都内の孤児院『あさがお』にて、俺は過去の物語をこうして孤児達に語っている。現代に帰ってから二年たった今、東京にある藤林家に引き取られて、影より国の安泰を担う仕事をしている。現在に『刃心』は残っておらず、俺の水龍の力も無くなった。ただっ、刃心の恩恵で、頭脳と運動の力において、人間離れするものを手に入れた。


「樹兄ー、お犬のおにーちゃんは、もう帰ってこないのか・・・?さびしく・・・ないか・・・?」


 五歳ぐらいの少年が、笑顔で鼻水をたらしながら俺に聞いてくる。この笑顔を、守って生きていこうと最近強く思うようになった。


「犬千代は・・・・帰ってこない・・・・んでも・・・・寂しく・・・・ないかな?犬千代とか・・・他のみんなは此処に居る。」


 そう言って左胸を指す。


「ところでね・・・樹兄ー、樹兄は、陽炎さんと、おりんさん、どっちが好きなの・・・・?」


「おいっ、レナっ・・・・・・お前そーいう質問は・・・・だなぁ・・・・・。」


「このっ、浮気もの~♪」


「こらっ、小さい奴にんな言葉教え込むなっ!」


 あさがおで最年長にあたる十四歳のレナがここぞとばかりにからかってくる。


「んでよっ、樹兄ー、どうだったんだよ・・・忍の世界はよ。」


 同じく最年長の武が質問してくる。


「楽しかったし、その分辛かった。でも・・・・俺は・・・前を向くことを学んだ・・・。だから、それを知って欲しくてこうやって話してるんだよ、俺の物語をよ・・・・。」


「樹兄ー、俺の物語も・・・・・あるかな・・・・・?」


 俺は微笑みながら武の頭を撫でる。


「ふとした瞬間に物語りは始まるんだよ・・・・。ただし・・・な。お前の物語を書き上げるのは・・・・お前だ・・・・。わかたな・・・?」


 そう、これから二年後、新たな物語が始まり、その主役が武である事を、今この時点では誰も知らない。


【完】