マリオブラザーズのルイージはマリオに類似していることから名付けられたと聞いたことがあるが真実はいかに?まぁ知ったこっちゃないが俺が自分の社名にマリオという言葉を入れたのは誰かに類似したなにかではなくオリジナルでありたいというメッセージが込められている。ことはどーでもいっか。
ハイこんちたぱ。フダディ来たりて文字を打つ。冒頭の話は本文とさほど関係してこないので悪しからず。しかし類似点という言葉、これが今回のキーワード。何がどう類似なの、教えてフダディ!まあまあ焦るなって。トイレは平気か?これは長くなる話だぜ。なんせ男の生き様の話なんだよお嬢ちゃん。
じゃ始めよう。みんな俺が二月にベストアルバムを出したことは知ってると思うけど実際当の本人的にはよーわからん感覚が消えない。まあ悪くない商品出したなーとは思うけど収録した曲たちが俺の全キャリアのベストワークになるかはまだわかんないじゃん。もちろんラップやめるわけじゃないわけでさ。
俺はいつでも前を向いてるから後ろを向いた評価に対してどこか冷ややかになってしまうところがある。いやいや、ありがとうとは言うし思うよ。嬉しくないわけじゃない。ただ…なんだろうな。送り手と受け手の感覚の違いってとこか。我々はベストよりアルバムを評価されたいんだな。勝手!俺もまた人間。
まだ人生最高の自分を探してるからな。最高のアルバムを作りたい。自分に伸びしろがあると信じて疑わない。満足してねー…つーかむしろ喉は渇く一方かも知れん。大人になっていくってのはそういうもんだぜ。欲望が具体的になっていく。ワーキャー言われてお金をもらう以上の何かをいつでも欲してる。
受け手に取ってはオリジナルアルバムもベストアルバムも商品に変わりはないわけで、楽しみかたや受け取りかたを強制するのはナンセンスだよな。そのくらいわかってるつもり。でも「ダボ君またアルバム作ってるんですか?こないだ出したばっかじゃないっすか~」とか言われると複雑なわけよ。別モンなんだ。
ベストは厳密にはアルバムじゃないと思うんだよ。純粋な過去のコラージュであって、それ以上の何かではないと。0から1を生み出す作業ではないということだ。既に世間に出回ってる曲たちを並び替えてパッケージしただけの話で俺はそれを「産みの苦しみ」とは呼ばない。苦しみってのはそんなもんじゃねーよ。
はっきり言って俺は申し訳ないくらいの気持ちなんだ。苦しみもしねーで世に作品を出しちまった。それを買っていただいたり、それどころか喜んでいただいたり。言い過ぎなのはわかってるが俺は詐欺師にでもなった気分だよ。苦しんで吐き出すのがアーティストだと思うからさ。稼働がないことに慣れてねーんだな。
だからプシンのようにベストアルバムという商品に否定的なアーティストがいるのも頷ける。出したくない、と。わかるよプーちゃん。我々はアルバムというアートフォームにこだわりたいのだよ。コンセプトや曲順や曲間のマジック…一時間ちょいの音の旅、その世界感に君達を浸すこと。そここそに命を削ってるのだ。
だもんでベストの製作にはまったくラップ脳を使ってないっつーか。まあ一曲新曲入れたからアレだけど選曲に関してもアンケートを軸にしてるし実質俺がした作業はいつものアルバム製作とは違うわけ。並び替え作業。曲順いじり。ベストの制作ってのはそんなもんよ。思い入れ的にも大層なことじゃねーんだよ、苦しくないから。
俺はもっとヤバイ曲作るしヤバイアルバム出すしヤバイライブやるもんね絶対。間違いなく。ラップ脳使いまくって苦しみまくってのたうちまわって新しいガキをこの世に産み落とすね。誰かの人生を変えちまうパワーのあるやつ。俺自身そうやって音楽に助けられて生きて来たから今は俺がそれをする。そうしたい。
使命感だなんてかっこつけねーよ。これはエゴだよ。欲望だよ。俺がそうしたいんだよ、どうしようもなく。俺を信じてるやつが何人もいるんだぜ。貰ったもんは返したいよ。そしたらまたくれるだろ。そうやって俺と君でいつまでも与え合っていたいわけ。それって愛だろ。生きる理由になり得る特別なことだよ。
でも散々どーだこーだって言ってきたけどアゲハでやったリリースパーティーでなんか少しわかった気がしたんだ。納得したっつーか。結局ベストアルバムってのはアーティストのエゴじゃねんだと。自分を支えてくれる人たちへのアーティストからの感謝状なんだわ。それ以外の何物でもないということ。そう思った。
俺はなんせびっくりしたんだよ。あまりの集客にもあまりの友人や同業者たちの多さにもあまりの声援にも。10年を越える付き合いのアゲハ金曜イベンターの順くんにもあんなに褒められたことなかったからキョトン面。なんだこれ??しばらく俺は拍子抜けしてた。だってさ、みんなめっちゃ喜んでくれてんだもの。
つまりベストの企画なんて大層なもんじゃないって決め付けてたのがそもそも俺のアーティストエゴだったってことだな。時に仏法のようだなヒップホップは。色々なことを学ぶ。まだまだ子供だな俺もと気付かされる。泣いて笑ってケンカして気付けば10年、みんなの支えがなかったらありえなかったことばかりだよ。感謝!
まぁなんのことはない。ベストがキャリアの到達点と見られることを俺が恐れてただけであって、アゲハに来てた観客たちは俺のキャリアの「節目」を目撃しに来ただけだったわけだ。「だってもっといくでしょダボ!」そう言われた気がした。1000人に背中を押された気がしたわけよ。ありがてーじゃねーの。いかねーと!
俺をずっと見てきて聴いてきて、これからもそうしていくって言ってくれる人たちがいる。俺と生きていくってことだろ。感動するぜそーいうの。まるでプロポーズじゃん。病める時も健やかなる時も…でしょ。俺は愛を誓うぜ。見えないリングを君にはめて一生離さないぜベイビー。俺とサポーターはずっと一緒だ。
そんな気分にあいつもなってんじゃねーのかね。仏頂面した俺のDJのことだよ。10年勤めた土曜のレギュラーを辞めることくらいなんでもねーから騒ぐななんて口じゃ言うけどよ。お前のキャリアの節目を目撃しにあんだけの友人とサポーターが集まってよ。お前への愛で箱がパンパンだったじゃねーの。最高だったよ。誇らしかったよ俺は。
いつもと変わらず浮足立たず、なんら最終回の気配すら漂わせずに冷静にプレイするやつの背中。でもブースから眺めるフロアーはボッカンボッカン!満場の笑顔の人、人、人。最高のパーティー。あーたのしー。たのしくてさみしー。終わりたくねー。止めないでくれー。涙ぐんじまったのは内緒にしてくれよ。
やつが感慨深かろうがなかろうが俺たちには関係ない。こちとらあの箱でお前のプレイ聴きながら10年出会いと別れを繰り返してんだ。赤い壁眺めて嬉しい酒やら悲しい酒やらあおって10年だぜ。感慨深いよ!思い出と繋がってんだよ、あの箱とお前のプレイはよ。記憶のBGMなんだよ。だから遠い目になんだよ。寂しいんだよみんな。
俺はやつの気持ちもわかるよ。騒ぐな騒ぐな、落ち着けい!DJやめるわけじゃないんだから。うん、俺もベストアルバム出した時そう思った。ラップやめねーし騒ぐなと。アーティストは未来を見てるから当たり前。お楽しみはこれからでしょ!っていつでも思ってねーと前向きになれん。向上心は創作の母ですから。
でも俺のベストアルバムを評価してくれてアゲハに来てくれたサポーターの気持ちも今はわかるんだ。結局あの日俺は愛されていたんだわ。お前は一昨日円山町で愛されてたんだよハヂメ。10年間俺達が必死こいて誠実にやってきたことが評価されて信頼されてんだよ。だから周りが勝手に感慨深いわけだろ。誇ろうぜ相棒。
なんせ俺もあいつも気付けば10年選手。なげーようでチョッパヤ、瞬く間。昔も今もともにヒップホップを生きる戦友だ。俺とあいつにしかわからない感覚が確実にあって、それが俺達を戦友たらしめている。いつまでも信頼の置けるドープなMCとDJでありたく思うね。それこそが俺達の類似点であるべきだろ。オケーイ!つーわけでひとまず10年間お疲れハヂメ、というお話でした。イェア。

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