「姫様・・・霧隠 才蔵とう男が姫にお目にかかりたいと・・・。」
「とおせ・・・。」
千姫はぼんやりと赤く染まった城外を見渡しながら答えた。城の周りには黒い影が蠢く。明日、明日には合戦が始まるだろう、そんな雰囲気を感じ取っていた。
「お久しぶりです・・・姫・・・。」
「の・・・のあ!?」
千姫は乃亜を見るやいなや彼に飛びつく。乃亜をひしと抱きしめて、ぽろぽろと大粒の涙を流す。
「どうして?どうしていままでかおをみせんかった?」
「僕に会うと・・・姫が悲しむんじゃ無いかと思って・・・。二年前を思い出させたくなくて・・・・。」
「よい・・・・よい・・・・。のあがいきているとわかっただけで・・・わしは・・・・。」
二人は空白の二年間を語り合った。ともに、単調な二年間だったが、話は絶えなかった。それは、千姫の人柄からか、彼ら二人の絆からかはわからない。
「それで・・・・ですね・・・。僕は・・・何のために戦えばいいかが判らなくなった・・・。和田 樹の一言で・・・。」
「のあにとって『だいじなもの』とはなんじゃ?」
「『大事なもの』それは・・・・・・。」
言いよどむ乃亜に千姫は優しく語りかける。
「『だいじなもの』はかんがえるのでなく・・・・かんじるものじゃ・・・。」
彼女の手が乃亜の左胸に触れる。手の温かみが伝わり、自然と乃亜は紅潮していた。
「答え・・・・見つけた気がします・・・。」
乃亜は優しい笑顔を見せる。それに釣られてか千姫も彼に笑顔を返す。そのまま乃亜は天守を後にし、眠りにつく、明日に備えて。