違っているから面白い

テーマ:
ゲーテの『ファウスト』とグノーの《ファウスト》は別物です。

原作を読んでオペラを解った気になっていると大怪我します。

ドビュッシーの《ペレアスとメリザンド》も、メーテルランクの戯曲にそのまま音を付けたと言えますが、言い回しを少し変えたり、場面を丸ごとカットしたりしていますから、完全にそのままではないのです。

一方、オペラ研究家である私は、《ラ・トラヴィアータ》の原作芝居『椿姫』を初めて読んだとき、心の底から感動しました。オペラ化する工夫と、芝居ならではの思想が両方とも伝わってきたからです。

ところで、この前の授業でトマの《アムレット(ハムレット)》の設定が、シェイクスピアの原作戯曲と異なっている点に関して質問が幾つか出ました。

回答を書くために改めて楽譜を読み直して。ありがたいことに、学生たちからの素朴な疑問のお陰で、自分の認識を深めることもできるのです。

なお、プッチーニのオペラの原作芝居を参照するのも、実に意義深いことです。オペラ化するための工夫と苦労が如実に伝わってきます。《ラ・ボエーム》《トスカ》《蝶々夫人》《トゥーランドット》など。台本作家たちは作曲者と密に連絡を取りながら仕事を進めて行きましたが、その苦心の程も見て取れるのです。

違っているからこそ面白い。価値の高低は問わず、書き手それぞれの着眼点を拾い出すのです。