起きてブログチェキったら朝方こんなコメントが。曰く「今日はトコナさんの命日ですね。仲の良かったダボさんなら憶えてますよね?」......はぁ?誰に向かって何聞いてんのかわかってんのか?悪気なくても腹立ったぜ、なんだその言い方。だから削除したよ、わりーなコメンター。だって日本語は言い方ひとつだろーがよ。御質問にはお答えしといてやらあ、仲の良かったダボさんはもちろん憶えてるに決まってんだろボケ。11月22日はトコナの命日に決まってんだよ!



大人げない始まりになっちまったことを詫びるぜ。だがよ、なめて欲しくねんだな、俺の気持ちをよ。だってあいつと俺は同じ看板背負った戦友なんだぜ。いい子ちゃんじゃないヒップホップをメジャーまで持ってって業界と戦った仲間なんだよ。俺達は互いにファンでありライバルだった。だから俺はあいつが大好きで、同じくらい大嫌いだった。そんな同業者は何人もいない。四年前の今日、そんな人間を失ったんだ。察してくれよ。ナイーブにもなるって。



あの日俺たちはニトロのツアーで福岡にいた。7時開演で9時過ぎには終わる早い時間のライブ。本編は順調に進んでアンコールまでが無事に終わり、汗だくの俺たちは楽屋で高らかに乾杯した。ニトロはみんな福岡が大好きなので今夜の予定についてメンバー同士熱くイメトレを交わし、大いに盛り上がっていた。だがそんな中、マネージャーが重い口を開いて言った言葉は一瞬で楽屋のムードを変えてしまった。「えー、みなさんそのままでいいんで聞いてください...今日の夕方にトコナXが亡くなりました。」



すぐには泣けなかった。頭が真っ白になってそれどころじゃなかった。え?なに?なにそれ?わかんない。死ぬ?ん?わかんねー。うっそでー。えー。すぐには受け入れられない自分がいた。ふらふらと携帯をチェックしてみるとリューゾから10件近い着信が。くっ...マジかよ。マジなのかよ。バカヤロー冗談じゃねーぞ...。やつが死んだのも知らずに俺はヘラヘラライブしてたってのかよ。うあああ。死ね俺。俺が死ね!そこから俺は夢遊病のような状態であまり記憶がない。



俺は晩飯に行かず一人ホテルにこもった。頭を整理する必要があった。なぜならその晩のアフターパーティーで俺はソロでライブをしなくてはならなかったのだ。神様、あんた意地悪だよ...。こんな辛いこと経験させてあんた俺をどうしたいんだよ。涙はまだ出なかった。やっとの思いでリューゾに電話すると「大ちゃんトコナが...トコナが...!」と崩れ落ちた声。うんわかる、わかるよリューゾ...。俺たちは明日通夜で会うこととトコナの夢を全部俺らで肩代わりすることを約束し合い電話を切った。



時計の針が一時を回り俺はクラブへ向かった。なんだろうこの心境は。俺の心は不思議と静かに澄み切っていた。やることやり切るまでは狼狽できねー。俺はプロのラッパーだ。待ってる客がいる。ここであたふたしたショーを見せるわけにはいかない。金を払った客に罪はねーし、それこそトコナに笑われちまう。俺は自分を強く持った。そして何事もなかったようにショーを始めた。一曲、二曲、三曲。MCを挟んで四曲、五曲、六曲。つつがなくショーは進んでいった。



何度目かのMC。俺はその場にいる人間全員にトコナが死んだことを告げた。客たちはキョトンとしていた。そりゃそーだわ。俺もそーだったんだからな。よくわかんねーよな。うん。そして俺は「もしも明日が...」をトコナに捧げた。明日もし俺が死んじまったら、という内容の俺の持ち歌。トコナもきっとこう思ってるはず。そう思って俺はひとつひとつ噛み締めるように言葉をに放っていった。聞こえるかよトコナ?届け。あいつに届け。俺のダチに誰か届けてくれよ。忘れないって伝えてくれよ。



そしてショーは終わった。俺はメンバーと握手をする余裕もなく楽屋を抜けて裏口に回った。ゲロ吐く前の予兆みたいな感覚が俺を襲っていた。だめだ。もうだめだ。椅子に座って頭からバスタオルを被った瞬間、緊張の糸がぷつんと切れた音がした。俺のダムが決壊した。俺は声を上げて泣いた。周りの声も聞こえなかった。メンバーやマネージャー、イベンターたちが俺を取り囲んでいたが人目をはばかる余裕はなかった。俺の目にこんなに涙があるなんて思いもしなかった。俺は止めどもなく泣いたよ。何年分もさ。



みんながみんなトコナとのストーリーを持ってる。実際知り合ってた人間もそうでない人間も人生の中でトコナXを体験した人間は全員そうだと思う。トコナが死んでからトコナを知ってぶっとんだ後輩も沢山いる。一枚のCDが一人の人間の人生を変えてしまうことがあるが「トーカイ×テイオー」は正にその類いのアルバムだろう。モサドで鼻っ柱の強さを強調していたトコナだがソロ作においては完全に自己を丸出しにし、リスナーの誤解を解いた。あのアルバムはやつそのもの。知らない人間もトコナの人生をアルバムから垣間見たし、リスナーはやつの人間味を愛した。



ヨー、トコナ聞いてっかよ。勝手に置いてっちまうなんてひどいやつだよおめーわよ。俺たちがどんだけ肩を落としたかわかってんのかよ。どーせ成仏しねーでまだふわふわ遊んでんだろ?MURDER THEY FALLのトコナスペシャル、あん時おめーいたらしいじゃねーかよ会場によ。おめーの愛娘が言ってたぜ。「パパおるよ!」ってよ。「客席の上に浮かんでみんなのライブ観とるよ!」って俺にチクったじゃねーかよ舞台袖で。バレてんだよ。でもおめーもう肉体ないかんな。まだ肉体に縛られてる俺らがおめーの夢肩代わりしてやらあ。心配すんなよ、みんなガッチリやってっからよ。



イコールもAKもバリバリやってるぜ。OZも大忙しだ。女トコナなんて言われてたアンチもバシバシやっとる。アナーキーが今じゃ時の人だぜ!すげーよな。マッチョも般若も相変わらずハンパねーラップかましてる。リューゾはガッチリ会社回してるよ、江戸に引っ越して毎日俺と遊んでるぜ。デリもモノスゲーアルバム作ってる。籠師もアルバム出るしな。あとペイジャーが復活するんだぜ!俺も一曲やるぜ、羨ましいだろー。ライムスとジブラは武道館でライブやったぜ!すげくねー?俺もやったらおめー遊びに来いよな。浮かんでろよ武道館の空中にさ。で俺にバイブスを分けてくれよ。おめーの恐竜みてーな波動をさ...誰も真似出来ねー波動を。



おっと、幾分センチになっちまった...。とにかく、だ。日本人でヒップホッパーだったらトコナを避けて通るなよ。まぁあいつの声が避けて通らせないと思うけどさ。やられちまったなら天才、鬼才、どうとでも好きなように褒めてやってくれ。そして才能とオーラに満ちあふれたでっかい男がこの国の名古屋という街にいたことを誇ってくれよ。俺達の身体には同じ血が流れてる。あいつは俺達の、日本のヒップホップの誇りだろ。今は誰も手が届かないとこにいっちまったけどCDに形を変えてあいつの魂は生きてる。CDをかければあいつは生きてる。聴きなよ。そして祈ってやれ。あのラップの鬼によ。







安らかに、ってな。