辛くも善鬼を倒した俺はその場に倒れこんだ。その瞬間、城の屋根より一人の男が俺に襲い掛かった。先ほど陽炎に殺されたはずの鬼蜘蛛である。苦無を握った六本の腕が俺の体を貫こうとした瞬間、一匹の鬼が鬼蜘蛛の右側の腕三本を鋭利な爪で切り裂き、切断した。


 そしてその鬼は鬼蜘蛛の頭を掴み、案内役の鳥居小次郎に投げつける。すると、無数の黒い針が地面より突き出て鬼蜘蛛を貫く。そして鬼は自分の顔に手を当て、あごらへんから面を外すような素振りをする。そうすると鬼の面の下から、風魔忍者の青年の顔が覗いた。その青年が鳥居に「凄いですね、流石、伊賀屈指の実力者ですね。半蔵さん!」と言うと鳥居は結った髪をほどき、ニヤリとして「流石だな・・。風魔忍者。お前も今から戦うか?」


 俺は驚愕して「なっ、アンタ、服部半蔵!?そんな大物が・・・。」驚愕する俺に半蔵は「流石だ、樹。このまま技を磨いてくれ。」と賞賛しながら「で、どうする?」と風魔忍者にも注意を配る。「いやいや、止めときますよ、俺は。もう依頼人死にましたし。ね?それに俺は樹君気に入ったから、ね?いつか力になるよ。」俺は驚き「え・・・?」ともらす。そして青年は「俺の名前は面無、いづれ鬼面となのるかもしれん男だよ。」といって去っていった。


 また一つ俺の任務は終わった。こうやって任務のことを振り返ると、色々な思い出がよみがえって胸が熱くなる。そして俺の師である伊藤一刀斎は、小野次郎の名を名乗り、徳川の剣術指南役をつづけた。一刀斎の没年は、様々な説があるが、小野次郎と同じ年に没するという説がある。その説が正しいことを知るのは俺一人である。これ以来、俺は師匠には会わなかった。合わせる顔がなかった。俺は仮にも彼の弟子を殺した男なのだから。