修了考査のツラいところを①〜⑨まであげてみました
①手書きの答案作成
修了考査は問題・解答用紙ともに紙で、ボールペンで答案作成して提出します。
修正するときは修正テープを使用。
修了考査は5科目あり、2日間にわたって朝から晩まで実施されます。
問題量も多ければ、解答量も多い。
論文式試験の頃に患った腱鞘炎が再発しそうなくらい書いて書いて書きまくります
修了考査の鉄則として
「空欄は作るな」
があります。
筆量が多くなります。
ただ、今の時代、監査法人だけでなく、事業会社でも税理士法人でも文章はパソコンで作成しますので、手書きは時代錯誤だと思います。
答練で解答を間違えて修正テープを使っているときなんかは、
「令和の時代に俺は何をやってんだ。」
「昭和かッ‼︎」
って思っていました。
ちなみに、2026年より司法試験ではパソコンを使ったCBT試験を導入するそうですので、公認会計士試験と修了考査もそうした方が良いと思います
②範囲が無限大
修了考査は下記5科目です
会計、監査、税務、経営、倫理
科目も多ければ、その中の範囲も広いです。
会計は基準、適用指針、実務対応報告、金商法開示、IFRSなどから幅広くボリューミーな出題となっています。
監査は論文式試験の監査論を実務色強めした感じです。
税務はスゴいですよ〜。
法人税、所得税、消費税、地方税、事業税、相続税、国際税務、組織再編税制、グループ法人税制と広範囲から出題されます。
税務は監査法人で監査をする上で必ずしも最重要な項目ではないのですが、無試験で税理士登録できることの兼ね合いから広範囲から深く問われます。
要するに、
税理士会へのアピールですね。
「俺たちはこんなにも多くの税法を深く学んでますよ。だから、無試験で税理士登録しても良いですよね。」
っていう感じですよ。
ところで、現役の税理士の先生たちに直近の修了考査の税務実務を受験させて、得点が合格点の6割を超えられる方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか。
ぶっちゃけ、おじいちゃん税理士には難しいと思います。
税理士や税理士受験生の方には、「修了考査 過去問」でググっていただくと公認会計士協会が過去問を公開してますので、ぜひ一度、修了考査の税務のレベル感を体感していただければと思います。
経営は財務分析とITです。最近だとAIも聞かれたことがあります。
倫理は倫理規則なので、ボリュームこそ少ないですが、問題数が少ないので足切り(40点未満)が怖いです。
③母集団のレベルの高さ
僕が合格した今回の令和4年度の対受験者数合格率は69.6%でした。
この数字だけを見ると、
「なんだ、日商簿記検定3級よりも合格率高いじゃん」
こうお思いになるかもしれませんね。
ここで合格率の算式を考えてみます。
合格率=合格者数÷受験者数
ですね。
注目すべきはこのうちの分母の「受験者数」の性質です。
いわゆる母集団の属性ですね。
日商簿記検定3級の母集団は会計の初心者。
悪い言い方をすると素人ですよ。
一方、修了考査の母集団は全員公認会計士試験合格者です。
3年間、実務補習所に通って所定の単位を取得し、かつ、監査法人で上場会社の監査の第一線に立っている人たち。
つまりはプロ。
母集団の性質が異質なのです。
プロですから。
修了考査はプロ同士の戦いなので、高い合格率からナメてかかると落ちます。
④働きながらの受験勉強
上記③でも書きましたが、修了考査の母集団は全員公認会計士試験合格者であり、そのほとんどが監査法人勤務です。
したがって、みんな働きながら受験勉強をしなければなりません。
これがツラいです
平日は出勤前の時間と夜にそれぞれ1時間から2時間勉強し、1日トータルで2時間から4時間は勉強していました。
休日は4〜5時間くらいは勉強に充てていました。
遊びたい
休みたい
寝てたい
そういった欲求を抑えて勉強しないといけません。
つくづく受験勉強ってツラいですね。
もう二度とやりたくないです。
⑤試験時間が長い
修了考査は2日間にわたって実施されます。
1日目は会計3h、監査3h
2日目は税務3h、経営2h、倫理1h
合計12hにもおよぶ長時間の試験です
2日目の終わり頃にはヘロヘロですよ
体と脳みそのスタミナが必要になってきます。
⑥「公認会計士試験合格者」は何者でもない
公認会計士試験に合格しても直ちに「公認会計士」と名乗ることはできません。
3年間、実務補習所に通い、講義・テスト・レポートを通して所定の単位を取得しなければなりません。
所定の単位を取得できたら、実務補習所の卒業試験たる「修了考査」の受験資格を得られます。
この「修了考査」に合格しない限り、一生公認会計士を名乗れません。
ずーっと「公認会計士試験合格者」という肩書きです。
僕の直接知っている人でも2008年合格で、今だに修了考査に合格できていない人がいます。
それでも公認会計士試験に合格しているから、素人ではないんですよね。
だけど公認会計士ではない。
じゃ、君は何者なんだい?
何が出来るんだい?
公認会計士と何が違うの?
公認会計士のことをよく知らない周りの人たちはそう思いますよ。
クライアントをはじめ、対外的にこれほど分かりにくい肩書きってないですよ。
旧公認会計士試験制度の時には、「会計士補(かいけいしほ)」という肩書きがありました。
そっちの方が分かりやすいですよ。
警部補や准看護師みたいに、正規資格の一歩手前ということが肩書きから分かります。
『言い方が9割』という書籍があるように肩書きも表現の仕方がとても大事です。
「会計士補」ないしは「准会計士」
法律改正してこのような対外的にわかりやすい肩書きにしませんか?
⑦監査法人に居づらくなる
修了考査に合格できない=仕事ができない
監査法人内では、基本的にはこのように捉えられます。
専門家は能動的に専門分野の知識を深め続けなければいけません。
単に公認会計士協会や監査法人内で行われる研修を受動的に受けるだけでは不十分。
監査六法や専門図書、各種セミナーを通じて自分から能動的に知識をアップデートする姿勢が問われます。
この自らつかみに行く能動性こそ職業的専門家としての資質です。
話は変わりますが、これってプロ野球でも当てはまると思うのです
甲子園で活躍してドラフト1位でプロ野球の世界に入っても、そこの地位にかまけてその後の努力を怠れば、厳しい競争に勝てずに戦力外通告されてしまいます。
大谷翔平さんのように、才能にあぐらをかくことなく、勝つためにひたすら能動的に努力し続けることがプロの世界では求められます。
公認会計士の世界も同じです。
公認会計士試験の合格なんてスタートに過ぎず、そこから実務経験と知識のインプットとアウトプットを能動的に毎日繰り返していかなければ戦力外通告ですよ。
キツいことを言いますが、
修了考査に合格できない人
=能動的に知識をアップデートする姿勢のない人
=やる気のない人
=仕事ができない人
プロの世界ではこのように捉えられます。
上司先輩から後輩までです。
表現がキツくなりますが、頭に馬鹿ハチマキ巻いて監査法人内を歩いてるようなものです。
修了考査に合格できないと、どんな発言や考え方にも説得力がないです。
何を言おうが、
「でも、結局は修了考査受かってないんでしょう?」
に帰結してしまいます。
なので、修了考査は絶対に合格しないといけません。
2度不合格を経験している僕だからこそ、ズバリとキツいことを言わせてもらいますよ。
がんばれ!修了考査受験生!!
⑧時間とお金を取られる
修了考査に合格すると、シニアに昇格して年収も100万円ほど上がったりします。
不合格が何年も続くと、これを得る機会を失い続けます。
機会損失は半端ないです
また、専門学校の修了考査対策講座も20万円近くします。
痛い出費です
さらに、IT・AI分野やUSCPAなどの他の資格、大学院進学など自己学習によるリスキリングの時間が奪われます
次のステップに進めないんですよね。
また、どんなに楽しい旅行やレジャーに行っても、頭の片隅には常に修了考査があります。
ハエのように鬱陶しくどこまでも付きまとってくるのが修了考査です
追い払うには合格するしかないです。
⑨キャリアの選択肢が狭いまま
公認会計士に登録すれば、
・事業会社の経理・財務
・取締役や監査役
・税理士登録して独立開業
・監査法人設立
・大学や専門学校の講師
・起業
・登録政治資金監査人
・政策担当秘書
・行政書士
などなど
一気に世界が開けます
修了考査に受からないと、基本的に身動きが取りづらいです。
修了考査に勝利した先には楽しい世界が待ってます
だから、死に物狂いでこれを手に入れましょう