ドラマを一切見てないからそれぐらいしか感想ないのよね。八割方は楽しめなかったわ。細かい人間関係くらいは予習してくるべきだったかもしれないわね」


雨西「知らない上で言うと、登場人物のほぼ全てが芝居がかった台詞なのが、最後まで慣れなかったな。こういうテイストのドラマだったんだろうし、別に文句をつける気はないけど」


映子「香川照之あたりはこの大味感にあってたけどね。娘が殺されそうになって、「お願い…します」って敬語で懇願するシーンが印象に残ってたわ」


雨西「ひとつの売りになっているビートたけしだけど、存在感はさすが。ただ正直台詞回しなんかは、そろそろロレツが厳しくなってきた感じだな」


映子「評価だけど、「★なし」かな。一見さんお断り的な映画だし、どうしてもね…」


雨西「大規模スケールの海外ロケをされた映画だから、そういう点では迫力あったけどな。ドラマが好きな人は楽しめるだろ」



映子「その瞬間、3人の運命がつながった――。今日のレビューは「グラスホッパー」ね」


雨西「誰もが凶暴になるという人口過密都市・渋谷。殺された婚約者の復讐のために裏の闇社会に身を投じた男が、その闇に翻弄されていく物語だな」


映子「ついこの前にハロウィンの馬鹿騒ぎのニュースがあったおかげで、わりとすんなりと世界観に入っていけたわね」


雨西「殺し屋が次々と出てくるというそこだけ切り取ればトンデモシナリオだから、そこはあえて公開時期を合わせたのかもな」


映子「次にどんな展開になるのかワクワクしちゃったわ。やっぱり別々のシナリオが一本に繋がるってのはいいわよね」


雨西「ただ鯨と蝉サイドが直接的な関わり合いだったのに、鈴木本人とはあくまで間接的だったのが残念だったかな。まあ、あくまで裏社会に翻弄されるってのがテーマだから、それはそれでアリなのかもしれないけど」


映子「鈴木の話が出たけど、生田斗真っていい役者さんになったわよね。そろそろジャニーズイメージが薄くなるくらい」


雨西「あとは菜々緒が輝いていたのが印象深い。けっこう役に恵まれてるし、これからもどんどん活躍していきそうな感じするな」


映子「というわけで評価は「★3つ」ね。ちょうどいい程度の凄惨さもあるし、刺激的な一作よ」


雨西「今回のレビューは役者さんについてばっかりだけど、山田涼介は「暗殺教室」で殺し屋やってるより、こっちの方がはるかに活き活きしてたな」


雨西「地球上で最も危険な場所へ――。本日の映画は「エベレスト」だな」


映子「言わずと知れた世界最高峰の山”エベレスト”。1953年に初登頂がされて以来、世界中の登山家を魅了し続けるその山は、同時に世界で最も生きるのが難しい場所。本作はその山に挑む人間たちが自然の猛威に翻弄される様を描いた映画ね」


雨西「まさに圧倒的な過酷さだったな。これが実話を基にしているのだから、余計にそう思う」


映子「底のないクレバスに、前触れなく起きる雪崩。吹き荒れる嵐と次々と倒れていく仲間た。九死に一生をえて下山できたとしても、凍傷で両腕を失う…。挙げていけばきりがないわね。こんな山に登ろうとするなんて、心底おかしいとしか言いようがないわ」


雨西「そこに山があるからって有名な言葉があるけど、登山家たちも実際にそうとしか答えられないんだろうな」


映子「その一方でエベレスト登頂がビジネスとして成り立っている事に、なんか滑稽さがあるわ。雄大な自然と比較すると特にね」


雨西「登頂に挑戦するのに6万5千ドル。電話をかけるのも1分25ドルだっけか。まさに人生をかけないと無理なんだな」


映子「一番印象に残っているのは大嵐が過ぎ去り、一転してとてつもない静寂が訪れた所かな。絶対に登山なんかしたくないけど、あの静けさだけは体感してみたいわ」


雨西「という事で評価は「★2つ」だな。なにせ過酷さをリアルに描いてるから楽しさはないけど、3Dとは相性のいい作品なので」


映子「イモトアヤコさんってマジでこんな山に登ろうとしてるのかしら…。応援はしてるけど、絶対に無理はしないでほしいって強く思うわ」


映子「芸術はプロ、戦争はド素人。「ミケランジェロ・プロジェクト」が本日の映画よ」


雨西「第二次世界大戦の終戦間近、ドイツ軍はヒトラーの命令により美術品を次々と略奪。それらの歴史的財産の喪失を阻止するために、美術品のプロである”モニュメント・マン”が結成された。戦争のド素人である彼らの任務は、戦場の最前線でナチスが略奪した美術品を奪い返す事――というあらすじだ」


映子「うーん、船頭多くして山に上るって感じかしら」


雨西「言い得て妙だな。確かに色々詰め込み過ぎた気はするな」


映子「序盤から次々と登場人物が出てくる上に、展開も早いし、場面切り替えも多めで、まずついていくのが大変だったのよね。まあ、理解力がないだけだろと言われればそうなんだけど…」


雨西「美術品の奪還が主なテーマなのはわかるとして、そこに余計な脚色がされたようにも思えたな。戦争の悲惨さとか、戦争ド素人たちのコミカルさとかが強引に押し込まれてる。終わってみるとどれも中途半端になってたかも」


映子「印象に残ってるのは、ナチスが集めてた美術品・財宝の中に、大量の金歯もあったって所かな。あれって死体から引っこ抜いて集めてたって事よね…。ぞっとするわ」


雨西「美術品の奪還とは直接関係のないシーンが一番印象に残ったって事は、そういう事なんだろうな」


映子「評価としては残念ながら「★0コ」ね。豪華キャストを揃えたわりにはね。まあ美術品の大切さは伝わったわ」


雨西「某国にも早く仏像返せっていいたくなるよな」


映子「誰も知らないピーターパンたちの物語の誕生――。今日のレビューは「PAN ~ネバーランド、夢のはじまり~」よ」


雨西「まさにザ・ファンタジーだったな。大人子供関係なく楽しめる映画だ」


映子「私も序盤で空飛ぶ帆船が出てきた所からワクワクしっぱなしだったわ。黒ひげの広大なネバーランドも、それとは対照的なカラフルな先住民たちの集落もすっごい素敵」


雨西「トランポリンで跳ねながらの決闘なんかも面白かったな。要所に見ている子供を楽しませるような演出がされてて」


映子「ただの過去の回想シーンも木の彫刻風だったり、水の泡で表現されてたりでとにかく飽きないものね」


雨西「自分が一番好きなのは、最後に黒ひげを倒す時のピーターパンがすっごい無邪気だった事だな。子供らしい危うさを感じさせるのがいい」


映子「というわけで評価は文句なしの「★3つ」! 純粋に楽しめる一作よ」


雨西「とにかく絶対に3Dで観た方がいい映画だな」


雨西「死んだ夫と旅をする――。「岸辺の旅」の映画レビューだ」


映子「突然に帰ってきた死んだはずの夫・優介。妻の瑞樹はこれまでにお世話になった人々を訪ね歩くうちに、それまでに知らなかった夫の秘密を知る事になり――といった感じの物語ね」


雨西「亡くなった人が幽霊となって戻ってくるって設定はよくあるから、この映画もその手の作品かと思ってたけど、色々と予想外だったな」


映子「そーね。まずは生前にお世話になった人々じゃなくて、家に帰ってくる道中でお世話になった人々ってのが斬新だったわ」


雨西「次に一度は亡くなった人たちが普通に現世の人たちにまぎれて生活しているところだな。でも生者とは微妙な違いがあるから。会話の端々がかみ合ってなかったりするのがすごく不思議だ」


映子「観てるうちに出てくる人たちみんなを疑っちゃうのよね。「これは生きてる人? 死んでる人?」みたいに」


雨西「そういう作為を感じるのも、生きている人間と死んでいる人間にそう差はないのかもしれないっていう台詞に繋がるよな」


映子「映像もすごくよかったわ。私は新聞屋さんが消失した時に、壁にはっていた花々も風化していたシーンが印象的だわ」


雨西「自分は優介が消える時に変に余韻を残さずに、次のカットでいなくなっていた所だな。より切なくなった」


映子「評価はとりあえず「★2つ」でいいかしら。色々と考える余地がある作品だから好みは分かれるだろうけど」


雨西「何度も繰り返してみたくなる一作だったな」