上の階に登った樹が見たものは由利 鎌之介に苦戦する風雅の姿であった。片膝をついて肩から出血する姿は、いままで樹が見たことのないような姿であった。
「なっ!?風雅!?なにして・・・・!?」
うまく言葉を紡げない樹にようやく気付いた風雅は笑みを漏らす。
「あぁ・・・樹か・・・。少し考えごとをしててな・・・。あれだ・・・お前らの時代でいう『うぉむ・あっぷ』だ・・・。」
「へ・・!?『ウォーム・アップ』しとる場合ちゃうやろ、それに、お前、考えごとって・・・。」
言葉をつづけようとした瞬間、風雅を取り巻いていた無数の鎌のうちから10個ほどが樹にたいして襲いかかった。彼はあわてることなく10個の水球を作り上げ、鎌を打ち落とし、そのまま水を氷に変えて鎌を地面に張り付けた。
「おい・・・・そこの貧相な面しとる奴・・!!俺は今風雅とはなしとんねん、邪魔すんなや。」
「ひひひっ・・・・殺す・・・!!」
再び鎌が樹を襲う。樹は氷雨を作り上げ、すべての鎌をバラバラに切り落とす。多数の鎌を目隠しにして鎌之介自身が突っ込んできた。氷雨で大鎌を受け止めた樹は水龍の力を開放する。
「邪魔するな・・・って言った筈やが・・・?それにお前の相手は俺やない・・・そうやろ?」
樹の殺気に鎌之介は完全に気圧される。静かになったところで風雅は改めて口を開く。
「可能性として・・・猿飛 佐助は・・・『あの』佐助であることも十分考えられるよな・・・・?」
「あぁ・・・決してそうである可能性は低くないさ。」
「もし・・・『奴』なら・・・お前が姫を連れて行ってくれないか・・・?」
十年以上前の戦いで、風雅は猿飛 佐助に負けている。彼なりにリベンジしたいのであろう。樹はその気持ちを汲み取り、頭を前に振る。
「わかった・・・。やけど・・・・負けんなよ・・・?」
「もちろんだ・・・。まず・・・コイツを倒すとするよ。・・・風・・・・双・・・裂・・・爪!!」
一瞬にして鎌之介を切り裂いた風雅は何事もなかったかの様に部下を集め、上の階へ向かった。天守も間近と思える階にて、これまでにない殺気を感じる。
「このかいやな・・・風雅・・・?」
「あぁ・・・油断するなよ・・・!」
「ふ・・・藤林殿・・・?ここに・・・姫が・・・!?」
心配そうに問いかける部下に向かって風雅は安心させるかのように答える。
「いやっ、この上だ。しかし・・・この階は我々にとって少々因縁のある忍がいるのだ。まぁ・・・安心してくれ・・・我々は負けんよ。」
そうして一行は乃亜、燐の待つ部屋へ進んでいった。しかし・・・誰も気づいていない・・・。一人の兵士が居なくなっている事に・・・その兵士が忍の術で操られている事に・・・・。