向こうの方でしていた轟音が静まった。決着が付いたのであろう。天理 丈太郎は我関せずと言う様子で座り込んでいた。彼の戦いは後を制することに真髄を置く。彼の能力が、口より硬質や粘質などの様々な糸を吐くことであり、吐いた糸を自分の周りに張り巡らせ、かかった獲物を仕留めるという先方が彼の定石であった。


 「きゃん!」という女の声が聞こえ、罠を張ったところまで重い腰を上げて確認へと急ぐ。案の定、敵が捕まっていた。丈太郎は「ぐへへ・・。」と下品な笑いを浮かべ、自分の罠に捕まった相手のくの一、お宮を見つめる。お宮は「不覚・・。」と言い、体をジタバタさせるが、より深く絡まるだけで逆効果であった。「おおっと、それ以上動くと他の罠も発動しちまうぜ?」と丈太郎は忠告するがお宮はかまわずもがき続ける。『ガコン』と音が鳴り、硬質化されて槍の様になった糸がお宮の肩を貫く。「ぎあっ」短く叫ぶお宮に対し丈太郎は「お前の負けじゃ、グフフフ・・・・。」と、首飾りに手をかけようとした瞬間、お宮の口から刃物が飛び出し、丈太郎は手の甲を貫かれる。


  「無様じゃな。それは私の傀儡じゃ」罠の外よりお宮が声をかける。しかし丈太郎は強気に「おぬしはソレを絡め取られ、戦う術を持たん、それ以前にここに入っこれんだろ?」と笑ってみせる。


 「それがそーでもないんだよ、僕ならコレくらいは余裕に解除できますよ。」と、綺麗な顔をした雷堂 白が丈太郎の後ろに歩いてやったきた。もちろん、後方にも罠を張り巡らしたはずだ。こんな若い男がかすり傷一つなしに罠を抜けてきたと言うのか。信じ難いという気持ちを胸に丈太郎は左手の小指をくいと曲げる。


 白に一本の糸がつく。その瞬間、おびただしい量の糸が白へと纏わり付き、絡まっていく。白は何もする事が出来ぬままに絡め取られてしまった。「伊賀の雷神もこの程度じゃなぁ・・・。」と丈太郎が高笑いをあげた瞬間。一筋の閃光が空を裂いた。