私は車にはまったくと言っていいほど
食指が動かない質で、
本作もなんの予備知識もないままに見た。
そんな私にも、黎明期の自動車産業というのが
いかにクレイジーな業界だったかということを
本作はこれでもかというくらい思い知らせる。
フェラーリは言う、
「他のやつは車を売るためにレースに勝とうとする。
俺は(レースで)走るために売る」
フェラーリの最終的な欲望は
ビジネスでの勝利ではなく、
レースでの勝利である。
その過程で友人のドライバーが死んでも
新しく雇った若きドライバーが死んでも、
はたまたレースの観客が事故に巻き込まれて死んでも
彼は涙を流さない。
私生活では本妻と愛人と間を行ったり来たりし、
マスコミには人殺しと言われても
彼は戦いを止めない。
マイケル・マン監督で、アダム・ドライバー主演となると
どうしても見る側の期待は高まるが、
その期待に十分に応えている。
50年代の車や電車のセットだの
服装とか髪型とかが
手が込んでいてすごい。
50年代を再現できるのが
ハリウッドのすごさである。
邦画ではもはや昭和を再現することすらできない。