…今日は多摩川の花火大会。





あの頃、私はマンガのNANAのハチ子にそっくりだね、と言われていました。


似ているなと感じるところもあったので、嬉しく受け止めていました。




けれど、ハチ子という人生ではなく、私は私の人生を歩き、


佑介との幸せな人生を、思い描いていました。




…たとえば、多摩川の河川敷。



ハチ子は、大好きな人のために身を引き、


将来、娘の手をとり、2人で河川敷を歩く。





けれど、私はいつか、子供の手を引きながら、佑介と3人で歩く。


そう信じて疑わなかった、あの頃…






…そして今、私は1人、河川敷を歩く。 夢を見ながら。


今はもう、佑介も、かをるも、いない。






運命だったのかな? それとも、運命のいたずらだったのかな?


…いや、私が、佑介が、すべて選んで歩いている人生。






…あの時、一緒に花火をみて、一瞬の輝きに想いと未来を重ねたように。


今も私は、一瞬の煌きに想いを託しています。






かをる。


今、幸せな夢の中にいますか?


一瞬のきらめく光の中に込めたママの想い、…届きましたか?





佑介。


私の想い、身勝手だけれど… 


時間を越えて、未来のあなたに、どうか届きますように…




…付き合い始めて、初めてのクリスマス。



どうしてだろう、想い出せない。


また病気が進んでしまったようです。




…想い出せないから、次の想い出を書き綴ろう。





…翌年、1月。


あなたは20歳の成人式をむかえたね。


そして、幸せなことに、1日を2人でお祝いできました。





…特別な日に、初めてみるスーツ姿のあなたに、さらにときめいて。


あの頃のあなたは、少し赤髪だったね。


成人したあなたと、たしか初めてお酒を交わしたのがその日だったよね。


…幸せでした。





その後、あなたからもらった、成人式の写真。


記念日の写真。


写真嫌いのあなたが、特別な笑顔で写っている。


誰にも見せたくない、私の宝物です。





…あれから、2人の写真をよく撮ったよね。


あなたは照れていたけれど、その写真は今もアルバムにしたためてあります。





…今も、眠れない夜は、特別な夜は、写真のあなたに、幸せをもらっています。





…たくさんの想い出がつまった写真。


もっと、2人でたくさん、幸せだった一瞬一瞬を、


形にしておきたかったな。





私の病気はどこまで進むのだろう…


記憶はなくなり続けても、ココロは、あなたへの愛を覚えています。





…ねぇ、佑介。


私との想い出は、本当に燃やしてしまったの?


でも、私は、絶対に忘れないから。


つらく、哀しく、でも幸せに満ち溢れていた、あの6年の日々を…





いつかあなたと、笑って想いで話、できる日がくるといいな…





そして、もう一つ。


…かをる。  あなたの写真も、大切にしまってあります。


大好きよ、かをる。 佑介と同じくらい、今も愛しています。





…蝉の声。 じりじりと照りつける太陽。


人がせわしなく行き交う東京で、私は今、生きている。





見上げれば、無機質に広がる空。


ビル街の隙間からのぞく、小さな空。


生温い風が体を通り抜けていく。


それでも、私には心地いい。





…ここは、誰も私を知らない。


私はふつうのOLとして、ふつうに笑って、働いている。






…噎せ返るような病室と薬の匂い、くすんだ色のベッド。


対照的に、生い茂る樹々の匂いと、蝉の声。


私は、夏が嫌いだ。





見上げるだけしかできなかった、あの夏から、


一体どれほどの時が経ったのだろう…。


私にとっては、つい先日のような、けれども夢の中の出来事のような。



…分からなくなる。





止まらない、消えていく記憶。


あなたと共に見上げて笑い合った空。


…だんだんと、あなたの声も、分からなくなっていく。





夏が来るたびに、あなたが少しずつ、私の中から


消えていくの…





この空は、広がり続けているようで、苦しくなる。


自分が小さな存在だと、息が苦しくなる。


目眩がする。




…まぶしいだけじゃない。


あのとき、あなたが涙をためて、見つめていた空。






ねぇ、佑介。


私は今、一生懸命、生きているよ。




…でも、かをるは許してくれるかな。






空を見上げては、願いを祈り続けます。


どうか、2人が幸せであるように、…