4月にソウルで3週間だけ上演された
演劇「試練」(邦題:るつぼ)。
アーサー・ミラーが書いた現代古典悲劇で
魔女裁判を題材としていて4幕もあり、
予習無しで見ていたらきっと
チンプンカンプンだったと思われます(・・;)
私は図書館で借りた早川文庫の本で
予習をして行ったのですが、
せっかくなので予習したものと
観劇した際に買ってきたプログラムを
合わせて今頃ですが作品について
書き留めておこうと思います。
まだいつかは分かりませんが
アンコール公演もある予定なので…
まずはざっくりとした作品についての説明。
舞台は1692年米国マサチューセッツ州の
港に面したセイラムという村。
プロテスタントから派生したピューリタンの
信徒たちがイギリスからアメリカに渡り
開拓した厳格な宗教社会だった村。
大人達の間では土地争いが絶えず
子供達は抑圧された社会で禁欲的に
生きているという背景があります。
この村で実際に起こった魔女裁判を
アーサー・ミラーが史実に忠実にかつ
記録からでは分からない部分は脚色して
書き上げた作品です。
ミラーがこの作品を書いた1950年代の
アメリカでは赤狩りの嵐が吹き荒れており
魔女狩りのテーマはそれを暗示している
とも言われていますが、その辺りは
難しい話になるのでパスします。
以前オムさんが出演した「ART」は
登場人物が3人しかいなかったので
キャラクターを覚えるのも楽でしたが、
今回の演劇では登場人物が多く
名前を覚えるだけでも大変><;
ということで次はキャラクター紹介。
紹介順はプログラムにならって
キャラクターの重要度順。
名前だけだと分かりにくい人物は
役職をつけて表記しておきます。
~キャラクター紹介~
役名
(俳優名)
キャラクターの説明 です。
ジョン・プラクター
(オムさん、カン・ピルソクさん)
セイラムの村はずれに住む農夫。実直な性格。
過去にアビゲイルと姦淫を犯したが後悔しており
妻との関係を回復しようと努力する。
魔女裁判の真相とその原因を知る者として葛藤する。
サムエル・パリス牧師
(パク・ウンソクさん)
セイラム村の牧師で権威と名声を重んじる。
娘ベティと姪アビゲイルが森の中で踊っていた
事実が明らかになるのを恐れていたが
魔女裁判を積極的に後押しするようになる。
ジョン・ヘイル牧師
(パク・ジョンボクさん)
悪魔と魔女を探し出すため村に招かれた牧師。
裁判が進むにつれ不当さに気付き懐疑心を抱く。
ダンフォース副知事
(ナム・ミョンリョルさん)
マサチューセッツ州の副知事で
裁判を取り仕切る厳格な判事。
法と秩序、権威に絶対的な信頼を置く。
アビゲイル・ウィリアムズ
(リュ・イナさん)
パリス牧師の姪で17歳の少女。
自分の過ちから逃れ欲望を満たすため
嘘をついて村を混乱に陥れる。
ジョン・プラクターを手に入れようとして
彼の妻を排除しようとする。
エリザベス・プラクター
(ヨ・スンヒさん)
ジョン・プラクターの妻。宗教的にも道徳的にも
まっすぐな心を持つ。
夫の不貞を許そうと努力するが
アビゲイルの証言で魔女の疑いをかけられる。
メアリ・ウォレン
(チン・ジヒさん)
プラクター家の下女でありアビゲイルの友人。
真実と嘘の間で選択を迫られジレンマに陥る。
ジャイルズ・コーリー
(チュ・ホソンさん)
セイラム村の農夫。80歳を過ぎても
かくしゃくとしており魔女裁判の不条理を指摘する。
レベッカ・ナース
(キムグァク・キョンヒさん)
セイラム村で理性と道徳心を持ち
人々から尊敬される老婦人。
だが、嘘の証言で魔女だとされる。
トーマス・ポトナム
(キム・スロさん、クォン・ヘソンさん)
セイラム村の裕福な地主。
魔女と言われた近所の人達の土地を
奪うため魔女裁判を積極的に支持する。
アン・ポトナム
(キム・ドヒさん)
トーマスの妻。悪魔と霊が自分の7人の赤ん坊を
殺したと信じており魔女を探し出すため
夫と共に魔女裁判を支持する。
エゼキェル・チーバ
(ハ・ジュノさん)
村の裁断師だったが裁判の書記に任命された。
事件の間、逮捕状の作成や伝達をし
裁判が進むにつれ権力者の側に立つ。
ティテュバ
(シン・ヘオクさん)
パリス牧師の奴隷。村の少女たちと森で
踊りを踊って悪魔を呼んだとして、
最初に魔女だと言われる。
ホーソーン判事
(オ・ジョンフンさん)
ダンフォースと共に魔女裁判を担当する地区判事。
権威的な人物で法と正義より自身の出世を重要視する。
へリック警察署長
(ウ・ボムジンさん)
セイラム村の執行官として法廷の命令を執行し
罪人を管理するが不条理を感じるようになる。
ベティ・パリス
(キム・イェジさん)
パリス牧師の幼い娘。森の中でアビゲイルと
踊りを踊って遊んでいたが、
父親が現れ驚いて気絶してしまう。
彼女が次の日まで目覚めなかったことが
魔女告発のきっかけとなる。
マーシー・ルイス
(パク・インソンさん)
ポトナム家の下女でアビゲイルの親しい友人。
アビゲイルと一緒に森で踊っていたため
同調して魔女の告発をする。
スザンナ・ウォルコット
(ソンミンさん)
村の医師の家で働く下女。
友人達と森の中で踊り、魔女の告発に加わる。
ホプキンス
(パク・セドンさん)
へリックの部下であり牢番。
この他に役名の無い少女役が2名
アビゲイルの友人として登場します。
また、本来はレベッカ・ナースの夫
フランシス・ナースという役がありますが、
前回の上演ではキャスティングされていた
俳優さんの体調不良のため休演され
台本が修正されて上演されました。
キャラクター説明だけでも相当なボリューム…
特に重要度が高いのは
上から順にレベッカ・ナース辺りまでです。
いよいよ物語のあらすじ…
4幕ものなのでそれぞれの幕に分けて
簡単にまとめました。
上演される時は幕の終わりで暗転があり
2幕終了後には休憩時間がありました。
~あらすじ~
<1幕>
セイラムの牧師パリスは娘のベティと
その他何人かの娘が森の中で深夜に
踊っているのを見つける。
ベティは驚き気を失ったまま目を覚まさない。
医者も打つ手がないとお手上げ状態。
パリスは悪魔や魔法に詳しいヘイル牧師を呼び
原因を探ろうとする。
村の有力者であるパトナム夫妻の娘も
様子がおかしくなっており、
夫妻は魔法のせいに違いないと思っている。
村はずれの農夫ジョン・プラクターは噂を聞き
教会へやってきたが魔法など信じていない。
彼はパリス牧師のことを信用しておらず
あまり教会に来ていない。
パリスの姪で元プラクター家の女中だった
アビゲイルはジョンの登場を喜ぶ。
2人は過去に不倫しており、
アビゲイルはジョンがまだ自分に未練がある
と思って言い寄る。
アビゲイルはこれは魔法などでは無く
ベティは踊っているのを父親に見られ
気を失っているだけだと説明する。
しかし、ヘイル牧師が到着して
真相に迫り始めると、アビゲイルは
踊りの首謀者が自分であることを
隠すため村人が悪魔と共にいたと
告発をし始める。
<2幕>
8日後のプラクター家。
気まずい空気のプラクター夫妻。
妻エリザベスは夫とアビゲイルの関係を知っている。
町で魔女狩りが進んでいることを知って
アビゲイル達の出まかせであり
魔法ではないと証言すべきだと言うエリザベス。
だが、ジョンは躊躇する。
ヘイル牧師が訪ねて来て二人の信仰について
確認していると警察がやってくる。
アビゲイルの告発によりエリザベスに
逮捕状が出ていると言う。
女中のメアリがエリザベスに贈った
人形から針が出てきて、アビゲイルへの
殺意の証拠にされてしまう。
ジョンはこれは単なる復讐だと
逮捕状を引きちぎり抗議するが
妻は連行されてしまう。
法廷と戦う決意をするジョン…
<3幕>
教会で行われている魔女裁判の法廷。
妻の弁護をしに来たジャイルズを
副知事のダンフォースが退ける。
ジョンに連れられメアリがやってきて、
これまでに法廷で自分や少女たちが
告白したことは嘘だったと申し出る。
嘘がバレるのを恐れて悪魔がいるように
芝居をする少女たち。
少女達の嘘に我慢できなくなった
ジョンはアビゲイルとの関係を告白する。
ジョンの証言の裏付けのため
妻エリザベスが呼ばれるが、夫の対面を
守ろうとして二人の関係を否定してしまう。
大人達がアビゲイルを疑い始めると
アビゲイルはメアリが魔法で姿を変えたと
芝居を始め大人達は翻弄される。
メアリはついに耐えきれなくなり、
ジョンこそが悪魔の手先だと証言してしまう。
神は死んだ…と嘆くジョン。
ジョンもジャイルズも逮捕されてしまう。
<4幕>
3か月後セイラムの牢獄。
ジョンやレベッカが絞首刑にされる日の夜明け前。
ダンフォースやホーソーン等裁判の関係者が集まる。
荒れ放題になっている村で暴動が起きるのを恐れ
村で人望の厚い彼らの処刑を延期すべきだと
牧師たちが申し入れるが聞き入れられない。
実はアビゲイルがパリス牧師の財産を
持ち逃げしたためパリスも処刑に反対している。
ジョン達の命を救うため、悪魔と手を組んだと
告白させようとするが説得できない牧師たち。
エリザベスにジョンの説得を頼む。
拷問を受けた痛々しい姿で登場するジョン。
生きるために嘘の告白をしようとする
ジョンだが、他の人達の罪も告白しろと迫られ
証言の内容に署名させられると
決心を曲げて証書を破り捨て処刑台に向かう…(完)
4幕の部分はこのあらすじだけ読んでも
意味が分からない部分が多いのでは
ないでしょうか?
アビゲイルが嘘をついていたのは
明らかになるのに何故告発された人を
再審問したりせず処刑してしまうのか…とか、
悪魔と手を組んだと告白することで
何故命が助かるのか…とか、
証言証書に署名させられたジョンは
何故気持ちを変えてしまうのか…とか。
ジョン達の処刑が予定通り行われたのは
同じアビゲイルの証言で既に処刑された
罪人達がいたので、今更アビゲイルの証言が
覆されると法廷の権威が失われてしまうから。
悪魔と手を組んだと認めることは
自分が悪魔から被害を受けたとみなされ、
悪魔と手を切り神の元へ戻ると言えば
処刑されずに済むことに…
(説明されてもピンと来ないけど…)
そしてジョンの決心の部分は
一番理解が難しい部分。
正直私も正確に理解できていません。
ただ、自分の信念を曲げ魂を売る決意で
嘘の告白をしたのに、
それを紙に残し名前まで記されて
公に晒され自分が汚されるのが
我慢できなかったということかと理解しています。
日本語の本だと最後にきて突然
「名前だけは残してくれ」とジョンが訴え
「名前」の持つ意味が難しいのですが、
ソウルで見た舞台では2幕あたりから
時々「名前」と台詞に出てきていて
この言葉にアイデンティティや自尊心の
ような意味が内包されているのかな
と感じました。
内容をだいぶ端折ったはずなのに
それでもこんなに長くなってしまいました><
大筋の流れはこんな感じですが、
もし観劇予定がある方でしたら
やはり原作本か映画で予習をして
もう少し詳しく話の展開と各役の
果たす役割を理解しておく方が
良いかと思います。
って、アンコール公演はいつなのかなぁ…
スロPD~!頑張って早めに
実現して下さい~!