昔は高嶺の花だった。
買える金があっても買わなかった。
きれいに履き回してナンボだと思っていたからだ。
一文無しだった当時の自分には豚に真珠だったのだ。
スニーカーなんて身分不相応だと感じていた。
どうせ一足を履き潰すならばスニーカーよりもタフなブーツを選んだ。
だから昔の俺の写真は大概ティンバーの6インチを履いている。
たまにセールのスニーカーを買うこともあった。
でもすぐに汚れてしまうので結局俺はブーツばかりを履いていた。
時代背景もあったのだろう。
当時の俺はWU-TANGやBOOT CAMP CLICKなんかに夢中になっていた。
彼らはこぞってティンバーランドをロックしていたのだ。
今と違って昔は「冬」こそBな季節の代表であったのでしかたない。
宇田川のBボーイも夏でもフードを被って膝まであるブーツで武装していた。
今ではBな季節といえば「夏」である。
そして正にそのBな季節が「冬」から「夏」に変わりだす辺り。
JAY-Zがバウンス曲を多発しだし、DMXやJA RULEが出てきて...。
HOT BOYSやMISTYKAL、LUDACRISなど南部勢が台頭してきた頃。
2000年付近?
Bボーイの正装はフーディから白Tやタンクトップやスローバックへと。
ニットキャップやハンチングはNEW ERAやドゥーラグへと。
そしてティンバーランドはNIKEを始めとするスニーカーへと流行が変わった。
そんな時代にやっとこ俺も一発当てたわけだ。
メジャーデビューして借金を返したわけ、なおかつ余りもたんまりあった。
この頃からだな、俺がスニーカーを買い出したのは...。
俺の取ってスニーカーは「富の象徴」でもあったんだ。
金が余ってたら買うもの。要は贅沢品ってことだね。
フレッシュでクリーンであることが流行してたため、大人買いも乱発!
白Tはダース買い、白×白FORCE ONEも一度に五個買い。
一度汚れたらポイ。ヘッドバンドやリストバンドも一度したら客に投げちゃう。
そうやって四~五年は遊んだわけだ。新品最高、汚れ最悪のスタイル。
で...突然飽きた。
浪費することに飽きたのかな?虚勢張るのに飽きたのかな?
とにかく新品にこだわる事に疲れた。汚しやすい大きな服にも飽きた。
身体に合ったサイズの服を着る事が楽しくなり始めたのだ。
いいものを長く使う楽しさを思い出した。
汚れや傷を「味」として楽しむ事を思い出した。
Bボーイになる前は古着を着ていた俺はもともと持っていた感覚を取り戻したのだ。
スニーカーは相変わらず履いているが、昔とは違う感覚だ。
気に入ったものは汚れても履いているからだ。
汚れが記憶を蘇らせるのもまた楽しきこと。これこそ「味」だ。
今日はその昔のまだ移転前のGROW AROUNDで買ったFORCE ONEを履いてきた。
相変わらずすっげーかっけー!白×黒×シルバー!
産まれて始めて二足買いした靴だ。ストラップがイイ!
タンがレザーじゃないのも時代だね~。
これはもう汚れだらけ!だし傷だらけだね~いーかげん。
ちょっと前だったら外には履いてかなかったレベルだね。
でもこの汚れやしわが今は好きなのだ。愛おしい~。
流行的にも味の出たスニーカーは今「アリ」になってるらしいし。
キレイな服に汚いスニーカーとか今っぽいスタイリングだしね。
とにかく昔と変わらず今もスニーカーを愛している。
でも昔と違うのは色眼鏡をかけて愛してるわけではないというところだ。
長いこと俺は「高嶺の花を金でレイプするような感覚」でスニーカーと接してきた。
今はもっと「身近なもの」として接してる。相棒っつーか。
「ともに年をとっていくもの」っつーか...。
たとえば俺は今日履いているこのFORCE ONEを捨てることはないだろう。
好きだからだ。穴が空いて履けなくなっても部屋に飾るだろう。
今はそのようにスニーカーを愛している。おわかり?
ただ白×白のFORCE ONEだけはそうはいかないぜ。
限りなく新品に近い状態がクールだ。異論は受け付けない!
そんなこんなでスニーカーにまつわるちょいとした無駄話でした。
やっぱスニーカー最高だね。お洒落は足元から!
GOT KICKS?
HOLLA!