彼の死後いろんな報道番組や特番で動く彼を観た。やはり俺は「最後の最後」の頃のマイケルを見てもなんとも思えなかった。泣けなかった。だってやっぱキョドってるもん。変だもん。彼が本当に「肌が白くなる病気」だったとして、その鎮痛剤の副作用で顔が崩れたんだとして、それでも俺は彼に同情できなかった。うーん、なんて言うんだろう?「俺とは違う人」っつーか...「違う生き物」がなんか言ってるみたいな感じ?なんか生きてる気がしなかったんだよ。だがどうだろう。キョドる前のマイケル...「DANGEROUS」以前の動くマイケルがテレビに映し出されると...俺の胸は急に詰まったのだ。そこで彼は確かに「生きて」いた。
「I WANT YOU BACK」、「THRILLER」、「BEAT IT」、「WE ARE THE WORLD」、「BILLY JEAN」、「BAD」、「BLACK OR WHITE」、「REMEMBER THE TIME」、「SCREAM」...オウメーン。キラッキラだ...。もの凄くかっこいい、よその星から来た王子のような男がそこにいた。誰も彼になれない。なれるわけがない...強烈に思わされた。誰も彼の痛みを知らない。誰も彼の孤独を知らない。誰も本当の彼を知らない。だがその歌声は世界中の人々に降り注ぎ、共感され続けるのだ。なんという皮肉。なんという反比例。彼は死んでも孤独なんじゃないだろうか。「わかってもらおうとしない孤高」を選んだがゆえに。
戦った人だと思う。抗った人だと思う。苦しんだ人だと思う。悩んだ人だと思う。ポップアイコンたる彼の胸に内包されていたブルースはいかほどの辛辣さだったのか。すべてのゴシップが本当だったにしろ嘘だったにしろ、そのゴシップ自体が彼を苦しめただろうことは明白だ。彼の苦しみに触れることはできない。我々はただ想像するしことしか許されない。だが本当は想像すらしなくてもいいのだろう。音楽と私生活とを完全に切り離したポップスターの望みは我々が彼の歌やダンスに陶酔することであり、それ以外の何ものでもないはずだ。抗うな。ただ身を任せればいい。ほら、彼のナンバーはするりと耳に滑り込んでくる。
誰よりも孤独な男が「君は一人じゃない」と歌う時、俺は勇気をもらうだろう。そこにはブルースがある。歌ってやつは経験がにじむから恐ろしい。誰よりも優しく響く彼の歌声はそれとは真逆の深い闇から来ているのだろう。傷ついた分だけ優しく響くんだよ。音楽ってのはそういうもんだぜ。口でも喉でもなく「人間」が奏でるものなんだ。人間が人間に語りかけるんだよ、言葉じゃない部分で。その人の歴史、生き様、経験値。だから彼の歌はこんなにも強くて優しくて悲しくて、そして痛々しいのだ。CDが再生する彼の歌声はいつまでも少年のようで、今日も瑞々しく危うい魔力を振りまき続けている。
今我々の目の前に横たわる無愛想な事実。メーン。世界はマイケルジャクソンを失った。俺は筋金入りの盲目的なマイケルファンではないし、ゴシップ中毒の揚げ足取りでもない。失礼に感じる箇所があったら申し訳なく思うよ。他意はないんでね。ただ俺にとって彼はトラウマ的なブラックミュージックの入り口であるし、「BAD」のビデオで「地下鉄+グラフィティ+不良」というベタなヒップホップ観を植え付けてくれた恩人(?)でもあるわけで何も書かないわけにはいかなかった。つーかマイケルジャクソンが死んだって?何も思わねーわけがあるかよ。俺は'75年の子供だぜ。マイケルで育ってるんだっての。
今やっと言える気がするけど、マイケル、あなたが死んで俺悲しいです。あなたが世界にいないことがじんわり悲しいです。すいません、泣いてません。そういう種類じゃないんです。じんわりなんです。俺はあなたの声が好きです。リズム感が好きです。尊敬しています。同じ時代を生きることが出来て光栄でした。安らかに眠って下さい。ピースアーメン...。と、いうわけで。俺の中でイマイチ整理がついてなかったマイケルの死が今昇華されていく。シリーズ後半は冷めた目線で申し訳なかったがこれも俺なりの愛。俺だってファンだし。ファンだって人間だし。まぁなんだかんだ言って死ぬまで彼の曲聴く俺の負けだよ。MJ、永久に。安らかに。以上、長々御清聴あざーした!完。

R.I.P.