辛くも鉄斎を下した犬千代は俺らの元に戻ったとともにその場に崩れ落ちた。花が犬千代に駆け寄る。そこで俺は「俺に任せろ。」といい花をどけ、仰向けに倒れた犬千代の胸部辺りに両手を沿えながら気を集中する。優しい光が俺の両手を包み、その光は犬千代の胸の中へと染み込んでいった。


 そう、それが水術の内の一つの回復術である。犬千代も少し痛みが和らいだようで、気絶中の表情も和やかになっていた。あくまで、応急処置までしか出来ないので、絶対安静に越したことはない。


 「二番手、伊賀忍軍、花、参る。」といった花は犬千代を愛おしく見つめた後、前へ出て行った。そして風魔忍軍からは女が前にゆらりと出て来た。「風魔忍軍、艶。」と言った女の着物から、無数の蛇が出て来た。女はそれから優雅に舞い、蛇たちは花に襲い掛かる。しかし、花は軽やかに宙を舞い、手裏剣を蛇たちに見事当てていく。しかし、蛇の数が多すぎ、逃げ回ることしか出来ずにいた。


 このような状態が20分も続いていた。流石に、花と艶はともに息が上がっていた。「なぁ、陽炎、花を戦いに出すべきじゃなかったんじゃないのか?明らかに戦闘向きの能力じゃないだろ?こりゃあ、やべーぞ。」陽炎は「樹。アンタは仲間を信じられないの?あの子を仲間と思うのなら、黙って見届けてあげなさい。」と静かに返す陽炎に対して「なっ、俺は花が仲間であるからこそ心配しているんだろ?」陽炎は俺にピシャリと「信じなさい。確かにあの子は戦闘向きじゃない。でもね、あの子はきっと勝てるわよ。」


 俺は陽炎を信じた。彼女の言葉の温かみが俺の心に染み渡る。そして決着は一瞬で付いた。花は蛇の群れをかいくぐり、艶の元まで駆け寄る。そして苦無を彼女の右腕に刺し、そして右腕を引き裂く。その瞬間、今まで統制の取れていた蛇が、艶に襲い掛かる。そして一分もたたないうちに艶は絶命した。