魔技能検定ハレルヤ 自暴自棄・5/side-リク | キャラメルアメーバ

キャラメルアメーバ

小説ブログです。
なにもかもフィクションです。

久々の魔界は、雨が降っていた。


実家を離れて一人暮らしをしているとはいっても、カイと同じ魔ンションに住んでいるから、寂しいと思ったことはない。


家の方向が違うクウと別れたあたりから、雨足が強まってきた。


普段しゃべりっぱなしのカイは終始無言で、クウだけがいつものように魔界の噂話を続けていたから、2人になると一気に音がなくなった。


激しいわけではないけど、穏やかってわけでもない水音の中を隻翼でくぐり抜けて、ようやく自室の前にたどり着いた。


「今日は、自分の部屋で寝るよ。おやすみ」


カイがうなずいた拍子に、濡れて艶の増した黒髪からこぼれたしずくが廊下に染みを作った。


じゃあね、と部屋に入ろうとドアを開けた手を、上から押さえられた。


近づいた顔に目を上げると、真剣な眼差しとかち合った。


本当にこれでいいのかと、声もなく問いかけられる。


何について?


ハレルヤを棄権すること?美咲をあきらめること?


だってどっちも、もうオレの力の及ばないことだよ。


黙ったまましばらくオレを見つめていたカイだったけれど、やがてあきらめたように言葉を吐いた。


「朝迎えに来るわ」


「え?」


「翼の手術、まだ間に合うやろ。アイに話つけとく」


ああ、そうだね。


アイ、というのはカイのオフクロさんで、伏魔殿の御殿医をしている優秀なお医者さん。


美咲が僕の翼を抜いてから明日でちょうど10日だから、再生にはギリギリ間に合う計算だ。


「翼定着するまでしばらく動かれへんようなるから、用事があるんやったら済ませとけ」


「ん、わかった。・・・・ありがと、カイ」


彼を廊下に残したまま後ろ手に閉めたドアに背を預け、暗い部屋の中で濡れた自分を抱く。


結局、何も手に入れることができなかった。


夢も恋も・・・・結局、掴み取るだけの実力がオレにはなかったってこと。


「それどころか翼抜かれてるし・・・・むしろマイナスか」


ふふっと乾いた笑いが漏れ、湿った部屋に消えていく。


ああ、だけど。


美咲に、恋をするきっかけをあげられたかな。


心から想う人に想われて、きっと彼女は幸せになれる。


だったらもう、それだけで充分だ。


ハレルヤのことも、美咲のことも、それであきらめがつく。


←PREV                                    →NEXT


↓どんどんバッドEDフラグが勃つわ・・・・そういう恋もある!とか(汗)↓


 

      にほんブログ村 小説ブログ へ         
        いつも応援ありがとうございますヾ(@^▽^@)ノ