「死神」という落語があります。
大学最後の発表会で演じました。
高校~大学の7年間、落語研究会に所属していました。
自分なりの集大成のつもりで、ちょっと冒険しました。
その頃私は少し尖っていたというか、ただお客さんを笑わせるだけでは自分が面白くなかったんです。古典落語はよく出来ていて、普通に演じればみんな笑ってくれます。まず、それがつまらない。だから自分なりの演出・演技でオリジナリティを出して爆笑を狙う!というのがよくある方向ですが、それもちょっと嫌でした。所詮、落語好きとか”ツウ”とかに迎合するだけのようで。世の中落語なんかに興味ない人の方が圧倒的に多いのに、そんな小さな”村社会”でウケたところで何になるんだ?という気持ちだったような記憶があります。
落語って多くは楽しく笑えるものなんですが、この噺(はなし)は少々シリアスな人の欲望や死生観を描いた物語です。
オチ(サゲ)は、今にも燃え尽きそうなろうそくの炎が己の寿命だと死神から告げられた主人公が、新しいろうそくに炎を継ごうとして・・・失敗して命が絶える、というようなのが一般的。
そこをバッサリ変えちゃいました。
金に困った男が「カミさんだけは幸せに生きていけますように」とつぶやきながら首を吊ろうとすると、死神に「まだ寿命じゃない」と止められ。死神のおかげで名医として大金を手にする。妻を幸せにしたくて金を稼いでいたはずが、金と夜遊びばかりに夢中になり、妻をないがしろにしていた。
死神を裏切って、妻と二人だけで逃げようと決意したとき、妻は金を持って他の男と駆け落ちしようとしていた。男は妻に刺され、駆け落ちする二人を見送りながら命絶える。そんな男に死神は笑いながら話しかける。「良かったじゃねーか。お前の願い通りになって。お前が死んでもカミさんは幸せに暮らすさ、アハハハ」
大学生の落語発表会に来たお客さんに対して、失礼ながら挑戦状を叩きつけるような重い空気の45分間でした。落語一席なんて普通は10~20分程度です。何の舞台装置も音響効果も無しに45分間の一人喋りを聞かされる立場になると・・・当時の新宿安田生命ホール400人のお客様には長時間のお付き合いを頂き、ご迷惑をおかけしました。
終演後、OBの先輩方からは「なにやってんだ?落語というより演劇だな」と厳しめの評価も頂きました。確かに落語というよりも一人芝居に近かったかも知れません。一浪で入学して4年生だったから23歳でしたね。
突然に思い出話をブログに書く理由は、1月7日石田亜佑美さんが23歳のバースデーイベントで45分間に及ぶ一人芝居を披露したからです。演出家(脚本家)西永貴文氏の助力で出来上がった物語は死神をモチーフに人の夢=生きる目標がテーマでした。
バースデーイベントというのも、ファンを集めてひたすら楽しく過ごす!のが通例です。
今回、石田亜佑美さんはそれだけでは満足(納得)できなじかった。去年モーニング娘。で舞台ができなかった事、ハロプロ現場が「ジャンプ禁止」になった事も影響したのでしょう。それにしてもなかなか思い切ったチャレンジだったと思います。
予想しない展開で微妙な空気になる会場は容易に想像できたはずです。その空気を覚悟して、客の気持ちを引っ張る決意。どこから来たのでしょう?
8年以上ハロコン・単独ツアーのルーティンを過ごして来た彼女は、いったいどうして平凡な同世代の女の子の気持ちを想像するのでしょう。恋愛を想像するのでしょう。そこに切り込んで行こうとするのでしょう。
同世代のファンならば、こんな面倒な思考なしに、素直に単純にあゆみんの気持ちを受け取れるのでしょう。
青春があまりにも遠い記憶になった私は、必死に当時の気持ちを想い返してみたりしています。