京香はそのまま話を続ける。「一匹の狼と少年の物語・・・だ。大野家が所有する山には多くの狼がすんでいる・・・。お前も知っているだろ?十年以上前、そこの狼の長をしていた狼がいた。毛は銀色で、勇猛果敢、山の狼たちはみな、尊敬してた。丁度・・・十年前ぐらいだろうか・・・。狼の長のもとには、一人の子供がいた。」
「それが・・・犬千代なの?」花の問いを無視して京香は続ける「その子は山に捨てられた子供だった。狼の長は彼にとって親のようなものとなっていた。一人と一匹、寄り添いあって生きていったの。でもね・・・その生活は長くは続かなかったの・・・。」
京香の話が続く一方、俺は藤林との圧倒的な力の差を見せつけられていた。速度、一撃の重さ、何をとっても今まであった忍の中で抜きに出ていた。その上、彼の力が何かをつかめぬまま俺は地面に這いつくばる事となった。攻撃はあたらず、捻じ曲げられた。完全なる敗北だった。
「どうでしたか・・・彼は?」藤林の後方より陽炎の声が聞こえる。「まぁまぁじゃ、間に合うかどうかじゃな・・・。して、『おりん』の具合はどうじゃ・・?」陽炎は冷やかに答える。「未だ・・・『覚醒』はしていない模様です・・・。」