「まことにまこのかるわざは・・・・・・あっぱれじゃ!」


「・・・・・恐悦至極にて・・・。」


 摩狐の軽業を見て千姫は手を叩いて喜んだ。


「して・・・・なにゆえ『めん』をつけておるのじゃ・・・?そちのかおをみたい・・・!」


「戦の世に生まれましかば・・・私の顔には大きな傷があり・・・・其れ故の醜面・・・・。」


 千姫は魔弧に近づき面に手をかける。それを外すと端正な顔が現れる。彼の顔の右半分には大きな裂傷があり、先述した端正な顔が台無しになっている。その傷跡に沿うように千姫は魔弧の顔に触れる。


「たしかに・・・・しこづらじゃ・・・・。でも・・・・それ・・・!」


 千姫は声を上げるとともに両手で魔弧の唇の端を引っ張り上げる。


「ほれっ、これでえがおじゃ・・・!わらっておればよいぞ・・・。」


「きょっ・・・・恐悦至極・・・・。」


 真っ赤になった魔狐は後ろに下がり、それから丸爺が千姫にせがまれ何時間も御伽話を続けた。そして彼女が寝付いた後に、権太、乃亜、獄を城に残して他の四人は城下へ偵察へ向かう。幸村の命により敵を迎撃できる体勢にしておけとの事である。


 夜が明ける頃、城下の町を偵察の終わった四人は、空き地のような場所に落ち合ってしみじみと会話をしていた。


「私達も変わっちゃったねぇ・・・。姫様への気持ち・・・・皆一緒でしょ?」


「・・・姫君・・・・。」


 四人は千姫について言葉を交わした。それが油断となって一人の男の接近を許してしまった。白髪で羽織を着た男を目にした瞬間、佳乃が静かに怒りを露わにした。


「御手洗・・・・風雅・・・・。許さない!」


 伊賀忍軍頭領の風雅と、甲賀抜け忍七人の戦いの火蓋が、今切って落とされた。