始めましての意味を込めて、小説書いてみた
斜陽
_恋とはなにか_
筆者は、ある私立中学に通っていた。(そこは、中高一貫校だった。)そこに一人、風変わりな学生がいた。名を細川良平といった。噂によると、かなり勉強ができるらしい。しかし、私が見る限り、この男は少しも勉強していなかった。
彼が中学三年生の時の話である。彼は一つの論文を書いた。「正義論」彼曰く「人間、ストイックに生きるべきである。皆親に恩がある。親孝行に人生を捧げるべきである。恋愛、結婚してもよいが、それは親を喜ばせるために行うべきことであり、自己の欲望のために行うようなことがあってはならない。一部の人には、この主張は少々、厳しく思われるかもしれない。しかし、これは正義なのである。辛くとも、この道を極めることにより、体内に正義の力が蓄積し、その力によって、至上の幸福の境地「悟り」の世界に至ることができる。」多少中二病の傾向はあるが、さすがに秀才の考えることは違うと思った。
彼が変わりだしたのは、高校に入ってからだった。細川は笹田(彼の友人)に風俗を教えられた。ある日、「おい、面白いからこっち来い。」と悪友が呼ぶ。「なんだ。」細川はもったいぶって行った。笹田やその仲間が、端末でアダルトサイトを閲覧している。初め良平は、「こんなもの見てはだめじゃないか。」などと正義漢ぶっていたが、そのうち染められて、誰よりも率先してこれを見るようになった。性欲が一気に増大し、今や、彼は毎日オナニーをしないと精心的に耐えられないそうである。
次の日から彼はおかしくなりだした。「いや、俺は決して下品な男ではない、私はただ、風俗を求めているのではない、私の心は、愛の追求をしようという素直な研究欲だ。」などと独り言を言うようになった。私はプラトンを尊敬しているのだ、先生の志を継いで、愛の研究を、などとも言っていた。その次の年のこと、彼は「行動」に移った。恋人をつくろうとしたのである。しかし誰のところに行っても気味悪がられ、断られた。男は内心焦りだした。
決着をつけてやろうという者もいた。「細川君、嫌がる人と無理やり交際する権利はあなたにはありませんよ。」そんな馬鹿丁寧な言葉を使ってある教師が彼に「優しく」説教しようとした。周りにいた生徒たちは、好奇心と細川に対する軽蔑心に動かされ、一生懸命耳を澄ませた。彼は頭をあげた。彼に話しかけたのは「青髭」だった。(この教師はまだ20代の若者で、いつも顔に髭のそり残しが青く残っていた。細川はそれを馬鹿にし、陰で青髭、青髭と呼んでいた。)「僕にはわかりません。何が言いたいんですか?」やはり、そこは細川らしい、いきなり反抗的な態度に出た。さらに言った。「僕は女子に交際を強制したことなど1度もありません。そもそも、僕には特定の好きな人がいません。女子はこの世にいくらでもいる。ふられたら他の女のところに行くまでです。」、「だ、誰でもいいってことか?」青髭はやっと一言反撃した。「はい」強い口調で答えたが、唇がひくひく震えていた。「この前、保険の先生が授業中におっしゃいました。女性を顔で判断してはいけません、心の底から感動しました。(本当に、本当に)僕はそれまで、女性を顔だけで判断していました。 女性を判断する基準から、顔を除くと、他に何も残らなくなりました。女性は皆同じです。」勝った、と良平は一瞬にやりとしたが、何か不安があるのか、すぐに真剣な表情に戻った。「いけないんですか?」青髭は、返す言葉がなくなり、あきれたように立ち去った。細川は心の不安が消えないらしい、だめなの、ねえ、間違ってるの?一部始終を見ていた女子に聞いた。「わたしゃ、知らんわ。」女は女特有の妙な笑い方をして、冷たく答えた。野次馬は満足したかしらん。皆見なかったふりをして、自分の作業を続けた。
「細川、お前かっこよくないからな」言ったのは、堀井正太郎という、狐のような顔をした男だった。「でも、自信持ってるし_」彼は暗い顔になった。周りでクスクス、忍び笑いが聞こえた。「やい性犯罪者」「生き恥」そういって、はやす者もあった。男は叫んだ。「俺は、女好きではないんだ。だけど、昔から、妙に女性を求めてしまうところがある。苦しいんだ。もう、自分の意志では踏みとどまれないんだ。」彼のそれこそ、心からの叫びであった。しかし、周囲はそれを冷たく黙殺した。女性は、性欲の強い男を、本能的に恐怖し、軽蔑しているらしい。担任の教師も見ないふりをしている。(これは40代の女性で、自称禁欲主義者である。)彼は絶望的になった。自業自得じゃない、こう言う者もあった。_神よ、私が罪人ならば、今すぐ殺してください_心の中で、彼はそうつぶやいたという。
当時の担任の教師の名は、上田裕子という。保険の教師である。禁欲主義者なのだろうか。放蕩癖というか、欲におぼれて身持ちのおさまらない者を本能的に軽蔑しているらしかった。それから、この女性は男を愚物としか見ていない。世にいう、「男嫌い」である。こんなことがあった。保険の授業中、「結婚」について「多くの男性は、結婚相手を、顔で判断します。」うふふと笑った。女らしいいやらしさが出ている。男は低俗・低脳です、と口に出しては言わないが、彼女の笑いは、そういう事を意味していた。大変不快であった。また、こんなこともあった。「自慰」行為について。「…男性は、自慰をすることにより、性的快楽が得られます。…」教科書にこんな文章があった。それを解説するとき、男はいいですね、女はオナニーできないんですよ、女は性欲のはけ口がないんですよ。女は不幸です。なんてぬかす。男は性欲の塊だ、とでも言いたいのだろうか。この女はまたうふふと笑う。(当時、私は上田の言葉を真に受けた。一時、女は性的快楽を感じないのではないか、そういう事に興味がないんじゃないか、と疑ったのである。しかし、やがてこれは嘘だと分かった。本・漫画・インターネットなどから、女も自慰行為をする。女も男遊びや浮気をする、という情報を入手したからである。だまされるところだった、危ねえあぶねえ。正しく性教育を行わないのは、いかがなものかな)
皆細川を馬鹿だと見下げた。ところがただ一人、それに満足しない者がいた。藤村奈津子。この女は、彼の論文から、彼を知り、好きになり将来結婚しようとまで考えていたのだ。しかし、最近の細川は堕落している。でも、彼は決して悪い人じゃない、悪いものに振り回されているだけだ、いつか必ず、更生してくれるはず、と彼女は心の底で信じていた。しかし、ある日、心配になって担任に相談した。上田裕子である。「細川君のことが忘れられないんです。どうすればいいですか、あの人、決して悪い人じゃない、と思うんですけど。昔はほんとに立派な人でした。彼のこと信じたほうがいいですか?」上田は細川を大変軽蔑している。そもそも、ストイックな人間という者は、愚かな人間を軽蔑するために生存しているようなものだから。直ちにアドバイスした。「もう、彼のことは忘れなさい。そんなの、昔のことでしょ。今の彼は完全な愚人です。おこちゃまです。あんな人間とかかわっていると、あなたも同じような人間にみられますよ。他にもいい人はいっぱいいます、安心しなさい、あいつだけはやめなさい。」上田は、大体こういうことを言った。おこちゃま、この言葉を、彼女は特に強く発音した。なんとしても藤村の中にある、細川の肖像を壊さねば。「しかし、あの人は今病んでいるんです。病気にかかっているだけだとしたら」「心が弱いから病気にかかるんです。よく覚えておきなさい、ああいう男が社会に問題を起こすんですよ。」上田は断固としていった。約10秒間、藤村は考えていた。「でも_」彼女はどうしてもすっきり納得がいかない様子で、帰って行った。
また、この頃、細川はまた新たに2つの論文を書いた。これらはなかなか面白い。一つ目、「権利・義務論」その中で、彼はこう主張している。
「全ての個人について、人間はなんでもしてよい権利があり、同時に、結果的な運命を受け入れる義務がある。これが正しい。世の中、難しい理屈はない、ただ上記の原則があるのみである。ナチズム、社会主義思想と聞くと、悪と断じる人もあるかもしれぬ。しかし、あなたがそう思うのは、あなたが[民主主義思想が絶対的に正しい]と洗脳されているからであり、他の理由はない。」なるほど、少し同感するものがある。二つ目、「欲望論」そこで、彼はこう書いている。
「すべての個人について、人間は自身の欲望に支配されている。欲望は全部で3種類ある。生命欲(生きるための欲求。呼吸、食事、睡眠など)、性欲、名誉欲(名誉を得たい、他者から認められたいという欲望)の3つである。人は口先では、清らかなことを言っていても、実は、この三つの欲望に支配されて行動しているだけにすぎない。例えば、人助けをする人はよく、[少しでも困っている人の助けになりたい]などと言うが、本心は違う。所詮、[人徳者として他人から認められたい]という名誉欲に支配されて行っているだけにすぎない」彼の人間不信が、よく現れているではないか。(やべえ、ちょっと寒気がしてきた。ちょっと気味悪い。)
彼はこれらの二つの論文を、周りの人に進んで公開した。皆ちょっと読んでからおかしそうな、気味悪そうな顔をして逃げた。波多野(醜い女であった。上田と仲が良い)なんかは、「お前の文章なんて読みたくねえよ、ねえ」何て言ってほかのクラスの女子(醜い女、特に男性否定論者は、意外と女性に好かれるものである)とうなずき合っていた。だが例外もいた。佐竹(男)はそれを読むと、目を輝かせ、「さすが良ちゃん、君には文学の才能がある」何て言ってやたらほめた。本気で言っていたのか、それともからかっていたのか、微妙なところである。周囲は、うふふと笑う。男は今にも泣きだしそうな、苦しそうな悲しい目をした。その景色を見て、藤村はまた頭を痛めた。彼女は思ったという、(ああ、この人はきっと今、寂しいのだ。こないだもいじめられ、誰にも同情されず四面楚歌だ。極度に気が弱って、[自分を理解してほしい]とあんな冷血なクラスメートにも、すがりたい気持ちになっているのだ。かわいそう、せめて私がそばに寄り添って包んであげようかな)しかし、彼女はそれ程、狂信的な恋愛至上主義者ではなかった。加えて、彼女の心はもはや、完全な子供ではなかった。徐々に、打算的な、大人の冷酷さも現れてきていたのだ。(それにしても、愚かだ、愚かすぎる、これが細川君かしら?確かに先生のおっしゃる通り、こんな「おこちゃま」と付き合ったら悲惨なことになるかもしれぬ。君子危うきに近寄らず、仕方がない。)
時は過ぎ、とうとう卒業式になった。担任(上田ではない。中年の、気の弱い男の先生であった)が言った。「それでは皆さん、今日が最後ですから、みんな一人ずつ前に出て、一言ずつ。」ある者はアカペラではやりの歌を歌った。ある者は、高校時代の思い出を語った。細川の番が来た。皆にやにやしてみている。「では、[フェニックス]歌います。この曲は私がこの青空学園に入ってから、はじめて覚えた、思い出の曲ですから。」彼は歌い出した。
朝もや分けて、光さすとき、大地が割れくだけ、燃え尽きた灰の中から_
ひどく音痴だった。皆、おかしそうに失笑した。しかし、唯一、藤村だけは笑えなかった。思い出の曲を熱く歌う、かれの純粋さに心打たれたのだろうか、それとも、懐かしい曲を聴いて、中学時代の「立派な」彼の姿を思い出したのだろうか、彼女の目から涙が流れた。処女の涙は美しい。細川も突然、ひいっと声が裏返ってしまった、彼も彼女のことが好きだったのだ。何とか最後まで歌い終えた。
Q1.ニックネームは?
ごっちゃん
Q2.最近のマイブームは?
小説を書くこと
Q1.好きな食べ物は?
ラーメン
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