陽炎はゆらりと敵の頭領である女の前へ出た。沈黙のうちに戦いは始まる。女が刀を振るう。陽炎はまるで揺れ落ちる木の葉の如く相手の刃を避け続けた。陽炎は苦無を投げつけて応戦するも、相手には決してあたらない当たらない。約数分同じ状況が続いた。流石の陽炎にも疲労の色が見え始めた。
このままでは埒が明かないと思った陽炎は前進を試みる。肩の部分を掠ったが、確実に相手の背後を捕らえた。「終わりだ。」そういった陽炎は相手の左胸に苦無を突き刺した。『パキン』という金属音が鳴り響く。
陽炎の苦無は確実に相手の心臓を貫く・・・・はずだった。金属音と共に苦無の刃が宙に舞う。そして『左手』で肘打ちを食らわす。陽炎は2,3m後ろに吹っ飛び、軽く吐血した。女はいやらしくこう言い放つ「痛いだろぉぉ?『この』肘打ちはぁぁ?あたしの左半身はねぇぇ、鋼鉄のように硬いの、五行の『金』にあたるのよぉぉ?」
女の発言を聞いた陽炎はこう返す。「なり損ないの五行術者なんて里には五万といるよ、でもね、うちの里では誰一人と『純粋な五行術』が使えないと自分で『五行術者』なんて言わないのよ。理由は二つ。アンタみたいな下衆じゃぁないから、もう一つ。『真の五行術者』の凄さを知っているから。アンタにも見せてあげる、『真の五行術』をね。」
陽炎の右手に炎の玉が出現し、そのまま相手へ飛ばし、相手が炎を振り払う瞬間に距離をとった。二人の距離、約『7m』敵の蛇腹刀が届く距離。女が蛇腹等を振り下ろし、凶刃を持った蛇は速度をつけて陽炎へと襲い掛かる。しかし、陽炎は避ける素振りを見せない。まさに刃が陽炎に突き刺さろうとしたとき、俺は我を忘れて叫んでいた。「陽炎おおおおおお、避けろおおおおお!!」
しかし陽炎は避けず、刃は『陽炎』を引き裂き、地面に喰らい付いた。『陽炎』は確かに真っ二つにされたはずなのに、傷一つなかった。『蜃気楼』という奴だろうか。俺らが見ていたのは幻だった。『陽炎』の本体はまたもや相手の後ろをとっていた。そして左胸を『炎で赤く光る右腕』で貫いた。『圧巻』 まさにその言葉が似合う勝ち方だった。
コレにて俺の初任務は終わった。帰り道、陽炎に「さっきは心配してくれたみたいだな?ありがとう。あの時は必死だったなぁ、お前。」といい、屈託のない笑みを見せた。コレは俺が初めて見た陽炎の笑顔だった。その笑顔のせいか台詞のせいか、俺の顔は真っ赤になっていた。「お?照れたかぁ?この、このぉ!!」と言いながら俺をヘッドロックに固める。胸に顔を押し付けられた俺の顔はさらに真っ赤になる。後で犬千代と花に聞いたのだが、あんな陽炎はそうそう見れるものじゃないらしい。この時からだろうか、陽炎に対して特別な感情を抱きだしたのは・・・・。