続樺太物語

2024-09-24 09:54:08　北海道開拓倶楽部５周年記念事業「蘇る樺太」に参加して

と題してブログ投稿した。

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　爺さんの生まれは、樺太須取郡鵜城村である。昭和２０年終戦の年に出生したとある。

昭和２３年に樺太から引き揚げ。真岡から函館までの最後の引揚船の１船前の船でギリギリにロシア人の支配から逃れて着の身着のまま脱出したと両親から聞いている。

　終戦後、なぜすぐに疎開しなかったかは不明。（現在探求中）

　財産や証券類は、引き揚げ時の税関検査で函館税関に没収されたというが、爺さんには全く記憶にない。

　小学生になったころ、父がいつも座布団代わりに座っていた動物の毛皮と、母が大事にしていた狐の襟巻があったことは、覚えている。

　中学生になったころと記憶している。「なんの毛皮だい」と聞いたところ、樺太時代に飼っていた「樺太犬」の毛皮だと教えられた。

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樺太引揚船は、第５次引揚が、最終引揚であるから、「最後の引揚船の１船前」と聞いているから、第４次引揚を指していると思われる。

　鵜城村においては、ソ連軍と戦闘があったかどうかも分からない（聞いていない。）と、記したが、樺太の鵜城村から昭和２２年に引き上げられた方の手記をインターネット・サーフィンして発見したので、抜粋さていただく。

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樺太移住

　私の父が明治39年から樺太の西海岸鵜城村に毎年漁夫１０人位を連れて春５月初めに渡樺し（鵜城村に）、海が荒れて漁が出来なくなる９月中旬切揚げて郷里亀田郡銭亀沢村（函館市と３里位離れている。）に帰ってきます。

　毎年その繰り返しです。私も父に連れられて渡樺していたのですが、だんだん漁も不況になり帰京することが出来ず、大正３年５月頃から樺太に永住するようになり、その後、漁業から農業に転向し父が死亡（昭和６年没）

終戦直前、直後の激変

　忘れもしない昭和２０年８月１０日午後２時ころ在郷軍人鵜城分会員５０名位が市街地の前浜で手榴弾の投てき訓練を夢中でしているところへ、ソ連の偵察機が現れその様子をカメラに収め飛び去ったのです。それが終戦後判ったのですが鵜城村に軍隊が大勢駐屯していることで敵の目標になり８月１３日正午頃飛行機の爆音がするので警棒団本部の窓からその方向を見上げると敵の飛行機が２機現れすぐ機銃掃射が始まり市街の方々に焼夷弾をバラマキ去って行ったのです。幸い死傷者はありませんでした。

　それから敵の攻撃は日増しに激しさを加え夜間は潜水艦による艦砲射撃、焼夷弾攻撃等々、しかし在郷軍人分会には小銃が10丁くらいよりなく、まったくの無防備の状態でした。市街地の住民は戦火を恐れて山奥に避難する者また南下（久春内、泊居方面）して難を避ける者、自動車がないので、病人とか歩けない老人はチヤカーに載せて山坂の多い道を苦労に苦労を重ねて避難したのです。

　途中力尽き歩けない老人を木の根元に枯草を集めてその上に寝かして涙ながらに立ち去った人も大勢あったそうです。

　8月15日朝方突如ソ連海兵団が鵜城市街の南端にある船着場目がけて機関銃を掃射しながら上陸開始その数5千人くらい。その時殆どの住民が安全な場所に避難していたので死傷者はありませんでした。

　私も総家族９人を安全な所にと思い、市街地から３キロほど離れた農家に避難していたのですが、弾丸がそこの玄関までビュービューと音を立てて飛んでくるので危険を感じ更に山奥に避難したのです。

　当時２歳半になる赤ん坊がいたのですが、樺太は８月中旬になると朝晩の冷え込みがひどく夜は着物だけでは寒いので子供を妻との間にはさんで暖をとり、寒さを少しでも、防ごうと思ったのですが、「寒い、寒い」と泣くのです。焚火は煙が敵の目標になるので、炭火で炊事の支度です。飲料水は川水を使用したのです。

　敵が上陸した日（８月１５日）夕方、ソ連軍司令官の命令で避難先から出て来て現地に復帰しそれぞれの生業につけ、従わないものは直ちに銃殺するとの厳重な達しなので、我々が出て来たら市街地の入り口でソ連兵２０名くらいが自動小銃を手に持っていて身体検査が始まり、その祭、時計、指輪、宝石類などを全部提出させられたのです。

　そして、検査を終えて１６歳以上男子（病人と６０歳以上の男子は除く）は、そのまま自宅に帰らず鵜城小学校校舎に強制収容されたのです。

　強制収容されてから５日目、１６歳以上６０歳までの男子（病人は除く）は、そのまま船入間に連行され発動機船に乗せられ８里北に離れた恵須取町の女学校に収容されたのです。

　私どもは５０人一組とされ教室にそのまま収容されてしまった。食事はニギリ飯が一個とミソ汁お椀で六分目くらい、これだけではとても十分でありません。文句を言うとすぐに銃殺です。　

　夜は板敷の床に着たままゴロ寝です。

　作業は、様々な荷物の積み下ろしから、重油の詰め替え、死体の処理等さまざまでした。

　作業に行くときは四列に並べ１０メートル置き位にソ連兵が自動小銃を突きつけ我々を威嚇し、逃げる素振りでもしようならすぐ銃殺です。

　収容されている間、残してきた家族の安否が心配で夜もグッスリ寝ることができません。

　家族も連行された我々の行方が判らず、もう処刑されたのではと心配していたそうです。

　収容されてから２１日目解放の許可があり、急いで自宅に帰りました。

　ソ連の行政は稼げる者は登録し、何かの職業に従事なければならないので、私は漁夫に、妻と子ども（１６歳以上）は、農作業に従事したのですが、漁夫は大変でした。小さな帆船で毎朝２時半沖へ出ていき、晩、我々が家に帰って寝るのが９時すぎです。樺太の海は荒いので風浪の日が多く本当に苦労の毎日でした。

　冬になると、造材仕事です。零下２０度の樺太の冬です。手足が凍るような寒さ、ブルブル震えて仕事も手につかない始末です。

　昭和２２年７月日本への引揚命令が出て２０３（ニイマルサン）高地といわれている断崖絶壁の道路を通り恵須取から引揚者の集合場所「真岡」に行く石炭の積取船に乗せられ貨物扱いです。

　船が恵須取を出てからだんだん天候が悪くなり風雨も激しくその上、波のシブキが我々の頭からかかってくる。ようやく真岡に下船、身体検査や消毒が済んで高台にある真岡女学校に収容され約１か月船待ちの後、日の丸のひるがえる日本からの引揚船「高倉山丸」に乗船８月２１日なつかしの日本の土を踏んだのです。

　 高倉山丸

　樺太引揚後の記録

　昭和２２年８月３１日函館港に上陸、千代ｹ岱元兵舎に収容させられ、９月１日、無縁故者として紋別郡下湧別村に移送され、そこの青年会館に落ち着きました。

　上陸のとき、渡された一人千円計９千円、これが唯一の私どもの財産です。

何せ家族９人の生活がかかっているので、早く働くつもりでも、なかなか適当な仕事がないまま、１か月が過ぎました。

　丁度下湧別町床丹という部落で澱粉工場と農業を経営している人から私のところで働いてみないか、食べることだけは保障するからと言うので、働くことに決まり来たのですが、住宅は僅か12坪（乾燥場を改造したもの）で、9人の家族が寝るのがやっとです。当時はトウキビ粉が主食で、米はホンの少しの配給、澱粉の黒い二番粉を薪ストーブの上で焼いて食べ、また、南瓜、馬鈴薯もよく食べました。

　24年3月引揚者を対象にした開拓地の払い下げがあり、私も約８町歩の荒地の払下げを優先的に受けて入植、開拓に従事したのですが、重粘土に石コロが多く、それに高低が激しく畑として利用できるのは僅か2町歩位、それでも暗渠を掘ったり、石コロを取り除いたり苦労したのですが、実績が上がらず、牛を入れて酪農に取り組んでみたが駄目でした。

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爺さん考

　亡き父・母一家も引き上げ後、「無縁故者として紋別郡下湧別村に移送された。」は、同じなのです。湧別町の芭露の奥地に「東芭露」と言う山間部に部落があり、酪農を中心とした地域ですが、この上芭露の奥地に入植させられと聞いています。

　石コロだらけの傾斜地であり、開墾には向かないということで、芭露の隣の計呂地というサロマ湖沿岸部に出て、石渡木材と言う木工場で働いたと聞いています。その後、事情があり間もなく芭露にあった大沢木材の木工場で働き、工場の社宅で生活しました。

　その後、両親は、爺さんが小学３年の年、遠軽の井上木材という木工場で働き、二人の姉も苦労して家政婦や商店に勤めました。兄は、商店で働き、後に米穀商で働きました。

　爺さんは家族で唯一遠軽の高校を出してもらい（あまり勉強はしなかった。）、昭和３９年公務員になりました。

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　やはり、引揚者は、皆さん苦労された生涯をお過ごしになったようです。

昨今の急激な社会構造の変化や経済発展等は「夢のまた夢」で、逆に高齢者となった今、つくづく「住みずらい世の中になった。」と実感しています。

　終戦・引き上げ後の苦労等から観れば、幸せこの上ない現在ですが、貧しくとも家族や一族とのまとまりがあり、楽しかった。苦労した回顧は、過去の思い出であるが、父・母とも樺太時代の話は、ほとんどしてくれなかった。

　墓の下で、「樺太時代の話は、ほじくらないで」と言っているかもしれない。

　合