千鶴来高校映画鑑賞部 

千鶴来高校映画鑑賞部 

部員二人による活動報告書(および実験的対話型映画感想記)
傑作★★★:わくわく、もう一回観たい!
秀作★★☆:うんうん、悪くないよ
良作★☆☆:まあまあ、こんなもん
凡作☆☆☆:……うん。

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雨西「新シリーズ、始まる――。「クリード ~チャンプを継ぐ男~」が今年最後のレビューだな」


映子「世界的大人気の「ロッキー」シリーズ。その新章として、宿命のライバルであるアポロの息子が主役の物語よ」


雨西「まさに男の熱い映画だったな。単純に燃える映画はひさしぶりだったし」


映子「ストーリーもわかりやすかったしねー。かませ犬から這い上がったロッキーを踏襲してる辺りがグッドだわ」


雨西「最初にシルベスター・スタローンが登場した時はさすがに老いたなぁって思ったけど、その老衰さをしっかり話に活かしているしな。この年齢になって、少し演技がうまくなった気がするな」


映子「各所にオールドファンがにやりとできるシーンもあったりね。まあ、どうせなら生卵の一気飲みや、ランニング中にリンゴをパスされるのがあって欲しかったけど」


雨西「この手の映画はどうしたって旧作と比較されるのが宿命だけど、そういう意味では対戦相手がアポロほどに迫力がなかったのが残念だな」


映子「あー、わかる。映像が荒いせいもあるけどマウスピースがまるで白い歯を見せてにやりと笑ってる感じのアポロって、すっごいオーラがあったもんね」


雨西「というわけで、評価は「★2つ」かね。続編とかはわからないけど、スタートとしては合格点の内容ってことで」


映子「私も帰ってからさっそく照明のヒモを相手にスパーリングしよっと」



映子「もう息子には会えないと思っていました――。本日のレビューは「母と暮せば」よ」


雨西「長崎で原爆が落ちて3年の1948年8月9日。助産師をして暮らす伸子の前に、亡くなったはずの息子・浩二が幽霊となってひょっこり現れる所から始まる物語だな」


映子「とにかく山田洋次監督らしい映画だったわね。良くも悪くもね」


雨西「設定自体はありふれてるけど、それでもしっかり感動するし面白いのはさすがだな」


映子「登場人物みんなが戦後の厳しい時代を逞しく生きている感じが印象的だったわ。伸子はもちろんだけど、隣に住んでいる女性とか、闇商人のオジさんとか。すごく人間味が溢れてて」


雨西「一方で苛烈さもちゃんと描かれてるしな。さりげなく片手がないシーンを入れてきた所が特に印象的だわ」


映子「あそこの本田望結ちゃんの泣きのシーンは、マジで泣けるわよね…」


雨西「悪くもってのは、演出まで全体的に古めって事かね。幽霊となった浩二が物をつかんでいる所でふわふわ物だけを浮かせたりとか」


映子「まあ画質も古めにしてるから、それに合わせたんだろうし、有りっちゃ有りなんだろうけどね」


雨西「あとはエンディングがあまりに宗教チックだった事かね。長崎が舞台とはいえ、山田洋次監督ならもう少し静謐なものでもよかったと思う」


映子「というわけで、評価は「★2つ」かな。戦争で亡くなった人間は死を覚悟できるけど、原爆で亡くなった人間はわけもわからず死ぬって台詞が、特に胸に残る良作よ」


雨西「そして、吉永小百合が70歳で、おばあさん役ではなくお母さん役という事があまりに自然な事に驚く作品でもあるな」



雨西「ハーモニーで世界を制覇する! 「ピッチ・パーフェクト2」が本日のレビューだ」


映子「前作で全米ナンバーワンとなったアカペラグループが、紆余曲折あった末に世界大会に挑戦するという物語ね」


雨西「前作を観てない状態で観賞したけど、予想外に楽しめたな」


映子「劇中のパフォーマンスがすっごくハイレベルだもんね。ついつい足でリズムをとっちゃいたくなるもん」


雨西「ラストのステージはもちろんだけど、中盤のバトル的な所もよかったな。にやにや笑いながら観てたわ」


映子「少しググってみただけでも、キャストやスタッフの面々もすごいみたいね。というか、主演のアナ・ケンドリックって「イン・トゥ・ザ・ウッド」のシンデレラ役の人って、あとから気づいたわ」


雨西「時折挟まれるブラックジョークは好みがあるかもしれないけど、まあ女子大のノリって感じだし、それがいいスパイスになってると思うわ」


映子「というわけで評価は「★3つ」。とにかく盛り上がるという感想に集約される一作よ」


雨西「さりげなくオバマ大統領が出てたりしたり、ちょっとした小ネタを探すのも楽しい映画だな」



映子「なぜあの時、トルコは日本を助けてくれたのか――。本日のレビューは「海難1890」よ」


雨西「親日国として有名なトルコ。その理由であるエルトゥールル号の事件を描いたノンフィクション映画だな」


映子「いやー、素直に面白かったわ。多少の脚色があるのかもしれないけど、実話をもとにしてここまでドラマチックなのは久しぶりかも」


雨西「ちゃんと両国の文化や人間性も尊重されているのもよかったな。出港の前に奥さんの涙を瓶に入れてもっていくとか。調べたらそういう風習があるみたいだし」


映子「映像の切り替え方もすごく上手だったわね。盃のお酒がこぼれるシーンと大波が押し寄せるシーンをダブらせたり、船が沈没しようとする騒乱と三味線をひいての宴会と対比させたり」


雨西「こういう事情があるとはいえ、イラン・テヘランの時はよく助けてくれたよな。本当に感謝の言葉しかない」


映子「というわけで評価は当然「★3つ」よ! どっちの国民が観ても感動する映画よ」


雨西「まずトルコ大統領の挨拶から入るあたり力の入れ方がわかるな。トルコで公開してる映画では、阿倍さんが挨拶してるんだろうかね」



雨西「命のヴィザを発行し続けた男の真実の物語――。本日のレビューは「杉原千畝 ~SUGIHRA CHIUNE~」だな」


映子「杉原千畝って人はなんとなく聞いた事があったけど、改めて知れてよかったわね」


雨西「ものすっごい超絶に有能な外交官だったんだな。何ヶ国語も操るとか、「ペルソナ・ノン・グラータ」とか」


映子「オープニングでまんまスパイみたいな事やってたけど、あれもマジなのかしら?」


雨西「戦時中だからあっても不思議ではないな。もちろん映画的な脚色もあるだろうけど」


映子「この映画のメインである命のヴィザの発行だけど、確かに感動はするんだけど、心のどこかで今だったらあらゆる意味であり得ないわねって思っちゃったわ」


雨西「テロリストとか入り放題になるしな。出港先の港に押し寄せて大混乱になってるあたりも、俺は発行するだけであとは知らん。どうせもう辞めるしって言っちゃってるし」


映子「難民の厳しい立場を知る一方で、絢爛豪華な舞踏会に普通に参加してるあたり、本人もあくまできる範囲の責務を果たしていただけって感覚だったのかもね。どちらにせよ同じ日本人ってだけなんだけど、誇りに思うわ」


雨西「というわけで、評価は「★1つ」で。映画的な面白さというよりも、勉強になる感じだな」


映子「戦争が絡む映画をみるたびに思うけど、歴史の授業を聞くよりも、よっぽど有意義ではあるわ」



映子「事件か、事故か。死んだ娘の親友は悪魔でした。「罪の余白」の本日のレビューよ」


雨西「いじめが原因で亡くなったしまった娘。その真相を探ろうとする父親が、恐ろしいほどに聡明な少女に翻弄されていく物語だな」


映子「なんというか実に現代的なサスペンスだったわね」


雨西「非力な女子高生という立場を最大限に利用するというのがなかなかよかったな。わざと殴られるあたりとか」


映子「私は早苗さんが会いに行った時に一目でその内面を見抜くシーンが好きだなー。木場咲という人間の確固たるプライドと傲慢さが感じられて」


雨西「女優になるためにオーディションを受けたりするのではなく、スカウト待ちをしているというのも高すぎるプライドが表れてたな。それが「エキストラから始めたりするの?」という些細な言葉がいじめに追い込むきっかけになったというのもいい」


映子「不満を言うなら、父親が行動心理学者って設定のわりには…って感じかしら。もっとお互いが牽制しあってもよかったと思うわ」


雨西「確かにずっと木場咲のターン!って印象だったな。ラストで精神を揺さぶって突き落される所も、いまひとつだったし。彼女ならあそこから言い逃れしようと思えばできそうだな」


映子「ということで評価は「★1つ」かな。内野聖陽はもちろんだけど、吉本実憂の演技も悪くない良作よ」


雨西「痴漢冤罪にも通じるものがあるから、電車に乗る時はマジで気をつけないとな」


雨西「限られた時間の中でも、夢の舞台を目指して――。「ボーイソプラノ ~ただひとつの歌声~」が本日2本目のレビューだ」


映子「名門合唱団を舞台とした、少年から大人に変わるまでのわずかな間しか出せない奇跡の歌声・ボーイソブラノを題材にした映画ね」


雨西「まずなんといっても劇中での歌声が最高にすごい。圧倒的な澄み切った迫力が」


映子「相当練習しなきゃあんな声は出せないんだろうね。主演のギャレット・ウェアリング君もどことなく中世的な顔立ちで、この作品にはぴったりだったと思うわ」


雨西「一方でまだまだ多感な少年たちらしく、様々な葛藤を描いているのもよかったな。ライバルの足を引っ張ったりとか」


映子「そんな迷いから出た「いつかはなくなる歌声なのに、どうして厳しい練習しなきゃならないの?」って台詞がすごく印象に残ってるわ。今、この瞬間を大切にって、胸に染みるわね」


雨西「不満点があるとすれば、ラストに歌われる「メサイア」かね。たぶん生録音をそのまま流したんだろうけど、若干楽器の演奏音が大きく感じるんだよな。あくまで歌声がメインなんだから、そこはもっと調整してもよかったと思う」


映子「そういうわけで評価は「★2つ」ね。穢れたあなたの心も浄化してくれる作品よ」


雨西「俺たちの場合は、直前にダークな映画をはしごしてたから、余計にそう感じるな」



映子「他人の破滅の瞬間に、カメラを持って現れる――。「ナイトクローラー」が今日のレビューよ」


雨西「ダイアナ妃が亡くなった時に悪い意味で有名になったパパラッチを題材にした映画だな」


映子「いやー、すっごくゾクゾクしたわ。現代社会の闇を観た感じね」


雨西「倫理感とかそういうのを一切無視して衝撃な映像を撮ろうとする姿がすごかったな。それを求めるテレビ局も含めて、まさに狂気だわ」


映子「撮りやすいアングルのために死体を移動させる所とかね。あとは相棒が殺されても冷酷にカメラを回し続けたり」


雨西「最初から最後まで傲慢でそれを貫き通したのも、物語としていいよな。ラストは事業を拡大して順風満帆なんだろうけど、それが逆にいずれは訪れる破滅を予感させるし」


映子「そういうわけで評価は「★3つ」よ! アカデミー賞でも期待できる一作ね」


雨西「代表作になるかもしれないくらいジェイク・ギレンホールがハマり役だから、それも見どころだな」



雨西「ぜんぶ、ちょうだい…。「劇場霊」が本日のレビューだな」


映子「「リング」や「クロユリ団地」でおなじみの中田秀夫監督によるホラー映画ね」


雨西「うーん、ホラー映画界の巨匠のわりにはって感じだったな。ジャパニーズホラーっぽくないというか…」


映子「確かに。日本のホラーの良さって、さりげない怖さがウリなのに、あそこまでアグレッシブにマネキンが動いちゃうのは悪い意味で驚いたわ」


雨西「マネキンはあくまで物を言わない、動かないから恐怖があるんだよな。目を動かす程度でおさえておけば、まだよかったのに」


映子「本格的な演技は初らしい、主演の島崎遥香ちゃんはどうだった?」


雨西「個人的にはアリかな。別段うまいとは思わないけど、持論としてホラー映画は多少棒演技の方が雰囲気は出るから」


映子「そんなわけで評価は「★1つ」かな。それなりに怖い所もあったから、こんなもんで」


雨西「そういや企画が秋元康か。中田監督も個性が強いから、そういう人間を一緒にしたらダメって教訓だな」


映子「引っ越し先の隣のおじいさんは昔、飛行士だったそうです――。本日のレビューは「リトルプリンス ~星の王子様と私~」よ」


雨西「誰もが知っているサン=デグジュペリ原作「星の王子様」の待望の映画化だな」


映子「いやー、かなり面白かったわ。原作と同じく「ゾウを丸ごと飲み込んだヘビ」から始まった所からワクワクだったもん」


雨西「王子様について語る部分は人形劇を思わせる映像にして世界観を壊さないようにしてたり、所々に「あー、ここ小説にあったなあ…」と思わせてくれたりな。かつての飛行士と王子様の別れのシーンを、おじいさんと女の子に重ねて描いたりもそうだし」


映子「色んな惑星の変な大人たちも、違和感なくストーリーに入れてるしね。冒険活劇的な要素もあるし、本当に最後まで飽きなかったわ」


雨西「それだけじゃなく、王子様が大人になっている所を描いたのはポイント高いな。ピーターパンみたいにずっと子供みたいなイメージだったけど、すっごい踏み込んだ内容だなと思った」


映子「女の子の吹替えをした鈴木梨央ちゃんも想像してたより良かったわ。あとビビる大木もね。有名人起用としては成功部類の映画ね」


雨西「評価はもちろん「★3つ」で。原作リスペクトが感じられる良作なので是非オススメする」


映子「これはとにかく原作を読んでから観賞するべきよ! そうすると10倍は楽しめるから」