羽生苦悩の140日 銀でも「自分褒めたい」
[2015年3月29日10時13分 紙面から]
ソチ五輪金メダルの羽生結弦(20=ANA)が日本人初の2連覇をあとわずかで逃した。ショートプログラム(SP)1位から、フリーは175・88点。4回転ジャンプのミスから巻き返したが、合計271・08点で2位に終わった。度重なるアクシデントに見舞われた今季。万全でない状態で戦い続けた経験を今後の糧にする。優勝はハビエル・フェルナンデス(23=スペイン)。
羽生が語気を強めて、繰り返した。「最後までこのリンクで、特にこのリンクで最後まで滑りきることができたのは、まず本当に良かったな」。昨年11月8日の中国杯で中国選手と激突し、流血までした会場。そこで力を出し切り、頂点にあと1歩に迫った。「負けて悔しい。いろいろなことを言うと、自分の気持ちを伝えきれないので、その一言です」。複雑な心には安堵(あんど)もあるだろう。
苦境からの挽回。まさに今季を体現するような演技展開だった。冒頭の2つの4回転ジャンプが失敗続き。サルコーは2回転になり、トーループは尻もちをついた。体力を奪う転倒。ただ、そこからが不屈だった。失敗から立て直し、「脚がフワフワしちゃった」と感じながらも以降のジャンプ、スピンを決め続けた。終盤までスピードも落ちない。会場総立ちでフィニッシュを迎え汗まみれの顔で肩をすくめてはにかんだ。
昨年末、悩まされた腹痛が「尿膜管遺残症」と診断され、緊急手術を受けた。怖かったのはへそがなくなること。横一文字に開腹するかと思い、不安でたまらなかった。「おへそを作って下さい」と懇願した。執刀医の腕前で半円形にメスを4センチほど入れて事なきを得たが、尿膜管を摘出した後は痛みでうめいた。
術後、都内の病院に入院。寝返りさえ打てない状況に「つらい」とこぼした。除夜の鐘が鳴る時も、1月12日の成人式の日もベッドの上。記念写真の1つも撮れなかった。手術痕には縫合した糸が残る。
1月には右足首を捻挫。歩けないほどの重傷で、いまでもテーピングが必須。影響で、大会前の練習は1日1~2時間、週3日ほど。ジャンプの鍵を握る下腹部に力が入らず、本来の高さや回転速度に足りないのも無理なかった。それでも、最後まで踏ん張った。
激突の後遺症の不安も尽きない。腹部の異常は、激突から約1カ月後。医者は関連性はないとしたが、関係者は「また何か出るか不安」と話す。頭部も含め、今後は定期的なMRI検査を受けるという。万全には程遠く戦い抜いたことを今、誇りに思う。
羽生 今シーズンは山あり谷あり。良かったり悪かったりの繰り返しだったけど、スケート人生だけじゃなくて、僕の人生の中で生きてくる。よくここまで奮い立たせて頑張ってこれた。自分を褒めてあげたい。
五輪王者が翌シーズンを戦うことすら、近年まれだった。引退か休養が通例。五輪→翌年の世界選手権と優勝すれば42年ぶりの快挙だった。負けた相手は練習仲間のフェルナンデス。負けず嫌いの心にも火が付く。苦難の道の先に栄光があると信じ、歩む。【阿部健吾】
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驚くべき「羽生回路」マイナス要素を前向きに
フィギュアスケートの世界選手権は28日に中国・上海で最終日が行われ、ソチ五輪金メダリストの羽生結弦(20=ANA)は首位のハビエル・フェルナンデス(スペイン)にわずか2・82差の2位となり、日本人初の2連覇を惜しくも逃した。
同じブライアン・オーサー・コーチに師事する同門のフェルナンデスに逆転負けを許し、「自分はそんなに心が広くないので、悔しい。次は絶対に勝ってやろうと思う。反面、仲間が勝つのはうれしいです」と複雑な心境をのぞかせたが、興味深かったのはその後の問答だった。
今季は昨年11月の中国杯での激突流血事故に始まり、腹部の手術、古傷の右足首痛とアクシデントが続いた。しかし、予定された1つの試合も欠場することなく、万全には遠い状態で戦い続けてきた。ここに単純に疑問がある。「なぜ休まないのか。なぜそうまでして試合に出るのか」。シーズンの締めくくりに、あらためて聞いてみると、本人は一瞬きょとんとした。そして言った。
「それは自分が現役スケーターだからです。それ以外に何もない。別になんていうか、そこに何も不思議な感覚はなくて、日本代表として選ばれたわけですし、そこで滑って戦わないといけない義務感もあった。ケガをしたのは、ここでのアクシデント(世界選手権の会場は中国杯と同じ)も自分の不注意、管理不足。そこはしっかり反省すべき点だと思いますし、不運と言われるところもあるけど、自分の中では自己管理の不足している部分が、きっと今季足りないよといわれたんじゃないかなと思う」。
この思考回路に驚かされる。五輪の金メダリストなら誰しもが備えているというわけではなく、いわば「羽生回路」とでも言うべき考え方ではないだろうか。アクシデントに対して、自己責任だけを追求することは難しい。どうしても他者、環境への被害者意識が生まれてこないのだろうか。
そのマイナス要素を、自己反省の種として、次につながる「金の卵」的に考える。だからどれだけ故障を抱えて出場が危うくなろうが、あきらめることなく過酷な練習を続け、最後は頂点にあと1歩まで迫った。
スケーターとして理想の体形、表現力、そしてジャンプの質。備わる武器は多々あるが、羽生を五輪王者に引き上げたのは間違いなく、このような思考回路に支えられた精神構造にあるし、再び世界王者に返り咲くためにも欠かせないものだろう。
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お写真、メディアよりお借りします





)爆笑していたけど


