日本国にありながら、日本から独立して世界各国からの援助を受けて成立している暗殺機関である『隠密』の一員として、今作の主人公和田 樹は18歳の夏を過ごしていた。何を隠そう、この『隠密』という機関は代々藤林家が局長として仕切っているものであり、『隠密』という名前も昔忍者であった名残であろう。


「今日は左馬さんのおごりでよくないすか?」


 樹はカッターシャツを脱ぎ、死体処理班のものから新しいものを受け取って袖を通す。左馬はタバコに火をつけ、口から白い煙を吐く。この左馬という男は副局長兼執行部長という肩書きで、それ相応の実力を持っている。かなりの権力を持つもののそれに固執せず、部下から慕われている男である。さっぱりとした性格の持ち主で、このように仕事後は部下を連れて飯を食べに行くことが多い。


「あっ、あそこに自販機あるな。樹、ビール買ってこい!」


「うい~っす。」


 飯をおごってもらえると言うことで上機嫌になった樹は路地裏の自販機へと向かう。すると自分のスーツに血の匂いが染み込んでいる事に気付いた。


「あーっ、スーツに血の匂いが付いた・・・。ったく、俺も左馬さんみたいに鎧で戦おっかなー・・・。ったく、この仕事もかなり厄介やな・・・。」


 彼の後ろの空間が開き、黒い隙間より美しい腕が無数に飛び出す。

「ありゃっ・・・!?およびかよ・・・・。どーせ風雅あたりがベソかきながら・・・『樹くーん、助けてー!』とでもいっとるんやろ・・・。しゃーない、いったろか!」


 その言葉とは裏腹に、彼は微笑む。そして、彼は巨大な計画に巻き込まれるとも知らず、忍の時代に戻ることとなる。


 



  一方、甲賀の里では劫火が家々を焼き尽くしていた。


「な・・・何故貴方が・・・・・?燐さん・・・・。」


 廻神は燐に攻撃を仕掛けようとした瞬間、何者かに地中から足を掴まれる。その時に出来た一瞬の隙を突いて大男が廻神の鳩尾に一撃を放つ。そしてその場に彼は崩れ落ちる。


「くっそ、どうなってんだよっ、燐!」


 後ろより現れた鬼面は白鬼となって燐に斬撃を放つ。しかしそれは水の壁に阻まれて彼女には届かない。水の触手が白鬼の自由を奪うと、二頭の鬼が彼の顔面を殴りつける。


「殺しちゃ・・・駄目よ・・・。乃亜・・・いやっ・・・・才蔵・・・・。そしてお疲れ様・・・伊佐に青海、そして六郎に小助・・・。」


「これで・・・・そろったみたいだね・・・。『佐助』以外は・・・。」


 乃亜の言葉で燐は再び決意を固める。


「才蔵・・・。直に『佐助』もやってくるわ・・・。この子さえいれば・・・・ね。」


 燐は自分が抱えた少女に目をやる。


「そうだね・・・甚八・・・・。みんな志は違えど利害は一致するもんね・・・。」


「さぁ、もう用はないわ・・・・。この場を去りましょう。」


 根津 甚八となった燐は乃亜を含む十勇士を連れて、大阪へと向かった。