松本清張の小説が原作だが、彼はこの作品を見て「原作を超えた」と評したらしい。

私は原作を読んでいないが、映画として見事であるのは確かだ。

 

とにかく圧巻なのは、後半40分からの、犯人の謎の出自が明らかにされるシーンで、

ここでは会話はなく、ただ犯人が演奏するピアノが流れる。

セリフはなくても、そこで何が起こっているかは十分に見て取れる。

むしろ、セリフがないことで、見る者の胸の内に奥深い感情を喚起させる。

 

決して単純とは言えないシナリオを143分で収めているところにも感心する。

脚本に山田洋次が加わっているが、省略の名手である山田洋次が監督であれば

もっと短くなっていたかもしれない。

 

松本清張の何がすごいって、社会の上層部から最下層、

日本の都心部から地方まで目が行き届いていて、

それでいて商業価値のある物語を量産したところで、

この作品を見て改めてすごさを思い知った次第。

 

 

 

 

 

 

 

最近見た映画はこれ

 

Ameba映画部

 

草彅剛が食い詰め浪人の役をやっているが、これがなかなかいい。

ジャニース事務所を飛び出し、テレビ業界から干された彼の境遇と重なるところもある。

 

また、彼はもともと頬がこけて骨格が出やすい顔だ。

アイドル時代には、それは必ずしもプラスではなかったかもしれないが、

今回の役には適している。

そんでもって声も低く、ドスが効いている。これがまたいい。

 

シナリオにややぎこちなさはある。

小判を盗んだのではないかという嫌疑をかけられ、

「無礼者」と怒りを表す。ここまではいい。当然の振る舞いである。

 

しかし、なぜがその後、嫌疑を晴らすべく、切腹を試みる。これが不可解。

しかも、それを見かねた娘が、金さえ用意すればいいのかと、

自らの身を吉原に投じようとする。

その心意気に打たれた吉原の女将が金を用立てる。

ここの展開にかなり無理がある。

 

ただ、このぎこちなさが致命的かというと、そうでもない。

見終わった後には、なかなかの満足を感じることができる。

 

後半の殺陣のシーンは見事で、斎藤工は刀を危なっかしく振り回す場面は

ハラハラしたし、刀がぶつかる金属音がなんとも快感であった。

 

 

最近見た映画はこれ

 

Ameba映画部

 

スコセッシをやりたかったんだろうね。

『グッドフェローズ』とか『アイリッシュマン』みたいなつ。

 

中盤までは確かに、物語がどんどん乗って来て

坂を転がっていくような面白さがある。

 

しかし、どうしても引っかかるのが

ヤクザの世界をやたらと肯定しているところで、

そこに強い違和感がある。

 

特に不快だったのは、

後半、主人公の兄が病院で死を迎えるシーン。

苦しむ兄を見て、主人公は医者の先生の足を蹴り

「俺の兄ちゃんなんだよ、楽にしてあげろ」など

無理難題を言う。

この病院が特にインチキな治療をしているわけでもない。

 

表社会の正義をあざけり、無頼を気取りながら

病気となったら表社会の象徴とも言える医療に頼る。

その上真っ当な市民に暴力を振るう。

 

ヤクザらしく野垂れ死にでもしてくれれば

まだしも見どころはあるんだがなあ。

 

この作品が大して話題にならないのは

観客の観る目がないのではない。

この作品に、時代についていけない老化した感性が

透けて見えるからだろう。

 

 

最近見た映画はこれ

 

Ameba映画部

 

私は車にはまったくと言っていいほど

食指が動かない質で、

本作もなんの予備知識もないままに見た。

 

そんな私にも、黎明期の自動車産業というのが

いかにクレイジーな業界だったかということを

本作はこれでもかというくらい思い知らせる。

 

フェラーリは言う、

「他のやつは車を売るためにレースに勝とうとする。

俺は(レースで)走るために売る」

 

フェラーリの最終的な欲望は

ビジネスでの勝利ではなく、

レースでの勝利である。

 

その過程で友人のドライバーが死んでも

新しく雇った若きドライバーが死んでも、

はたまたレースの観客が事故に巻き込まれて死んでも

彼は涙を流さない。

 

私生活では本妻と愛人と間を行ったり来たりし、

マスコミには人殺しと言われても

彼は戦いを止めない。

 

マイケル・マン監督で、アダム・ドライバー主演となると

どうしても見る側の期待は高まるが、

その期待に十分に応えている。

 

50年代の車や電車のセットだの

服装とか髪型とかが

手が込んでいてすごい。

 

50年代を再現できるのが

ハリウッドのすごさである。

 

邦画ではもはや昭和を再現することすらできない。

 

 

最近見た映画はこれ

 

Ameba映画部

 

長期出張で、東京の雑色というところに住んでいる。

 

雑色は東京と神奈川の境目くらいある。

多摩川に面しており、この川を渡れば神奈川県である。

 

雑色は、昭和の雰囲気を残しており、小さなコロッケ屋さんとか、

おでん屋さんとか、焼き鳥屋さんがよく目に付く。

 

そして嬉しいことには、銭湯が3店か4店くらいある。

銭湯好きにはたまらない。

 

中でも『たかの湯』はかなり人気で、サウナ好きの中では知る人ぞ知る、といったところ。

あそこのロウリュはかなり暑いぞ、とか、サウナで音楽がかかるんだ、ということを、

私も知り合いから聞いていた。

 

出張期間中に、ぜひとも行きたい。行かねばならない。

 

ところが、入りたくても、いつも混んでいる。特に土日はかなり混みあう。

 

私は土日が休み。夕方くらいがきっとピークだろう。

じゃあ真昼間の12時くらいはどうかな、と行ってみるものの、それでも混んでる。

自転車置き場はいっぱいだし、下駄箱も結構埋まってる。

 

私は基本的に、混んでる場所がかなり好きでない。

あんまり混んでそうなので、引き返し、別の銭湯に変更する。

ということを何度か繰り返した。

 

「よし、行くなら朝一だ」とある時、心に決めた。

 

言い遅れたが、この『たかの湯』は朝6時から営業している。

 

さて昨日。土曜日。休日である。

なぜか朝5時に目が覚めてしまった。

 

せっかくの休日。

もう少し寝ようと目をつむっても、眠れない。

どうやら身体は活動に向かっているらしい。

 

よし、『たかの湯』に行こう。

 

私は多摩川を散歩した後、

着替えて、サンダルを履き、『たかの湯』に向かった。

歩いて15分くらいである。着いたのは6時15分くらいだった。

 

切符を買って中に入る。

まず驚くのは、店内がきれいなことである。

2年くらい前に、リニューアルしたらしい。

 

さっそく、お風呂の方へ向かう。

中に入ってもキレイだ。

建物自体が新しいということもあるが、掃除が行き届いているのがうかがえる。

 

開店から間もないのに、中にはすでに客が結構いる。

すでに7人くらいはいただろうか。

 

身体を洗い、ぬるめの湯で少し休んだ後、サウナに入る。

部屋は小さめで、中が暗め。

テレビはついてない。これがいい。

 

私はサウナの中では、考え事をしたいので、

サウナにあるテレビが邪魔で仕方がない。

 

何度かサウナと水風呂を往復していると、

うわさのロウリュが始まった。

 

BGMとともにアナウンスが流れた後、

曲がかかり、ロウリュタイムが始まる。

この日は「B‘z」がかかった。多分「B‘z」だと思うが、間違ってるかもしれない。

音の振動が伝わってくる。きっとスピーカーも、なかなかしっかりしたものを使っているのだろう。

 

私はたまたま一番上の段にいたが、聞いていたとおり、かなり暑い。

私は1分も持たずに外に出た。

 

その後、何度かサウナと水風呂を繰り返した後、電気風呂などを楽しみつつ、お風呂を出た。

 

サウナ付きで800円程度というのは安い。そりゃ人気になるわけだ。

出張中にあと何回行けるかな。