ある日の、ある夜の食卓。

 左手に巨大な本を持ち、

 ある方角を向いて

 家の角に立っている人の話のこと。


祖母:「その本は、何が書いてあるの?」

 ◇:「なんにも書かれていない。白紙なの。

    白紙・・・みたい」



祖母:「その本は、閉じているときもあるの?」

◇:「ううん、開きっぱなし。

    この人、夜じゃなくてもいるよ。」
 

叔母:「朝からいるの?」

◇:「“~から”というか、ずっといる。

    どこかからか来ているわけじゃないから。」

 

           ◇