俺が目黒で暮らしてたことは何度かここでも匂わせたと思う。でも目黒のどこかは言ってなかったべ?引っ越した今だからこそ言おう、俺は目黒区の碑文谷で結構長いこと暮らしてたんだ。最寄り駅の学芸大学周辺とか目黒郵便局周辺とかダイエー付近で俺を見かけた人もいるんじゃねーかな?その辺は俺のテリトリーだったわけさ。馴染みも馴染み、大馴染みよ!





そもそも練馬を経て都立大の八雲に住み始めたのが'97くらい。いわゆる若者の定番系セマセマワンルームだね。ニトバナに書いたような時期はそこで過ごしてる。ちょっと前に通りかかったらもう無かったねー。まあ築四十年とかの三軒しか無い長屋だったし無理もねーわな。んでメジャー行って契約金で引っ越したのが碑文谷の三丁目。俺は昔からのクセで駅から遠い所ばかりに住んでしまうのよねー。んでその物件に空き巣が入ってキモくなって引っ越したのがこないだまで住んでた碑文谷一丁目のマンション。七中の辺りだね。だから碑文谷内で一度引っ越ししてるんだ。





都立大とか学芸大とか俺はホント好きでさ、自由が丘に出かけるのとか駒沢公園に散歩しに行くのとかそういう生活を心から愛してた。田舎育ちだからあんま都心都心したとこは落ち着かないっつーかさ。だからほどよく都心から離れたとこが好みの俺には碑文谷はバッチリだったね~。基本家族が住む住宅街で落ち着いてるし上品でさ。目黒通りなんてベンツばっかで羽振りいいしさ。もちろん思い出も腐るほどあるわけさ。それに行きつけの店とかね...そういうのはやっぱ軽く寂しいもんだよね。





そして俺は今日、久々に学芸大学に出向いた。行きつけのSOFT BANKと行きつけの三井住友銀行に用事があったのだ。昼過ぎのまぶしく晴れた学芸大学に向かい、駒沢通り沿いの駅入り口で降りてSOFT BANKへ。それから三井住友へと向かった。この二つは俺にとって非常に感慨深い存在なのである。何度も携帯をなくして機種変更を繰り返す俺をMisiaのように包み込んでくれたSOFT BANKのスタッフゥ~の皆さん。何度もキャッシュカードを再発行しに来る俺をMisiaのように忘れないでくれたあげく物凄く良くしてくれた行員の皆さん。頭が上がらない...。





俺はその双方の担当さんに用事が済んだ後に住所変更の手続きを頼んだ。SOFT BANKも三井住友もどこにでもあるものだ。俺が新しく住んでいる世田谷にももちろんそれらはあり、住所変更するということは「この支店に通うことはもう無いんですよ」と告げに行く作業であるわけだ。なので俺は幾分センチメンタルな気分になった。離れたくて離れるわけじゃない。この街が好きだ。だけど。なんか女と別れる時のような気まずさが走る。スキンヘッドの俺でも後ろ髪を引かれるっての。





その後行きつけの古本屋に立ち寄り、ダイエーまで歩いて買い出しを済ませ、一階の回転寿しで遅い昼食を取った。時間帯のせいか眩しい若妻たちがいつもよりさらに多い。碑文谷ダイエーの奥様たちはイケてっから気をつけろ!芸能人も多し、But 同業者も多し。まあいいダイエー(?)なんですわ。俺がダイエー来たら最後はやっぱ目黒通り沿いの喫煙所で一~二本が基本。今日はいつもより遠い目で火を着けた。ここに通ってもう十年近い。いろんなことがあったなーってな。





10年間ここらでメシ喰ってきた。老夫婦がやってた量の多い定食屋。ボウリング場の一階にあった小綺麗な喫茶レストラン。犬が入れるカフェ。踏切前の朝までやってる寿司屋。地下の焼き肉屋。坂の途中のシーフード屋。ブログにも書いた切れ味鋭い蕎麦屋。米屋がやってるうまい麦とろ屋。ガード下のあったかい定食屋。ジャズマニアの店主が作るラーメン屋、茹でタンが素敵な牛タン屋。家から二分の中華屋に五分の洋食屋。クラスカの一階、ソファに埋まるイナタいバー、シャレオツなカリフォルニアダイニング。





行きつけのミニスト、行きつけのコミュスト、行きつけのセブン、行きつけのエーピー。行きつけのタバコ屋、行きつけのスタバ、行きつけの携帯屋、行きつけの銀行。ああ、行きつけとは「生きつけ」なのだなー。生きてきた中でよく訪れた場所。いろんな思い出が詰まっとる。そしてそのほとんどは「元・行きつけ」へと。泣いて笑って十年か...23だった俺も33よ。でも俺は若い日の思い出に寄りかからないために住み慣れた街を後にしたんだ。これは何度目かの卒業なのだ。今までの自分を見つめ直し、さらに新たなレベルへ向かうための儀式なのだー!





いや、オーバーだと笑ってくれていい。でもさー、引っ越しなんて趣味でするもんじゃねーじゃん?大抵はのっぴきならない事情があったりするじゃん。俺も並々ならぬ決意を持って引っ越しをしてるってことよ。生活を変えるためにまず景色を変えたかったと。ここ十年でしでかした失敗は一個も繰り返したくないからここらで気分転換して空気を入れ替えた上で気持ちを新たに頑張っていこうという趣旨なわけ。だからポジティブな引っ越しだね。オイラとことん前向きよ。





つーわけでグッバイこの辺!ってことで煙草を揉み消しタクシーへひらりと。一路世田谷へ。俺よ育て!もっと育て!住み慣れた街を捨てて新しい場所で一から生活を積み上げるのだ!おうよ、オイラ負けないぜ。新しい部屋も滅茶苦茶気に入ってるしまるで問題ない。経験したことない新しい生活が始まってるんだ。車窓の外を碑文谷の景色が飛んでゆく。過去になった記憶のように後方へと過ぎ去っていく。そしてそれは徐々に終わり、何分後かには世田谷の景色となって俺は現在暮らす街に着いた。迷いはない。





というわけで俺の何時間かの旅は終わった。実家に帰るような気持ちでついこないだまで住んでた街を泳いだ。あの頃の俺がまだそこにいた。そして俺はそれを置いてきた。新しい街、新しい自分。まだまだ俺はここででかく育つのだ。新居の窓から都立大、学芸大、自由が丘、駒沢の日々を思う。中でも碑文谷...俺が一番長く暮らした街。目黒から世田谷に移った俺は碑文谷にいた俺じゃない。違わないと意味がない。過ごした時間だけが俺を導くのなら、後ろは振り向かないのが正解であろう。ありがとう、そしてさようなら。大好きな街。碑文谷 On My Mind。