ある日、ふと少年は自転車に乗り地獄を見に行こうと思った。
地獄とはどんなところだろうか。
地獄絵図は見たことはあるが、本当の地獄とはどのような景色なのだろうか。
お気に入りの自転車をこぎこぎ、1時間程すると地獄らしき景色にでくわした。
そこでは、薄汚い格好をした老人達が地べたに座りながら酒を飲んでいた。
殴られたのだろうか、一人の老人は目を腫らしていた。
街自体も薄汚い。
首輪の無い犬がそこら中で餌をあさっている。
鳩もいる。鳩の羽が宙を飛び交っている。
秩序が無い。
少年はとてもわくわくした。なぜならば、そこに少年が見たかった景色があったと思ったからだ。
老い、貧困、絶望。
これこそ、イメージの中の地獄だ。
そう思ったのもつかの間少年はあるものを目にした。
地べたにしゃがみこんだ老人達が楽しそうに話していたのだ。
少年は思った。
地獄にいる人間は笑わないはずだ。
じゃあ、ここはなんなんだろう。
地獄であって地獄でない場所。
現実世界なはずなのにリアルを感じる事ができない。
少年はその場所を後にした。
そして、ふと今度は天国が見たいと思い、帰り道とても華やかな街に行く事にした。
きれいなドレスを着た美しい女性達、高級車、ネオンの光。
少年はとてもわくわくした。なぜならば、これこそが世にいう天国に違いないと思ったから。
若さ、富、欲望。
これこそ、この世の中の天国。
そう思ったのもつかの間、身なりの良い紳士がとても暗い顔をして美しい娘達のいる店から出てきた。
少年は思った。
天国の人間は暗い顔などしないはずだ。
じゃあ、ここはなんなんだろう。
天国であって天国で無い場所。
現実世界なはずなのにリアルを感じる事ができない。
少年は家に帰る事にした。
天国と地獄のある街と少年の住む現実の街を結ぶ橋を渡り、
少年は川越しにキラキラと光輝くビルの群れを見た。
おもちゃの街、レゴの街。天国と地獄のある街。
いつまで光続けるのだろう。
”天国と地獄”を口ずさむ少年のこぐ自転車は夜道を駆けていく。