「秀康よ・・・・よく帰ったな・・・。」
笑顔でそう返す家康を物陰から見守っていた白は絶句した。徳川 秀康、いや、結城 秀康と言うべきであろうか、その男は既に死したはず家康の次男である。半蔵は白の存在に気付き、部屋に招き入れる。
「秀康・・・いやっ、半蔵はのぉ・・・。世間では死んだ事になっておるのだが・・・・これはむずかしくてのぉ・・・。」
困る家康に半蔵が付け加える。
「まず・・・俺が家康公の息子であることは事実だ。次男であった俺は小国三河を護るために伊賀の里に預けられた。齢五歳の頃、兄の信康が切腹を命じられた。しかしその頃私は忍者としての才能を開花させはじめた頃だった。父は私を次代の服部 半蔵とする事を決意した。その後五年がたち、父の力と『服部 半蔵』を恐れて小牧長久手の和平条件として『松平 秀康』を人質とすることを望んだ、まぁ、伊賀の方で影武者を立てたのだがな。」
「では?何故里を去った貴方が此処に・・・。」
「千姫は・・・・私といざなみの娘だよ・・・。アイツには『過去と未来を繋ぐ能力』を持っている。それは『同じ能力を持つもう一人』が居なければ成立しないものだ・・・。しかし、先日、燐によって相方が揃った。猿飛 佐助の娘だ。それがそろった今、事態はかなり悪いものだ。私は今まで大阪城にて千姫を影から護っていたが、最近はアイツの周りにつわものが揃ってな・・・・。」
「真田・・・十勇士・・・。」
「前回の大阪城合戦ではそうでもなかったのだが・・・。『鬼』と化す三好 入道。『不動明王』と称される望月 六郎。『封魔』と呼ばれる海野 六郎。『大鎌』の由利 鎌ノ介と『土蝦蟇』の穴山 小助。そして今回加わった『水の魔術師』霧隠 才蔵、『炎龍』根津 甚八。」
「燐さんが根津 甚八?彼女は猿飛 佐助じゃないのですか?」
「彼女ですらその位置という事は、猿飛 佐助は千の能力で呼び出された誰か・・・だな。」
「先代猿飛 佐助?それとも・・・・・。」
「それはわからない。ただ、問題なのは筧 十蔵。奴は『魔王』の遺志を継いでる者だ・・・。」
「なっ!?」
「話はすこし遡る。太閤秀吉は人たらしの才で農民より天下人へと成り上がった。地位を得るに連れて奴は妻に永遠の美を求めた。そして奴は・・・・・妻の茶々に・・・・かつて光秀が成敗した『魔王 信長』の身体の一部を埋め込んだ。彼奴の思惑通り茶々は永遠の若さを得た・・・。それが間違っていたのだよ・・・。茶々、いや、淀君は・・・秀吉でなく、魔王に忠実だったんだ・・・。奴は各地より実力者を集め、最高の城である大阪城に配備した。この決戦・・・今のところは奴の筋書き通りに進んでいる・・・恐ろしい女よ。」
かつてより尊敬している師が冷や汗を流す横で、白も同じ表情となってただ呆然と地面を覗いていた。