みなさまこんにちは。
今週も何とか更新、間に合いそうです(笑)
えー、5万打記念で前回 side.K でしたので、今回は side.R です。
こちらもフリーですので、煮るなり焼くなりしていただいて結構です~
あ、でも石投げだけはしないでくださいね
非常に眠い状況で書いていたので、何だか文章がいつも以上におかしいかもしれませんが、そこは見逃してやってください。限界でした…。←いつでも、か?
それでは、以下からスタートですv
お楽しみいただけたら嬉しいです。
秋の風 - side.R -
「おーい、蓮。悪いけど次の予定の時間変更!」
「そうですか。それでどうなるんですか?」
「ふっふっふ…喜べ!何と30分ここにいられるぞ!」
どうだ!と言わんばかりのマネージャーの姿に、蓮は一瞬あっけにとられたものの、それが蓮のためのものだと分かるや、苦笑に変わる。
「ありがとうございます。じゃ、俺はいつもの場所に時間までいます」
「おう!しっかり充電してこい!」
「…あはは。はい」
ダダ漏れな蓮の気持ちに対する社なりの気遣いではあるのだが、こうもあからさまだとかなり対応に困る。結果、出てくるのは乾いた笑いとなるのだが。
それでも、返事をした後に足取りも軽く、蓮は目的の部屋へと向かって歩き出した。
その後ろ姿を見送って、社は満足げに頷くと、手袋と携帯を片手に調整を始めるのだった。
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蓮の言った 『いつもの場所』 というのは、もちろんラブミー部室である。
社が 『喜べ!』 と断言していた以上、蓮の充電の源は必ずここにいる。
そうして目指した部屋の近くまで来たとき、扉が開いていることに気付いた蓮が、何の気なしに足音を忍ばせて扉に近付くと、目的の人物の声が中から聞こえてきた。
「コーンの国も…こんな風に綺麗な空なのかしらね」
その声に応える気配はない。そっと覗くと中にはラブミーツナギ姿のキョーコが入口の扉を背に、一人で座っていた。書類整理の途中なのだろう。手に数枚の書類の束を持ち、その周辺には色々分類されてまとめられた書類が所狭しと並んでいる。
キョーコが見つめる先の、窓の外。そこには晴れ渡る空が広がっていた。
――― 君はまた 『久遠』 との思い出に浸っているんだね…
自分との思い出であるにも拘らず、踏み込んでいくことのできないそこは、キョーコと久遠の聖域。
その空の碧さに、変わってしまった自分には行けない場所だと見せつけられているようで、蓮の胸の内がぎりりと苦しい音を立てた。
昔の自分に対する、これは嫉妬。
澄み渡るあの碧い空とは対照的な、燃え上がる紅蓮の炎。
過去に戻ることはできない。あの頃の自分には戻れない。
綺麗なきれいな、ガラスの宝箱に仕舞い込んだ、輝く夏の大切な思い出。
あの頃の自分にはなかった、どんな手を使ってでも相手を自分のものにしたいという独占欲。
大切にしたいと思う一方で、思い通りにならないのなら、いっそ誰の目にも触れないように壊してしまいたいという想い。
そんな昏い思考に陥りそうになっていたら、キョーコがぽつりと呟いた。
「そうよね…もう、秋になるのよね…」
何を思いながらそう言ったのだろう。
何故か自分と同じように、楽しいというよりも、どこか翳りを感じている言葉のように聞こえて、蓮はそうっとキョーコの背後に近付いた。
――― そうだね。季節が移り変わるように、俺たちも同じ場所にはいられない…
蓮は何となく、キョーコが同じ考えでいてくれるような気がして、同時にささくれ立っていた心が凪いでいくのを感じていた。
そんな蓮の気配を感じ取ったのか、キョーコがそっと背後の自分を振り仰ぐ。
見る前から後ろにいるのが誰なのか確信してたのか、もしや?という言葉がキョーコの顔にありありと浮かんでいて思わずにっこりと微笑みがこぼれた。
「もう、風だけは秋の気配だよね。あと少ししたら紅葉の季節だし」
そう言いながら微笑む蓮の顔を見たキョーコの顔が一気に赤くなり、動揺が走っているのが良くわかる。
その様はまるで色付くもみじのようで、その愛らしさに蓮はますます笑みを深くした。
「つつつ、敦賀さんっ!お忙しい貴方がなぜここにっ?!」
「うん、少し移動まで時間ができたんでね。社さんが色々調整してる間、ここにいさせてもらおうかと思って」
「あぁ、そ、そうだったんですか」
必死で冷静さを保とうとしているキョーコの姿に癒されていく心。
ここ暫く会うこともままならなかったから、余計にそう思うのだろうか。
――― 否。いつも会っていたって、きっと同じ気持ちになるだろう。
「お茶でも淹れましょうか。もう、温かいのでもいい感じですよね」
「うん、ありがとう。でもその前に聞いていい?」
だからこそ、聞いておきたい。
「はい?何をでしょう?」
「何だか、寂しそうに外を眺めていたけれど、何かあったの?」
何を思って、秋の訪れをあんなに寂しそうに言葉にしていたのか。
問いただしている意味がわからない、と言ってしまえばそこまでだが、キョーコは蓮の問いかけに対し、素直に考えていたこと、思っていたことを答える。
空の色を見ていて、もう一人の自分である久遠(コーン)がどうしているのかと思ったということだけではなく。
秋の風に、移ろいゆく季節を感じ、『夏』 が終わり、『秋』 が来るのだと。
そう感じていた、と伝えられたとき。
キョーコも決して過去に捕えられているわけではなく、変わっていく自分を、世界を見つめていることを理解した。
やはり間違っていなかった。キョーコが感じていたのは、同じように、戻ることのできない過去に対する郷愁。
「そう…それならよかった」
思わず漏らしてしまった言葉と溜息に、今度はキョーコの方が心配そうな顔をする。
「何か、ご心配おかけしてしまいましたか?」
「大丈夫。それを聞いて安心したから」
本当に、こういう所の心の機微には敏いよな、と蓮が思わず苦笑すると、そこもまた汲み取ったように申し訳なさそうに立ち上がったキョーコは、お茶を淹れに行った。
ほどなくして、蓮の前に湯呑がことりと静かに置かれる。
「何となくで、温かいお茶にしてしまいましたが、コーヒーの方がよかったですか?」
尋ねられて、首を横に振り、「お茶でいいよ」と伝えて、湯呑を手に取る。
優しいまろやかな香りと緑の色とに癒されて、口に含んでこくりと咽を通れば全身にそのやさしいキョーコの想いが伝わり、広がっていく。
「秋風が吹くようになると、君が淹れてくれるお茶が、いつも以上に美味しくて幸せだからね」
「お、オイシイって言っていただけて光栄デス///」
真っ赤になって、それでも嬉しそうにはにかむキョーコに、惜しみない笑顔で応える蓮。
秋風が運んできたものは、過去への嫉妬、昏い思い、ではなく。
過去への郷愁をも塗り替える、やさしく心を包み込むあたたかい思い。
そして――。
好きな人と一緒にすごせるささやかな、やさしい時間。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
と、いうわけで。(←なにがだ?)
この2本で5万打記念フリー話は終了となります。
今のところ、5万のキリ番を踏んだよ~とおっしゃる方はみえないのですが、もしいらっしゃったらお知らせいただけたら嬉しいです。でもって、リクなどもいただけたらさらに喜びます(笑)
あ、そうそう。キリ番でなくとも、『こんな話が読みたい~』というご意見はいただけましたら喜んで参考にさせていただきたいと思っております。←人に頼りすぎ。
感想・ご意見、ともにお待ちしておりま~すvv