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男は蕎麦だろ~。
馴染みの蕎麦屋に一人でふらりと出向くのは楽しきこと。
散歩にちょうどいい距離を歩いていつもんとこへ。
女は香水が邪魔だから連れて行かぬ。
戸を開くといつもの主人が笑顔でお出迎え。
せいろ二枚と久保田。
気分次第で八海山。
つゆを舐めながらちびちび飲んでると一枚目が出てくる。
一枚目は薬味無しでいただくのが俺の流儀。
すみずみまでつゆを味わうように平らげる。
そして食い終わる頃に最高のタイミングで二枚目が。
二枚目はわさびを少しとネギを入れていただく。
大根おろしも付いてくるがそば湯のタイミングまで使わない。
せっかくのつゆが薄まっちまうからな。
二枚目も平らげたら蕎麦ちょこに大根おろしをドボン。
そば湯を飲むことで蕎麦は完結するの知ってた?
茹でる段階で湯の中に栄養素がいくらか溶け出てしまうらしい。
灰皿を頼んで煙草をふかしながらそば湯をいただく。
大根がさらさらといい感じ。
血がきれいになる錯覚を憶えるのもまた楽し。
遠い目をしながら残りの冷酒をちびり、またちびり。
思う存分一人の世界に浸るために混雑する時間は避けたい。
昼もいいが夕方が俺的なベストだね。
煙草を吸い切る頃には冷酒もそば湯もエンプティ。
ごちそうサマンサ!
主人の笑顔が今日もいい。
始めてここに来たときは財布を忘れてしまい怪訝な顔をされたもんだ。
それからもう十年とか経つのかな?
気付けば俺もすっかり常連だのう。
俺にとってここの蕎麦を食うのは瞑想に近い。
いつでも裏切らない味が俺の心を落ち着かせる。
蕎麦屋は日本男児の心のふるさと。
女と食うならうどんもパスタもいいだろう。
でももう一度言わせてくれ。
男は蕎麦じゃね?
マチガイナイ!