犬千代との共同作戦の始まりだった。これはただ、犬千代の機動力だけを買っているわけではなく犬千代が狼へと変化することに重点を置いた策である。俺は自身の水術の一段階変化を使用する。『氷』ではなく『水蒸気』まぁもっと簡単に言うなら『霧』である。忍者らしく言うなら『忍法、霧隠れの術!!』とでもいうんだろうが、恥ずかしいのでやめておく。
俺の読みは的中だった。俺はアジト全体を『霧』で覆い隠す。犬千代は自慢の機動力と『鼻』を駆使して相手の居場所を掴み、敵を殲滅してゆく。相手は霧の中大群で刀を振るうとどうなるかぐらい分っているだろう。それ以前にてきとうに振った刃が犬千代に当たるとは思えない。おそらく50人ほど倒したであろうころ、花の声が沈黙を切り裂く「犬千代、退いて!!」
「ハッ、樹のやつ、やりやがる。」犬千代は一人で約五十人ほど殺していた。しかし、花の声が聞こえる『退け』と。そして犬千代は殺気を感じる。尋常ではない殺気。その瞬間たてがみを一瞬にして切断された。霧が晴れる。そして犬千代が見たのは、いくつもの間接がある刀をもち、右目に傷がある女。その女から禍々しい殺気は放たれていた。犬千代が引こうとした瞬間、女が刀を振るう。間接が伸び、刀身は犬千代にまで届く、その間合いは広く約7mほどであろう。再び犬千代はたてがみを持っていかれた。
俺らのいる場所に戻ってきた犬千代に陽炎は声をかける。「よくやった、犬千代。お前じゃすこしきつい相手だ。私に任せろ。花、周りに注意を払っておけ、何かあれば樹と犬千代に対する命令権はお前にある。そして樹、お前はできるだけ私の戦いを見ろ。わかったな?」そういってゆらりと陽炎は前へでる。おそらく伊賀忍者最強のくの一であろう陽炎の戦いが、今始まる。