土木工事の「埋立て」と「盛土」
黒木睦子さんが抗議し裁判となっている、宮崎県日向市で施工された(今も施工されている?)フェロニッケルスラグによる造成工事ですが、まずは土木工事に伴う用語で「埋立て」と「盛土」という言葉が出て来ます。「埋立て」は地面より下を埋めることで、「盛土」は地面より上に盛り上げる事だと言う事を念頭に考える必要がある訳で、私はここをハッキリと区別しないばかりに、色々と資料を見落としていた様です。
そこで
フェロニッケルスラグは土木材料としても利用されていると聞くと、一見今回の日向市での造成工事は問題ないのか?と考える人もいると思いますが、フェロニッケルスラグの様々な資料を見ると、土木材料としての用途は「埋立て」が多く、「盛土」と呼べるのは「路盤材」「路床材」。
つまり、今回の様におよそ20mにも及ぶ盛土と言う訳ではなく、地面より上に盛り上げると言っても僅かな高さの資料しか出て来ません。
これ、フェロニッケルスラグは強度が検証されていないからと考える事も出来ますね。
使用例に出てくるケーソンの中詰め材はコンクリートで出来ているケーソンの中に詰める訳ですし、埋立てにしても地面の上に盛り上げる訳ではなく
地面より下を埋めていく訳ですから、フェロニッケルスラグ+他の地盤、もしくは構造物の強度がプラスされる訳です。
では、フェロニッケルスラグ自体はどの位の高さまで盛土として盛り上げる事が出来るのでしょうか?
水砕スラグの盛土技術資料を見る
フェロニッケルスラグの盛土としての技術資料が見当たらないのは、調べている方なら既にご存知の事と思いますが、高炉水砕スラグの技術資料は存在します。そもそも新しい材料なのに資料が見当たらないと言う事は
まだ検証されていないと言う事にもなりますが
再生砂を盛土材として使うんだという観点から考えると、比較する材料にはなるので
高炉水砕スラグの技術資料を見ると、天然砂と水砕スラグによる盛土の比較がされていて、それによると
地盤条件と想定している地盤粘着力の最大値、つまり想定されている条件の最大盛土高、技術的に言うと限界盛土高は10mです。
さらに、高炉水砕スラグは軽量のため天然砂より高く盛土ができ、沈下量も少ないと書かれていますが
限界盛土高の計算式は
●限界盛土高(m)=地盤の限界支持力÷盛土の単位体積重量
フェロニッケルスラグは砂より重いので、単位体積重量が天然砂より多く、分母が大きくなるので限界盛土高は低くなり、沈下量も多くなると予想できます。
➡http://www.slg.jp/pdf/fs-108.pdf
また、限界盛土高の計算式の分子となる地盤の限界支持力は、表5.4.2にある各地盤条件の係数に地盤の粘着力をかけた値になるので、限界盛土高を上げるには地盤の粘着力が高い地盤が要求される訳ですが
前出のグラフの最高値となる限界盛土高10mの場合の地盤粘着力は20(kN/m2)ですので、日向市で行われた20mの盛土となると、単純計算でも40(kN/m2)の地盤粘着力がある地盤でなければならない事になります。
この地盤粘着力20(kN/m2)と言う値、土木、地盤等の設計する上で良く使われている数値の様なのですが、20mの盛土を施工するにはこの一般的な20(kN/m2)と言う数値の2倍の地盤粘着力がある地盤でなければならない事になりますけど
今回の日向市西川内地区での盛土による造成工事の現場は、山の谷間ですね・・・
まぁフェロニッケルスラグのみではなく、その上に礫質土を3mの厚さで覆っていると言う言い分はありますが、その中に埋められているフェロニッケルスラグのみでは20mの盛土は出来ないと言う事です。
専門的意見を求めてみた
と言う事で、地盤工学的にはどうなのだろうかと公益社団法人地盤工学会にこの様な工事が行われているが、地盤工学的にはどうなのですか?と見解を求めてみたところ丁寧なご対応をしていただき
➡ご相談の件に関しましては、現状では地盤工学会としての統一の見解は持っておりません。このような材料については,材料ごとに,かつ現場の条件ごとに、各現場で個々にご検討いただいているのが現状とのことです。
➡学会としての見解が必要な場合には正式に、検討委員会設置をご提案していただくとか、委託研究を申請していただく制度がございますので、それらを利用していただくことも可能です。その場合にはご相談下さい。
と言う事でしたが、教えていただいた参考論文には水砕スラグが天然砂の代替材として利用可能であると言う主旨の内容でフェロニッケル水砕スラグも比較検証されており、地盤工学会はしっかりとフェロニッケルスラグにも着目していると言う事もわかり
2010年に地盤工学会の
「高炉水砕スラグの地盤工学的利用推進に関する研究委員会」が
研究報告書を出しているとの事ですが販売はされていない為、地盤工学会の図書室に行けば閲覧出来るそうです。
地盤工学的には、少し深堀り出来そうですが
では、土木工学的にはどうなのでしょう?
と言う事で、公益社団法人土木学会の土木技術者が集う情報交流サイトに、日向市西川内地区での盛土造成工事の工法は一般的なのですか?と質問を投稿してみたところ
”一般的?なことはありえません”
という回答を今のところいただいています。
こちらはさらに回答がついてくれるのを待って見ます。
フェロニッケルスラグと消石灰
以前、グリーンサンドを土壌改良材として使ったのか?と言う事で、造成工事に使われたとされる消石灰は地盤改良材として使用する最良の配合比率は、FNS40%、石灰60%で、これだと産廃処理した方が費用が安いので疑問だと言う事を書きましたが今回新しい発見がありました。
それは
”フェロニッケルスラグに消石灰を添加すると水硬性を発揮するが15%以上添加すると水硬性は低下する”
という事です。
宮崎県の場合、鉱さいを産廃処理すると1tで¥21,000で
石灰は1tで¥20,500でしたから、石灰の添加量を仮に重量比10%とすると、石灰の費用はわずか¥2,050で済みます。
さすがに(株)日向製錬所も強度を考え、ただやみくもに埋めているだけではないハズですが、グリーンサンドを1t産廃処理すると¥21,000ですが、石灰を添加し盛土材として使えば¥2,050ですから、こちらの方が納得出来ます。
さらに
”15%以上添加すると石灰が水和反応に寄与せずそのままの形で残る現象と同じであると思われる”
と書かれているので、日向市西川内の現場で石灰を添加し水を撒いて水硬性を利用しようとしたが、添加量が多すぎて石灰がそのまま川に流出してしまった為に川が白濁した。
という想像も出来てしまいます。
黒木さんのブログの造成現場のダンプの後ろに、白い車両が写っていますが
これ散水車の様です。(グーグルマップのストリートビューで確認出来ます)

日向市の現場でグリーンサンドを高所からダンプで降ろし、粉塵が舞い上がっている時ではなく
下でバックホーが作業している時に登場しているこの白い車両、しばらく疑問でしたが、粉塵の為の散水車と言うより、石灰を添加し水硬性を高める為の散水車と考えれば納得できます。
⇒フェロニッケルスラグのセメント代替としての使用
因みにこの論文は平成6年のものですが、まえがきに
➡フェロニッケルスラグの微粒分は有効利用されないまま埋立処分されている。
とハッキリ書かれていますね。
(株)日向製錬所の裏山にグリーンサンド置き場(施設名P-7)がありますが
製品としてのグリーンサンドはJIS規格を取っている粒径毎等に分別して保管しているのではないかとも思うので、屋外のP-7施設に置かれているグリーンサンドはどういった性質の物なのかも気になるところです。








