あの女は今頃どうしてるのかな



会ったばかりの頃はまだガキだったあいつ



黒い肌にキラキラした目だけがでっかく輝いてた



ただのハナタレのガキだと侮っていた俺を嘲笑うように



あいつは瞬く間に女になっていった



今思えば俺は夢中になってたのかも知れない



小さくて赤い舌が俺の指を舐めると肌が泡立つのを感じた



でも機嫌が悪いときはどうしようもなくヒステリックだったな



朝帰りしてやっと寝付いた俺はよく叩き起こされてた



身体ごとダイブしてきたり耳を噛んだり



そんなクレイジーな女だったからよく喧嘩もしたな



時々俺も大人げないことしちまってたと思う



お前なんかどこへでも行っちまえって思うこともあった



それでも俺はあいつが大好きだったんだ



どっちかが死ぬまでずっと一緒にいるんだと思ってた



でも結果的にそうはいかなかったわけだ



あいつがいなくなったベッドはどこまでもひんやりとして



俺は自分の帰りを待つ存在を失ったことを思い知らされた



今頃俺じゃない誰かの腕に抱かれてるんだ



あの頃と同じ安らかな顔でそいつのベッドで丸くなってるんだろ



目を細めて喉をゴロゴロ鳴らしてさ



そいつの肌に爪を立ててるんだろ



おもしろくねえ



あいつを女にしたのは俺なんだぜ



でももうあいつの肉球は俺ではない誰かのものなんだ



だから俺んちにあいつのブラシやトイレや砂があってはいけない



すごく早い周期でコロコロを買い替えても意味がない



なぜならあの女はもう俺のものではないからだ



その事実が今更俺の胸を切なくさせる



そんな秋の夜もある



Amy Winehouseを聴きながら目を閉じて



キャビアのように艶やかなあいつの黒い肌を思い出してる



あの女は今頃どうしてるのかな



強情でヒステリックで甘え上手な



あの黒い肌の女



お前が恋しくなる季節が



そこまで来てるよ