青ざめたオレの顔を見てサイくんは軽く眉を寄せ、気遣わしげな表情を浮かべた。
「まだ顔色悪いな・・・・あんまムリすんなよ。おいセバス、何かあったらアイちゃんに連絡すんだぞ」
「わかってる。直通番号聞いたし」
「・・・・おま、アイちゃんだけはやんねーぞッ」
「息子の体調にかこつけて人の奥さん盗んねーよッ。りっくんの前で変なこと言うなッ」
またもやオレを忘れかけた2人は、名前が出たことではたと気づいたようにこちらを見、サイくんが取り繕うように笑顔を取り戻す。
「ホラ、破霊留矢。あとコレ合格通知な。大切にすんだぞ、売るなよ」
言葉のわりに軽い口調でひょいとそれをオレに渡し、サイくんは帰っていった。
けどオレはありがとうを言うどころじゃなかった。
せっかく来たからカイの部屋でも寄ってみっかな、とか言う声が、耳を通り抜けていく。
手に残された矢をぎゅっと握り締めて、ベッドの横に戻ってきた父さんを振り仰いだ。
「破霊留矢貸しな。コレどこにしまうのおまえ」
小さな部屋にそのスペースを探してキョロキョロしている彼の腕を、後ろからぐいとつかんで振り向かせた。
ひるがえった黒い翼が風を生み、父さんは声に出さずに、どうした、と眉をあげた。
「父さん・・・・ほんとにオレの魔力、美咲に残ってる?」
「残ってるよ、心配すんなって」
くっきりと迷いのない即答は、真実を告げていると信じられるはずだった。
だけど、信じたくない。
「じゃあどうして!」
どうして美咲のバルーンが割れた?!
オレのありったけでも守れないくらい、そんなにつらいことが、美咲に起こったってことじゃないか!!
「美咲・・・・」
この名前を口にする時は、いつも幸せな気持ちでいたい。
そう思うオレを見事に裏切って、心は不安に波立っている。
いったい、何があった?
ふと、父さんの冷静な顔が揺れたような気がした。
どこか感じていた違和感が、一気に膨れ上がる。
だって、冷静すぎるんだ。
いつもの父さんならこんな風にオレが黙り込んだら、どうしたんだよって腰をかがめて聞いてくれるはずなのに。
今は何も言わないで、そのくせ目をそらすこともなく、ただオレを見つめている。
その視線は切れそうなほど張り詰めていて、けれど完璧なくらい何の感情も宿っていなかった。
オレはこの上なく悪魔らしいそれをじっと見返して、やがてその中へ踏み込んだ。
「美咲に・・・・何したの?」
↓セバスが聞いた番号はクリニックのです。魔界にケータイはナイ設定↓