藤林は陽炎に語りかける。「樹も・・・おりんも・・・このような状態じゃ・・・。陽炎・・・『近き戦』はお主への負担が大きくなるという事を念頭に置いておけ・・・。」そして陽炎はこう返してその場を去る。「はい・・・剛蘭様。『奴ら』もそろそろ仕掛けてくるでしょう・・・。戦力不十分なりとも・・・私が穴を補いまする・・・・。」
一方、犬千代と花に話しかける京香の話は核心へと迫っていった。「ある日ね・・・。『奴ら』が襲ってきたの・・・この里を・・。奇襲ってやつよ・・・。でも、最初に狙われた場所があの山だったから、私たちの被害は小さくて済んだ・・・。でもね・・・山の狼は全滅・・・。そう、銀色の毛をした狼の長も・・・。少年は・・・重症だった・・。でも・・・銀色の狼はその力を振り絞って少年の中に宿った。おそらく・・・その狼は何らかの形で『刃心』を口にしていたみたいだった・・・。そして、重症の少年は刃心の力によって一命を取り留めた・・・。そして私たちがその子を受け取った・・・・って訳さ・・・。」
「そうだったのか・・・。」驚愕する犬千代と花。自分の中にいる狼が自分の親だと知り、なんともいえない気落ちがこみ上げてきた。「ういっす。犬千代。しんみりした顔しやがって!」近くを通った俺は犬千代に話しかける。「きにするなよ、あえてお前の過去は聞かないけどよ!お前はお前だ。俺にとってそれは絶対だからな!」
犬千代は嬉しさが顔に出るのを隠しながらも「ばかやろっ・・・。」と小さく言った。三人、同じ道を通っていろいろな話をした。すると、大きな白い花が咲いていた。「月下美人よ!この国じゃ見られない花なの!」そう花は興奮気味に俺と犬千代に声をかける。俺はなんとなく花に「花言葉は?」と問いかける。「はかない美・・・。」
この言葉は今でも俺の心の中奥深くにそっとしまいこまれてある。決して無くさないように。