猛暑の日々が続いていますが、皆さん体調は大丈夫ですか?
お盆の帰省時期になってのこの暑さ!(いや、もうお盆終わるけどさ)
どうなってんじゃ~!!と叫びつつ。熱射病や、熱中症になるといかん、と外に出かけるのを控えているずっこい(←ずるい)親です。
許せ、お子たちよ…
さて、今回の更新も…思うようにPCに向かうことができず、内容もあまり吟味できておりませんが、1話分UPします。
日曜のうちにUPしたかったのですが…。
ま、泣き言言ってても仕方ないですね。
ではでは。以下からスタートでございます
よろしければ、最後の愚痴(←オイ)までお付き合い下さい。
妖-あやかし-恋奇譚 8
~凪の章~
「参内、遅れまして申し訳ありません、主上」
入ってきた一瞬、キョーコが目が合ったように感じたその人物 ―― 蓮は、その時だけ口角を上げて笑みをこぼしたかのように見えたが、それは本当に僅かな間でしかなく。
蓮は視線をキョーコの左手方向の御簾の奥、帝へと向けると優雅に座して頭を下げた。
「よい、許す。そなたが遅れたことに関しては、先ほど晴明が説明してくれた。ごくろうであったな。まだこの後も一働きしてもらわねばなるまいが。…さて、姫が何か言いたそうにしているようだ。諸侯らも、よいかな」
帝が蓮に対してのねぎらいを示すと、おもむろに蓮が下げていた頭を上げる。そして、同意を求められた先の3人と晴明とともに再び軽く頭を下げて異議のないことを示した。
「御意。では、しばらく時間をいただきます」
蓮がそう言うと、全員元の姿勢に戻り、視線はキョーコのほうへと向いた。
「…と、いうわけで。こんな種明かしでごめん。家の名は途中から隠すつもりはなくなっていたけど、切り出す機会が見つからなくて」
申し訳なさそうな顔で自分に視線を向ける蓮に、キョーコは思わず赤面してしまった。
これまで、夜の逢瀬でも御簾越しに蓮の背格好の雰囲気と顔立ちは何となくわかっていたのだが、日の下でその顔を見たのは初めてだった。今までと違うのは、その顔と視線をまともに自分が見れる…見えてしまうこと。
そして、これまでと同じなのは、まるで御簾などないかのように、しっかりと自分と視線を合わせてくる蓮の不思議。
蓮の眼光の鋭さに捉えられてしまいそうな自分がいることに、改めてキョーコは胸を躍らせつつ、でも、なんとなく必要以上に話をしてはいけない気がして、確認しておかないといけないと思ったことだけを質問することにした。
「…ご身分に関してのことは、隠すのは当然のことかと。私の驚きはそれは大きゅうございましたが、伏せていて下さったことで、逆に構えることなくお話しさせていただけましたから。この身に余るご配慮、ありがたく思います。ところで…あのっ」
「…?どうした?」
「お尋ねできる立場でないことは重々承知しておりますが、その…」
言わなくては、と思いつつも中々切り出せない。天と地の間ほど身分の差がある相手に対して、言い淀むキョーコの態度はごく普通の反応ともいえるだろう。
その様子と、視線の方向に気が付いた蓮は、すぐさま 「あぁ、失礼」 と、自分とキョーコとの会話を興味津々で聞いている3人と晴明に視線を向けた。
「方々、勝手ながらご紹介をさせていただきます。姫、こちらにおいでの方々は、左大臣、右大臣、別当(蔵人所)の御三方。今回の詮議に参加していただく予定でいる。そして…もう紹介は済んでおられるようですね。晴明どのには、今回の詮議の真偽を見極めていただく予定でいる。なにしろ、事は普段私たちが目にすることのできない 『鬼』 にかかわることだからね。専門家なしに話はできないから」
「そうでしたか…。晴明様にご依頼されたこと、というのはこのことだったのですね」
説明を聞きながらキョーコは頷き、感心したようにそう言うと、その晴明がまたくすくすと笑いながら蓮を見る。
「姫に内緒で、というあたりはこれまでの卿からは考えられないことだったから、正直驚いたがね」
「!! っ、晴明どのっ」
「悪いことではないと思うが。…しっかし、まぁ。仕事の鬼だとばかり思っていたら、随分と姫には甘いんだな?」
「~~~っ。そのくらいで勘弁してください、晴明どの。…それに、あまりのんびりとしているわけにはいかないですから」
参ったなぁ、と苦笑しつつ晴明とやり取りをする蓮を見て、今度は黙っていた3人がにんまりと笑いながら顔を見合わせた。
「それは残念だのぅ。あと少しそのあたりを詳しく聞きたいものであったが」
「うむうむ。卿は仕事の評は聞こえが良いが、色恋沙汰にはとんと…のう?」
「ほんに。まぁ、足しげく通うておった姫と言うのが鬼姫であったことは意外であったが」
「おぉ、それは同感じゃ。儂は中務省の高円寺家の姫かとばかり。あの姫は何かと才に秀でておると評判で、大納言卿にとりなしてほしいと何度も頼まれておったからの…」
「いやいや、式部省の百瀬家の一の姫…逸美姫も美しいと評判であったのに、見向きもしなかったという理由が…ではのう」
口々に好き放題言う3人に、キョーコの顔が曇っていった。
わかってはいたつもりだった。蓮が自分のもとへ通ってくれていたのは、そのような艶めかしい理由ではなかったことくらい。だが、こうしていかにも自分が対象外として見られている、異質な存在だと言われているような話を聞くためにここに来たわけではない。そう思うと同時に、蓮が 『鬼姫』 のもとに通ったことでその評判を落としてしまったことがわかり、口惜しさにぎゅっと目を閉じた。
・・・と。急に辺りがし…ん、と静寂に包まれる。
うすら寒いような気配さえ漂う異常に、キョーコがそっと目を開ける。
そこには、なぜか真冬の寒さに凍えるサルの集団のように、3人が青くなって寄り添い、がたがたと震えていた。怖さに視線を外せないでいる様子の彼らの視線の先をたどると、キョーコも同様に固まってしまった。
蓮が静かに笑っている。
ただ、それだけだったのだが…。3人は心の中で叫んでいた。
(((目が…笑ってない~~~~~っっっ!!!)))
周囲の温度は確実に2~3℃は下がっているだろう。その恐ろしいまでの冷気を放ちながら、静かに蓮は言った。
「方々。俺に対しての言葉はいくらでも言っていただいて結構。ですが、姫のことを見下すような言葉は謹んでいただきたい。おわかり、ですよね」
言い方こそ丁寧で静かだが、その言葉には溢れんばかりの怒りがこもっていた。
緊迫した空気が流れる中、キョーコがどうしよう、とおろおろして3人と蓮を交互に見ていたその時。
――― パンっっ
と、皆を覚醒させる柏手の音が響いた。
「はい、そこまでに。大納言卿、無駄話の時間はないのだろう?この後のことを先に姫に話しておかなくてよいのかな?」
空気を読んでいるのかいないのか。のほほ~んとした口調で晴明が切り出した。
が、蓮と同様に口元は笑っているが、その眼は冷静さを保っており、決してその言葉がふざけて紡がれたわけではないことを物語る。
その晴明の言葉で、はっ、となった蓮は、気まずそうにキョーコに向き直った。
「すまない、君にこんな思いをさせるために呼んだ訳ではないのに…」
「い、いいえっ!むしろ、ごめんなさい…」
「え?どうして君が謝るの?」
「私のせいで要らぬ勘違いをされて、さぞご不快なことでしょうに…なのに、かばっていただいて。ありがとうございます」
「勘違いだなんて…どうして」
「いいんです、無理していただかなくても。大臣様たちにも、お間違いなきようお願い申し上げます。大納言様が、関心をお示しになったのは 『鬼』 についてのこと。私に対してではありません」
「姫っ!」
御簾越しで互いの表情がはっきり見えるわけではない。が、お互いが言いたいことを言えずにこらえている辛い表情であることはよくわかった。だからといって、何ができるわけでもない。
キョーコは気持ちを切り替えるように軽く目を閉じて、大きく深呼吸した。そしてゆっくりと目を開ける。
「大納言様、先ほど晴明様が言っておられた、この先のこと、についてお話しいただけますか?」
その静かな言葉に、蓮もキョーコの思いを汲み取る。
そう、今は先にやらねばならないことがある。
「では、この後のことについて簡単にお話しさせていただきます」
「はい、お願いします」
蓮はこの後の詮議の内容についてかいつまんで話し始めた。
それは、先日の“不破少将の鬼斬り”についての是非を問うものであること。不破少将がこの場に呼ばれ、その時のことを説明するため、キョーコにはそれが真実かどうかを答えてほしいこと。ただし、その時まで声を出すこと、名乗ることはしないように。という諸注意的なことで、不破少将にキョーコの存在が先に分かってしまうと、少将が取り繕って話をする可能性が出てしまうため、内緒でその御簾の中にいてほしい、というものだった。
それを聞いて、キョーコの手にぐっと力が入る。
やっぱりあいつはここに来るのね…。
それは、キョーコの先見が当たるということに他ならない。そうなれば、必ず嵐は起こる。
凪の時間は、ここまで ――― 。
つづく
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
・・・あれ~?例の彼、出てこなかったっすね~Σ\( ̄ー ̄;)
おかしいなぁ。←
いや、出そうと思ったんだけど、説明させるまでに色々させてたらまたこんなに長く…
好きなキャラじゃないことと、ちょいと出てくるとやっかいな事態が起こる予定なので、出すタイミングが…。
って、言い訳しても仕方ないですね。
次こそは、話が大きく動く予定です。
よろしければ、また皆さん次もお付き合い下さいませv