感情のままにリクを怒鳴りつけたことをカイに咎められた後、体調が悪いからと夕食もとらず、早々にベッドに潜り込んだ。
そうして部屋に1人でいると、しだいに心も落ち着いてくる。
とにかく、高原くんとは恋人関係になった。
これって・・・・別れたら失恋、ハレルヤ合格ってことになるのかしら。
リクの説明では、ガシャポンが勝手に判断して、失恋したらバルーンが割れるんだとかってことだったけど。
高原くんのことは好きになりかけてると思うけど、恋って呼べるシロモノなのかはイマイチ自信がない。
リクにタンカを切ったように、あたしは彼をほんとに好きになるつもりだった。
電話で話したり、デートしたりして少しずつ気持ちを育てていけばいいわ。
その後のことは、一応の覚悟はしておくけど、やっぱりその後で考えることにしよう。
別れることなんて考えてたら恋愛に身が入らないわよ。
冷静になってそう考えて、高原くんのことを思い出してみる。
歩行者にぶつかってよろけたあたしを支えてくれた腕の力強さとか、あたしに向ける明るい笑顔とか、キスの前に頬に触れた手のひらの温かさとか。
そこまで考えて、ふと唇に指が行く。
あれって、キスしたのかしなかったのか、微妙だわ。
高原くんの中ではキスしたことになってると思うけど、あたしとしてはリクのヘンテコなバリアのおかげで感触はなかったのよね。
リクとの時は、あったかくて柔ら・・・・ちが、違うわよ、あれもキスにカウントしないんだから。
どこで情報を得てきたのか、ファーストキスの何たるかをようやく知ったらしい彼の、不器用なくらい真摯な謝りようを思い出して、気づかないうちに顔がほころんでいた。
めちゃくちゃ綺麗で、イマイチ要領が悪くて、すごく優しく笑うリク。
それに似合うかどうかはまったく別にして、彼がそう望むのなら、一人前の悪魔に認定されるといいなと思う。
そのためにあたしが力になれるなら、・・・・なれるんなら、高原くんやあたしが傷ついてもいいと思う・・・・。
ん?リクってそんなに大切な存在だっけ?
これ・・・・もしかして、何かマズくない?
と、横向きに寝ていたあたしの左手首に、突然ゴリッと妙な圧力がかかった。
「わ」
「ぎゃッ」
およそ乙女らしくない声をあげるあたしの目の前に、何かがドシンと転がる。
「美、咲」
物思いにふけるのに夢中で、窓を開けてリクが入って来たことに気がつかなったらしい。
「痛ッ」
彼に踏まれたんだと気づいて、ようやく痛みを感じる。
「ごめん、どこ踏んだ?」
「手首・・・・折れたかも」
「うそ、大丈夫ッ?どどどどうしよう、すごく痛いのッ?」
あたしを踏みつけた拍子にバランスを崩して横倒しになった体を跳ねるように起こして、こっちを覗き込む。
「何で黙って入って来るのよ、ただいまぐらい言いなさいよ」
「た、ただいま・・・・」
「それどころじゃないでしょ、人のこと踏んどいてッ」
痛いっつーの。
「ごめ、ほんとに折れちゃったの?」
ウソに決まってるでしょ、踏まれたぐらいでポキポキ折れてたまるか。
なんて・・・・ちょうどリクのことを考えてたとこに本人が現れて、気恥ずかしくてつい意地悪を言った。
↓美咲って性格悪・・・。本人自覚してるけど直りません。直しません↓