ドナルド・トランプ氏が共和党の大統領候補になったとき、同じ共和党の政治家たちは一斉に
『協力できない』
といって逃げを打ってきましたね。
というのも、トランプ氏は『ポリティカル・コレクトネス』に反する言動を行ってきたからです。
この『ポリティカル・コレクトネス』というのは何なのかといいますと、ウィキペディアには、
『政治的・社会的に公正・公平・中立的で、なおかつ差別・偏見が含まれていない言葉や用語のこと・・・・・・』
とされていますが、実際には、リベラルによる『言葉狩り』の要素があるのです。特に『社会的弱者』とリベラル派に”見做された”人たちやマイノリティの人たちに対して。
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どういうことかと言うと、アメリカという国は、ヨーロッパと比べると、一代で知的エリートにのし上がる可能性が非常に大きく開かれた国だ。ところが、一代で知的エリートにのし上がる人たちにとって非常に大きな落とし穴になっているのが、明らかな格差社会であるにもかかわらず、表面的にそうではないフリをする必要があり、そのために、『政治的に正しいおとぎ話』の語り方を学ばなければいけないということだ。
(増田悦佐著『格差社会論はウソである』PHP研究所P246より)
例えば、アメリカの黒人たち(今では『アフリカ系アメリカ人』と言わなければならないそうだが)を批判するときは『黒人』のコの字を出してはいけない。もし出せばリベラルな連中から
『今の言葉は黒人(アフリカ系アメリカ人)たちに対する差別だ』
と糾弾されて、悪くすれば社会的に抹殺されてしまう。だから遠まわしな表現、またはオブラートに包んだ表現で黒人たちを批判しなければならないのです。
女性たちについても同様。女性を批判するときは女性のジョの字も使ってはならないのです。
こうして、リベラルたちが策定した『ポリティカル・コレクトネス』という『政治的に正しいおとぎ話』によって、こういった言論が制限された空間によって白人男性たちは段々とフラストレーションがたまって行くのが当然。子供たちに対しては何を言ってもいい、ということになっていても幼児虐待を行うわけにはいきませんよね。そんなことをすればたちまち警察に捕まってしまいますから・・・・・・。
となると、大抵のアメリカ人は宗教(あるいは特定の結社)にハマるか、アルコールや薬物に逃げてハイになるくらいしか思いつきません。アメリカ全土における異様な宗教熱、またはアルコール中毒や麻薬や覚せい剤が横行しているのは、こうした『ポリティカル・コレクトネス』が大きな役割を果たしているのかもしれません。
そこに、トランプが出てきた。このトランプという男は、
『ポリティカル・コレクトネスなんか糞食らえだ!!』
とばかりに『本音』の演説をバンバン行いました(本当は『ポリティカル・コレクトネス』に反するかもしれないが・・・・・・と前置きして発言していたそうですが)。
今まで言いたいこともいえずに鬱積し、特定の結社やアルコールや薬物に逃げることしか鬱憤を晴らす方法がなかったアメリカ市民―特に男性―は、
『この候補こそ私を救ってくれる人だ』
とばかりにトランプに一票を投じたのです。特に中西部の人たちは。
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この本によると、中西部に住んでいる『草の根保守』の人たちは、ブッシュ・ジュニアでさえも政策面において、
『リベラル過ぎる』
と一刀両断されています。政策面も去ることながら、発言においても、あの当時、言いたい放題やっていたようなイメージのあるブッシュ・ジュニア大統領でさえも
『ポリティカル・コレクトネス』
に縛られていたのかもしれませんね。