ダジャレ大国ニッポン(仮)

ダジャレ大国ニッポン(仮)

ダジャレの向こう側へ…

当ブログは、1つの「ダジャレ」を元に物語を考えてみるコンテンツです。
ダジャレの向こう側の世界をどうぞご堪能ください。

【書いてる人】
加藤たかこ (@takakokatou) ※不定期日曜日更新

ケイスケ (@kskwrtr) ※不定期土曜日更新
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「このイクラ、いくらですか?」

山田は少し震えながら
思いきって聞いた。

緊張のあまり
瞳孔はカッと開いている。

たみこさんと
近所のスーパーで買い物中
事件は起こった。

妻と熟年離婚して早5年。

だるま制作工場で知り合った
たみこさんに一目惚れ。
アプローチを続けた結果
今日晴れて 夕ご飯を
作ってくれることになったのだ。

なにが良い?とたみこさんに聞かれ
即答で
チラシ寿司が良いと答えた。

華やかだし、安く済むし
おまけに楽しいイメージだ。

北島三郎だって
あんなに嬉しそうにしている。

混ぜるだけの寿司の元を手にとり
これでいいよね?と
たみこさんに意気揚々と確認しようと
した時である。

たみこさんが
売り場の一部を見てこう言った。


「あら、イクラがあるわね。」



山田は
立ちくらみを覚えた。

なんだって?

イクラ、、?
まさかそんな高価なものを
買えというんじゃ。

恐ろしい不安は的中した。


たみこさんは言い放った。

「イクラにしましょうよ」



万事休す。

もう少しで
が~ん。という年をかんじる台詞を
口に出しそうになった。

続いて
ペリー来航という言葉が
頭をぐるぐる回る。


平和だった我が身に
なにかがやってきたのだ。

襲来だ。

どうしたものか。
イクラなんか買うお金はない。


イクラよりオクラはどうかな?

こう、言ってみようか。
言葉の響きも似ているし
いけるんでは?

そう思案している私に
たみこさんは爆弾を落とした。

「イクラに決まり。
これ、値段がついてないから
貴方聞いてよ~」


いけるわけなかった。

オクラのアイデアは
使う間もなく
名前どうりお蔵入りになった。


絶対絶命。


イクラ購入はもう決まっているのだ。

山田は決意した。
俺も男だ。
イクラがいくらであろうと
たじろがない。

そして
店員をわっしとつかまえ
こう聞いた。


「このイクラ、いくらですか?」


ところがあまりに
緊張したせいだろうか。
恐ろしいほど声が裏返ってしまった。

腹話術の人形のような声が
売り場に響いた。

甲高い声で
何かを言われたスーパーの店員は
あきらかに笑いを堪えていた。

はい、、??

山田は焦ったが
咳払いをしてもう一度
今度ははっきりと聞いた。

「このイクラ、いくらですか?」

店員がイクラを見る。

山田は覚悟を決めた。

買ってやる。

たみこさんのために
いくらだろうと、そのイクラを買う。
家賃を滞納してでも
買ってやる。

来い…

身を硬くして返事を待つ山田に

店員はこう言った。

「こちらのイクラは980円です。
でももうすぐ18時なので
あと5分待ってもらえれば
半額になりますよ!」

なんということだ。
山田は天にも登る気持ちだった。

買える!
1000円以下なら買える!

いけてるスーパーだ!

心の氷が溶けるように
肩の力が抜けた。

たみこさんが
「まあ、じゃあ待ちましょうか」
と嬉しそうに言う。

山田は、ここで
少しの見栄をはりたくなった。
イメージは
クリントイーストウッドだ。

たみこさんの肩をだきながら
できるだけサラリとを心がけて
こう言った。


「5分も待つくらいなら
イクラは定価でいだだくとしよう,
君と過ごす時間を
少しだって無駄にはしたくないからね」

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