この時にざっと流れだけ妄想したお話を、少し細かく書いてみました。
(ソギョンスくんね)
しかもまだ続きそう〜
相変わらず長くなる…(笑)
まぁ結末は決まっているので、埋める感じでお話を繋げてみたいと思います。
そしてタイトルはsomeday(笑)
いつか。
お付き合いください〜。
『あの子は違う』
__そう、頭の中で何度も繰り返す。
メジャーでレンズからの距離を測る振りをして彼女を【確認】する。
目が合うと彼女はぎこちなく会釈をした。
…ほら、やはり僕を知らない。
知るわけない。
彼女は他人で、ちょっと似ているだけ。
__死んだ妹に。
『キムジェインです!よろしくお願いします!』
彼女が大きな声で挨拶をした。
新人タレントの現場でよく見られる光景だ。
珍しくもないし、寧ろ撮影が長引きそうだと舌打ちをするスタッフもいる。
彼女に返された挨拶はなかった。
彼女もやはり緊張している様子で深呼吸ばかりしていた。
所属している事務所はCM業界では聞く名前ではあるが、お世辞にも大手とは言えなかった。
事務所がどういうコネを使い、今日、彼女がここにいるのかはわからない。
撮影が始まったが、案の定不自然な笑顔で何度もNGを出す。
あっという間に別のタレントに交代を言い渡された。
これもよくある光景だ。
誰も何も思わない。
誰も、何も。
撮影が終わり、気がつくと彼女の姿はなかった。
交代させられてもしばらくは現場にいたのに。
気になって探しに行った。
控室から離れた場所の階段で、天使の羽根が見えた時、僕は安堵した。
彼女が身に付けていた衣装だった。
安堵したと同時に、彼女をどうにかして慰めたいと思った。
戻って来た頃にはもういないかもしれない。
そう思いながら、近くのコンビニへと走った。
目に付いたのは、妹が好きだったアイスだった。
彼女はまだそこにいた。
泣いているようで涙を拭う仕草が見えた。
いざとなると、どう声を掛ければいいかわからない。
元々他人と話すのは苦手だ。
何も思い付かないし、もう少し落ち着くのを待った方がいいのかもしれない。
考えても無駄だと諦めた僕は袋からアイスを一つ取り出すと、食べながら階段の手摺りの間から手を伸ばした。
「먹어」
食べろ。
言ってすぐに失敗したと思った。
敬語を使うべきだった。
突然目の前に差し出された黒いビニール袋と、僕のパンマルに彼女は困惑していた。
何をやっているんだ、僕は…。
後悔して、伸ばした手を戻そうとした時、彼女が黙って袋を受け取った。
そして妹が好きだったオレンジではなく、グレープを選んだ。
分かりきっていることなのに、がっかりしている自分がいた。
何を期待していた?
他人の空似だ。
あの子は目の前で死んだじゃないか。
15年前に、たった5歳で。
10歳の時、妹が生まれた。
両親が僕を一人っ子にさせたくないと苦労した末にやっとできた二人目だった。
当然両親は溺愛した。
働いている母親に代わり、妹の面倒を見た。
日に日に大きくなる妹に僕は愛情を注いだ。
歩くようになってからは、どこへ行くのにも連れて行った。
それが当たり前だと思っていた。
きっかけは些細なことだった。
中学の時、妹と公園で遊んでいるところをクラスメイトに見られ、揶揄われた。
それが無性に恥ずかしくて、それから妹と遊ぶのをやめた。
ある日学校から帰ると、いつものように「遊んで」と妹がまとわりついて来た。
「ついて来るな!」
泣き出す妹を振り切って、自転車で家を飛び出した。
力強く漕ぎ出したすぐ後ろから、車の急ブレーキの音がした。
階下で扉が閉まる音がして、我に返った。
「食べ終わりましたね」
僕は彼女の手からアイスの棒を抜き取ると、ゴミ箱に捨てた。
そして彼女に近づくと着ていたジャケットを肩まで脱いで、彼女の足元に座った。
ポケットからペンを取り出して、彼女に差し出しす。
今度は慎重に言葉を選んだ。
「…サインしてくれますか?」
それだけを言って、目を逸らしてしまった。
彼女がどんな表情をしていたのかわからないが、ペンを受け取ってくれてホッとした。
ペン先が、背中をなぞった。
「ありがとうございます」
ペンを受け取り、ジャケットを着直した。
何か声を掛けた方がいいのだろう。
だけど気の利いた言葉は何も浮かばなかった。
結局、黙って立ち上がった。
「…あの!」
振り返ると、まだ涙で滲んだ目が僕を見つめていた。
赤くなった目元が、やっぱり妹に似ていると思った。