介護の人手不足が続いている。 訪問介護のホームヘルパーの平均年齢は、各職種の中で最も高い54.4歳。ヘルパーの年齢層は60歳以上65歳未満が13.2%、55歳以上60歳未満が12.3%、70歳以上が12.2%を占めており、今後、年齢を重ねてリタイアするヘルパーが一段と増えていくとみられている。
介護ヘルパーが増えない原因は採用が難しいからである。介護の仕事は「介護記録の記載」「おむつ交換」「入浴介助」「利用者とのコミュニケーション」など、拘束時間が長く、かつ精神的な負担が大きい業務が多い割に賃金が安いことから不人気業種になっている。
介護は介護保険に依存している為、介護保険の財政面への配慮が本来の介護の実態以上に重視されていることが低賃金の原因であり、介護職があまり魅力的でない原因となっている。
賃金を上げる為に介護報酬が上がると利用者の負担や介護保険料を上げざるをえなくなる。実際問題利用料負担や介護保険料負担は既に介護保険発足時から大幅に上昇しており、これ以上の負担増は難しい段階に達している。
その為むしろ訪問介護に関してはサービスの基本報酬は引き下げられる傾向にある。基本報酬が下げられるのは、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護で、 ホームヘルパーになるには、130時間の介護職員初任者研修などを受ける必要があるなど、それなりに高いハードルがあるが、 ハードな割に給料や労働条件が見合っていない。
これには財源の問題以外に、介護が女性の仕事で、女性の仕事だから誰にでもできるだろう、賃金は低くてもよいだろうという官僚の独善的な思い込みも関係している。実際のところ介護職の女性比率は70%を超えている。
また、介護保険制度では、財政面から外出介助や生活援助に制限があり利用者も不便を感じているがヘルパーにとっても仕事への意欲を失う原因になっている。
ヘルパーは、その人の生活全体を見渡し、必要な援助を見極め、生活をささえられたときに仕事に喜びを感じやりがいを得ることができるのだが、サービス制限があることがそれを妨げている。
そもそも厚生労働省の思い付きで十分に国民的議論をせずに導入された介護保険制度はもう限界がきている。高齢化社会の中で既に保険負担能力にも介護費用支払能力にも限界がきている現状ではもう一度原点に返り老後の介護制度全体を見直す必要がある。
民間保険の拡大や税金の投入、場合によっては安楽死制度の導入も含め、日本国民の老後の在り方について年金や健康保険もからめて国家の方向性を再検討する必要がある。