「御託はよして・・・さっそくやり合いますか?」
「賛成・・・。」
次の瞬間、樹は一瞬で間合いを詰めて身体を大きく捻る。その捩れを解くようにして斜め下から斜め上へと斬り上げる。乃亜はそれを紙一重で避け、右手に作り上げた水の槍で樹の喉元を狙う。
「ひゅう・・・。あっぶねー・・・・。なかなかの体術やな?」
「こっちの感想は・・・想像以下です・・・。」
「なんやと・・・?」
額に青筋を浮かべて樹は再び斬りかかる。しかし乃亜の槍が届く範囲全ての領域に楯があるのかのごとく弾かれた。樹がどれだけ綺麗な剣舞を舞ってみせても乃亜に決して届くことは無かった。
「無駄だよ・・・。貴方の刃は僕に届かない。」
「言いたい放題言いやがって!大体掴めて来たわ、こんなもん!」
頬より血を流した樹は再び乃亜に斬りかかる。その動作の途中に剣の軌道を変えて地面に突き刺し、それを軸にして両足蹴りを放つ。その動作に乃亜は一瞬遅れをとり、反撃の機会を失う。
「なるほどな・・・。お前のその力・・・なんつーか、動きを捉えんねんな・・・?やから今のメチャメチャな動きには対応できひんかった・・・。違うか・・・?」
「そうだよ・・・・。この能力は『流れ』を見切るもの・・・。それが解っても意味が無いよ。もう僕にはそんな滅茶苦茶な攻撃は効かない。」
「せやな・・・半端な攻撃やったら意味無いな。・・・つまり・・・『俺の剣術』じゃ勝たれへんっつう事や・・・。やったら、『本物の剣術』で戦うだけやろ・・・。」
樹は氷雨に両手を添えて、上段の構えを取る。乃亜の槍が迫った瞬間、彼は刀を振り下ろす。すると、樹の一撃は水で出来ているはずの槍を真っ二つに切断する。(この斬撃は面無が白鬼状態の時に放つそれと酷似している)乃亜が槍を再生させる一瞬の隙を突いて刃を喉元に突き立てる。
「一刀流・・・奥義『真打』・・・。俺の師匠に習った本物の剣術だ・・・!とりあえずぶったぎってやったぜ?」
「僕の本気は・・・こんなもんじゃないっ!!」
乃亜は力を解放する。それを察して樹は距離をとり、龍の力を解放して目を碧く染め上げる。
「あぁ!?覚悟はできてるんやろな?」
一触即発の空気の中、炎の矢が樹に向かって放たれた。彼は水の壁を作り上げてそれを防ぐ。漏れる水蒸気が消え去った瞬間、樹の視界に長髪の美女が入ってくる。
「久しぶりやなっ・・・燐!」
口調とは裏腹に、樹の頬に一筋の汗が流れ落ちた。