甲賀の里、少し離れた場所に、炎龍である燐の小屋があった。そこに燐は、使いの沙耶と二人で過ごしていた。そしてその小屋の前には黒髪の女が立っていた。


「あ・・・あの・・・どちらさまでしょうか・・・?」


 心配そうに覗き込む沙耶の細い首を掴み、玄武は小屋に入る。燐は激しい形相になり、腕に炎を纏いながら玄武をにらみつける。


「何者・・・・?」


「恐れ入ります・・・・私は玄武と申します・・・・。ある方の使いとしてここに参りました・・・。」


 そういって沙耶の左胸を一突きする。動かなくなった彼女の死体を地面に降ろし、血塗られた腕を舐めながら燐を見つめる。そして彼女は全ての計画を燐に伝える。


「何?アタシがそんな計画を認めると思うの?だいたい・・・そんな馬鹿げた・・・・。」


「いやっ、貴方はこっちに来るわ・・・。『奴』のためにね・・・・。」


 燐はその一言に口をつぐむ。一人になった小屋で彼女はひたすら彼に思いを馳せていた。


「そして・・・朱雀・・・。後は・・・・・・・。」


 玄武は満足そうな笑みを浮かべながら甲賀を後にする。巨悪が全てを呑みながらまわり始める。








 そして現代、和田 樹が18歳の頃。


「あーっ、スーツに血の匂いが付いた・・・。ったく、俺も左馬さんみたいに鎧で戦おっかなー・・・。ったく、この仕事もかなり厄介やな・・・。」


 彼の後ろの空間が開き、黒い隙間より美しい腕が無数に飛び出す。


「ありゃっ・・・!?およびかよ・・・・。どーせ風雅あたりがベソかきながら・・・『樹くーん、助けてー!』とでもいっとるんやろ・・・。しゃーない、いったろか!」


 その言葉とは裏腹に、彼は微笑む。そして、彼は巨大な計画に巻き込まれるとも知らず、忍の時代に戻る。