俺と白が望月を下し、風雅が佐助と激戦を繰り広げているころ、綾乃と瑪瑙は別件の任務を終えて伊賀への帰路についていた。


「あのね・・・・綾乃・・・・。」


 いきなり口を開いた瑪瑙の顔は真剣そのものであった。


「任務の前ね・・・・風雅さんにいいよられたの・・・・。」


「ぇ・・・?兄さんが・・・?でも瑪瑙は樹の事が・・・・・。」


 綾乃の言葉をさえぎるように瑪瑙は続ける。


「樹様は・・・・もういいの・・・。あの人の心には・・・・陽炎さんやおりんちゃんが映っているの・・・。私にはわかるの・・・鏡使いだしね・・・・。それでね・・・・風雅さんは・・・『お前の思いも知っている。強制はしない。まぁ・・・ただ俺の力に見合う女は妹意外だとお前だけだからな・・・。』なんていってるの・・・風雅さんらしいでしょ?」


「正直じゃないところが特にね・・・。本当は瑪瑙の事好きなのよ・・・!」


 瑪瑙は高潮する。笑みを含めたその横顔は綾乃が見とれるほど美しかった。


「早く風雅さんに返事しなくちゃね・・・。」


 そういって瑪瑙は歩みを速めるのであった。





 一方風雅は、犬千代の爪を自分の指に当て、必殺の一撃を放つ。


「風双裂爪!!」


 風雅の右腕に強力な風の爪を纏い、風雅は佐助に襲い掛かる。佐助は風刃に風を纏ってそれを受ける。


「俺の勝ちだ!」


 風雅がそういうと風刃の刀身にひびが入る、しかし佐助は笑みを浮かべる。


「お前にあって俺に無いもの、教えてやるよ、それは『誇り』だ。俺は勝利に手段を選ばない。」


 すると下方の森林地帯より『パン』と轟音が鳴り響く。風雅は体を仰け反らせて心臓は守ったものの、左胸に穴が開き、血が噴出す。


「てめーの実力は一流だ・・・。・・・・・残念だったな・・・。」


 そういうと佐助は風刃を振り下ろす。風雅の体より大量の血液が噴射し、力なく森林へと落下する。


「伊賀の風神、ここに墜つる・・・。」


 そうったのは森林の中で不気味に笑う筧 十蔵であった。

「感謝する・・・。」


 そういうと俺は陽炎の姿をした小助の左胸に氷雨を突き刺す。


「凍源郷・・・・。」


 俺が氷雨を抜き去った瞬間、小助は巨大な氷の柱に包まれた。そして次の瞬間それは砕け散り美しい結晶となって舞い散った。


「終わったぜ・・・白・・・。」


 そういって俺が振り返った瞬間、そこには誰も居なくなっていた。





「俺にあって・・・・お前に無いもの・・・・?」


 風雅は一瞬顔をしかめた瞬間佐助は大剣を振り下ろす。しかし風雅はそれを知ってたかのように剣に向かって手をかざす。


「風双・・・裂掌!」


 風雅は短く叫ぶと佐助は風双裂掌に力負けし、後方へ弾き飛ばされる。


「すげーすげー。んでも、剣は折れてないぜ!これは『風刃』っつう刀でな、甲賀の秘刀なんだぜ?」


「さっきからじょう舌だな・・・。慢心は身を崩すぞ・・・。」


「慢心じゃない・・・余裕だよ!次は風双裂掌を攻略してやるよ!」


 佐助は剣の切っ先を風雅に向けて突きの体勢に入る。そして佐助は風を全身に纏い、強力な突きを放つ。それに対して風雅は風双裂掌で返す。

 二人の技の威力は伯仲していて風双裂掌が途切れたと同時に佐助の右腕がはじかれる。


「これじゃよけらんねーよな?」


 佐助の左腕より空気の弾丸が放たれ、風雅の右足と腹部に風穴が開く。


「見せて・・・やるよ・・・。俺の『爪』をな・・。」






 その頃、白は背後より襲ってきた望月を軽く一蹴し、轟音の鳴る方向を眺めていた。


「あっちは・・・・風雅か・・・!」


 そういうの背後に迫ったのは死んだはずの望月であった。その凶刃が白に届こうとした瞬間、俺は氷雨で相手の刃を受け止める。


「油断しすぎや、白。『死なず』の六郎だぞ・・・相手は・・。」


 そういうと俺は水弾で望月の刀を弾き、彼の心臓に刃を突き刺す。


「無駄だ。さっき自分で言ったじゃねーか・・・『死なず』ってな・・・。」


「『死なず』の正体なんて『超再生』あたりだろ?」


 冷や汗をたらす望月に対して俺は冷酷に言い放つ。


「絶対零度においては・・・細胞も活動しねーだろ・・・。凍源郷。」


 俺がそう言い放つと、死なずの六郎に死が訪れた。


【3対2】

 風雅は加速をつけて佐助との距離をつめる。佐助も負けじと左手より空気の弾丸を放つ。風雅は最小の動きでそれを避ける。


「調子が良過ぎるな・・・。」


 先程は避けることが出来なかった空気の弾丸を一時の間を置いただけでそれを避けることを可能にしたのだ、佐助も思わず敵ながらに簡単の念を覚える。その一瞬の隙を突いて風雅は蹴りを放ち、佐助を蹴り上げる。


 すかさず追撃をするものの、相手は十勇士の長であるゆえにそう簡単には成させてはくれない。風雅は佐助の大剣による一閃をすんでのところでかわす。


「流石だ・・・。一瞬一瞬で成長するか・・・・。前言撤回だ、役不足なんて言わねー・・・。全力でお前を殺す・・・。お間じゃ俺に勝てない・・・。お前にあって俺に無い物が、それを捨てれぬお前の弱さが・・・この勝負の決め手になるだろうよ!」


 そういって笑みを漏らす佐助から放たれる殺気は禍々しく、風雅は生まれて初めて『恐怖』という感覚を植えつけられた。




 その頃、俺は白の怪我を治療し終えた所であった。


「あくまで応急処置だ・・・。無理すれば傷が開くぞ・・・。」


 そういい終えると茂みの向こうより花と京香がやって来る。


「樹・白!大丈夫・・・?こっちはどうにか海野六郎、望月六郎、穴山小助討ち取ったわよ!」


 花は俺と白の元に駆け寄る。そして白は上体を起こして笑顔を見せる。


「花・・・無事だったんだね・・・京香さんも・・・。それにしても怪我が少ないね・・・。」


 彼の言うとおり京香と花の着物は汚れたり破れたりしているが、彼女たちにはさほど大きな傷が無い。


「あの三人は戦闘要員じゃなかったの・・・・それだけよ・・・。」


 京香はそう零し、それに花が続く。


「それにしたってあんた達二人も無傷じゃないの・・・!流石ね・・・。」


 その時、俺は気付いてしまった。花は俺たちに対して『無傷』だと言った。もしそれを京香が居たのであれば確実に俺たちは騙されていただろう。花は俺たちにそういった。『超聴力』を持つ花が先程の話が聞き取れなかったはずが無い。『超視力』を持つ花がうっすらと残る閉じたての白の傷が判らないわけが無い。


「残りは・・・猿飛佐助と・・・・。」


 その言葉を言い切る前に花の首は宙に浮かんだ。俺は氷雨を抜き放ち、京香に切りかかる。京香は体をずらしたものの、氷雨を避けきることは出来ず、腕を切られる。右腕から血が噴射し、それを抑える京香の顔は次第に『変化』し、あどけなさの残る小助の顔となった。


「こ・・・これでも・・僕を・・・切れる・・・?」


 すると小助再び姿を変える。そして彼は俺のもっとも会いたかった人物へと成り代わる。


「か・・・陽炎・・・。」