相変わらず、年頃の娘が嫁に行く、という話である。
作品の公開から約60年経っているが、
今この作品を見ると、まるで時代劇を見ているようだ。
昭和も遠くなったものである。
佐分利信演じる父親が、娘が自分で見つけて来た結婚相手を
「俺は不賛成だ」と譲らない。
昭和の中盤あたりまでは、
こんな光景がいたるところで見られたのだろう。
何かの本で読んだが、見合い結婚と、恋愛結婚が拮抗していたのが
だいたい昭和40年ころで、その後は恋愛結婚の方が主流になっていく。
今では、見合い結構の方がむしろ珍しく、
結婚は個人の意思に任されているわけだが、
その結果、結婚しないで年を重ねる男女が相当増えてしまった。
結婚相手は自分で決めていい、というのは
いかにもロマンティックで良いことのように聞こえるが、
自分で相手を探して自分で決める、というのもなかなか大変なものである。
そもそも、多くの人は、結婚相手を選べるほどそんなにモテない。
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小津の映画はたいていは、ほんわかしているようで
どこかキレがあって面白いのだが、
この『彼岸花』については、
キレがあまり感じられなかった。