コロナで大会ごとチームが消滅し、自分の中では引退でいた。目標を失うとやる気もおきない、バッティングセンターに行かなくなり、車にバットと手袋すら乗せなくなった。
やり残したことは無い。
実力以上の場所で勲章をいくつも手に入れた。
二度とグラウンドに立たないつもりでいた。
そんな自分をまだ誘ってくれる、ありがたいことですな。
最終年打率四割、まだ幻想の中にいるのかもしれない。
現実を知りに行くことにした。
通算1000試合くらいやったかもしれない。
野球だけが自分の居場所だった。
野球という自分そのものと言えるカテゴリー、その死に場所がやっとみつかりそうだ。
前日120キロを打ち込みに行ったがやはり体が動かない。
当たり前だが体が衰えきっている。
正直120キロごときをいくら打ったからと言って意味などないが、何もしないで試合に挑むのはポリシーに反する。
感覚だけでも確認しておいた。
あいにくの雨。
キャッチボールすらまともに出来なくなっていた。
体が重いしキレも無い、足も遅くなっている。
まるっきりジジイだ。
さらに花粉症のピークで目が腫れ上がっているので視界も悪い。
こんなコンディションで参加したのは国体に二度出場している強豪チーム。
そして当然相手もどっかの代表クラスのめっちゃ強いチーム。
引導を渡されるにふさわしいシチュエーションだね。
こちらのチームは主力が引退してしまってかなり弱体化していた。
みんなそんな年だね。
それを考えたら俺は十分長くピークを維持したと言えるかもしれない。
相手ピッチャーは豪速球とスライダーのコンビネーション。
このクラスの球を打つには140キロのマシンを簡単に打てるまで打ち込みをしなくてはならない。
準備不足、2三振で終わった。
いくら速かろうがバットに当たらないとは。
そしてまったく何も出来ず試合は終わった。
「試合とは日頃の鍛練の試し合い」。
相手は日々鍛練をしている。
かなうわけがない。
試合が終わってそんなふうに思う自分がいた。
準備不足。
冬から練習していれば違ったかも。
おかしいな。
衰えた。体力の限界。
そう思うべきなのでは?
体は死んでるけどまだ闘争心は死んでいないのか。
やれば出来ると心の中にまだある。
このしぶとさで生き延びてきた。
やれるだけやって通じないとなるまで心は折れないらしい。
けど今の早朝出勤、残業100時間、休憩0時間。
長時間労働が当たり前のスーパーブラック企業ではプライベートがなさすぎてトレーニングなど無理。
平日の趣味の時間すらとれないのに全盛期の体力に戻すなんて不可能。
やっぱりあきらめよう。
コロナで強制的に引退より、何か区切りがあるほうがすっきりする。
今日は晴れの引退試合。
約30年、楽しかった。
ありがとう!